職場でのモラルハラスメント(モラハラ)について、モラハラ対策に悩む方や職場環境の改善を目指す管理職の方に役立つよう、パワーハラスメント(パワハラ)との違いや発生原因、具体的な事例を紹介し、防止策を詳しく解説します。
職場のモラハラとは? モラハラの特徴
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モラルハラスメント(以下モラハラ)とは、言葉や態度など精神的・心理的な攻撃によって他者に苦痛を与える行為のこと。
1990年代にフランスで注目され、日本でも職場環境や人間関係の問題として認識が広まりました。
モラハラには、以下の特徴があります。
- 相手の人格や尊厳、能力を否定する
- あからさまな暴力行為や言動ではない
- 周囲が気づきにくい
相手の人格や尊厳、能力を否定する
無視や不適切な発言、態度で相手の心にストレスを与えます。
あからさまな暴力行為や言動ではない
肉体的な暴力や大声での叱責など、明らかに問題視される行為とは異なります。
周囲が気づきにくい
前述のとおり、あからさまな行為ではないため、周囲が気づきにくく、個人で悩みをかかえてしまう特徴があります。
モラハラとパワハラの違いとは
モラハラとパワハラの違いは、パワハラは主に力を持つ側から、力を持たない側への嫌がらせとして行われます。一方、モラハラは力関係に関係なく発生します。
また、前述のとおり、モラハラの場合は、心理的な攻撃が中心で、周囲が分かるような暴力行為や言動はありません。そのため、目に見えにくい形で進行します。
法的義務の違い
法律上の認識も異なります。「労働施策総合推進法」ではパワハラが具体的に定義されており、企業は防止措置を行う義務が課せられています。
一方、モラハラはまだ法律で明確に定義されていません。よって、モラハラを防止するには企業が独自の対策を講じる必要があります。
職場でモラハラが発生する原因
モラハラは、文化やコミュニケーション、ストレスやすれ違いなどが絡むと発生しやすい傾向にあります。
企業文化やコミュニケーションの問題
風通しの悪い職場や上下関係を重視する文化が、モラハラを助長する場合もあります。社員が意見を言いづらい環境では、問題が見過ごされがちです。
ストレスやプレッシャーの影響
過度なストレスやプレッシャーは、感情のコントロールを失わせ、攻撃的な言動を引き起こす原因となります。特に目標達成を強く求められる職場では注意が必要です。
管理職や同僚間での期待のすれ違い
お互いの役割や責任に対する認識が一致していない場合、行き違いが不満を生み、それがモラハラにつながる可能性もあります。
世代間における価値観の違い
昔は当たり前だったことが、現在では、不適切な言動とされる場合があります。本人にとっては普通のことであり、相手を傷つける意図がまったくなくても、モラハラとみなされる可能性があります。
アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)
アンコンシャス・バイアスとは、本人が気づかない偏った見方のことです。誰もが持っている気付かない偏見が、モラハラにつながる可能性があります。
モラハラ行為の具体例-どのような言動が問題か
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職場でのモラハラは、過度な干渉や執拗な行動として現れることが多く見られます。具体例として以下が挙げられます。
価値観の強要
価値観を強要してくるケースがあります。「昔はこうだった」、「◯◯するのはあたりまえ」など、自分が正しいと思っている個人的な価値観を押し付けてくる行為です。
批判や侮辱的な発言
相手に対し、人格や能力を否定するような発言を執拗に繰り返すことが挙げられます。これにより被害者の自己肯定感が損なわれてしまいます。
威圧的な態度
相手に対して威圧的な態度や冷遇を行い、心理的な圧力を加えて、従うように誘導します。
被害者の孤立を目的とした行動
例えば、特定の人物だけを飲み会や会議から排除する、噂話などを広めるなど、組織内で孤立させる行為です。
私生活に干渉する
業務に関係しないことでのプライベートな情報を詮索する行為です。
差別行為
国籍や性別、宗教、文化などの違いを理由に、無視や軽視する言動です。
モラハラが企業に及ぼす影響
モラハラは個人への被害に留まらず、職場全体や企業の存続に大きな悪影響を及ぼします。問題解決に向けた取り組みが、企業の将来を左右する重要な要素となります。
職場全体のコミュニケーションの悪化
- モラハラが存在する職場では、被害者だけでなく周囲の従業員も発言しづらくなり、コミュニケーションが停滞します。
- チーム内の信頼関係が損なわれ、協力や連携が難しくなります。
モチベーション低下による生産性への悪影響
- モラハラを受けた従業員はやる気を失い、本来のパフォーマンスを発揮できなくなります。
- 職場の雰囲気全体が悪化し、モラハラを目撃した他の従業員のモチベーションも低下します。
離職率増加による人材コストの負担
- モラハラに耐えきれず、優秀な人材が退職するリスクが高まります。
- 新たな人材の採用や育成に多大なコストがかかります。
企業ブランドの毀損による信用の低下
- モラハラ問題が外部に漏れることで、企業の評判が悪化。顧客や取引先からの信頼を失います。
- ネガティブな口コミが広がり、企業イメージが大きく損なわれます。
採用活動へのマイナス影響
- 悪評が就職希望者の耳に届き、応募者が減少します。
- 特に若手の優秀な人材から敬遠され、採用競争で不利になります。
法的リスク
- 企業側が適切な対応をしなかったとして安全配慮義務違反などに問われる可能性があります。
- 被害者からの損害賠償請求などの訴訟に至る場合もあります。
モラハラ加害者の特徴と具体例
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モラハラ加害者には、自分中心や他責、共感の欠如など共通する言動や態度の特徴があります。これらを理解すると、問題の早期発見につながるでしょう。
自分が正しいと思い込んでいる
プライドが高く「自分の考えが正しい」と思い込んでいます。
自分は正義の行動をしていると考えているため、自覚がないことが特徴です。
自分が上位だと思い込んでいる
高圧的で周囲を見下しています。
「自分が優先されなければならない」と考えており、優先されないと「無礼だ」と不機嫌になります。
恐怖で人を支配しようとする
人を脅しや脅迫で支配しようとします。
傲慢な態度や不機嫌であることを表面に出して、自分が怒っていることをアピールし、相手を従わせようとします。
上司や年長者にこのような態度をとられてしまうと、従わざるを得ない空気になります。
他者への共感の欠如
共感力が低く、相手の意見や感情を無視した行動をとります。
自分の話だけして、自己満足に浸り、相手の話を聞きません。相手の気持ちが分からないため、平気で人を傷つける言動や行動を行います。
企業が実施すべきモラハラ対策
モラハラ対策は、前述のとおり法的な義務は課せられていません。しかし、放置をすると企業の業績に悪影響が生まれます。
以下に、企業がとるべきモラハラ対策を紹介します。
- 就業規則の整備
- ハラスメント研修の実施
- 自由に意見の言える企業風土の醸成
- モラハラ相談窓口の設置
- リスク管理にもとづいた就業環境の整備と改善
就業規則の整備
就業規則にモラハラを含むハラスメントに関する条項を設置し周知します。
ハラスメントの定義を明確化
ハラスメントの定義を明確にし、何がハラスメントにあたるのか就業規則に記載しましょう。
罰則の明確化
ハラスメントと認定された場合の懲戒処分(減給や降格、解雇)を明記します。
公表ルールの策定
モラハラでの処分が下されたときの社内発表のルールを定めます。
ハラスメント研修の実施
「何がモラハラにあたるのか?」全社で共通認識をもつことが大切です。定期的な研修を通じて、モラハラに関する正しい知識を共有しましょう。
全従業員を対象とする
- ハラスメントは職場全体の問題であるため、全従業員を研修の対象とすることが重要です。
- 新入社員から経営層まで、全員が共通の理解を持つことで、職場全体で問題解決に向けた基盤を作ります。
- 立場や役割に応じて研修内容をアレンジし、全従業員に適切な情報を提供します。
定期的な研修で意識改革
- 一度の研修で終わらせず、定期的に実施することで、継続的な意識改革を図ります。
- ハラスメントに関する認識は時間とともに薄れがちですが、繰り返し学ぶことで行動や思考の変化を促進します。
- 最新の事例や法改正を取り入れることで、時代に合った教育を行います。
ハラスメント研修とは?防止研修の内容や実施ポイントについて解説
【パワハラ防止法対策】ハラスメント研修の基本を徹底解説|4つの方法と効果を出すコツ
自由に意見の言える企業風土の醸成
モラハラを防ぐには、自由に話せて声を上げやすい環境や文化の醸成が大切です。
オープンドアポリシーの導入
オープンドアポリシーとは、従業員が、経営層や上司に対していつでも気軽に相談できる環境をつくる施策です。開かれた風通しの良い職場文化をつくります。
1on1ミーティングの導入
1on1ミーティングとは、上司と部下との1対1で行われる定期的なミーティングです。
上司からの業務的な指示を目的とせず、お互いのコミュニケーションを目的としたミーティングを行います。雑談の中で、悩みを話しやすい環境をつくります。
モラハラ相談窓口の設置
信頼できる相談窓口を設置すると、被害者の救済にとどまらず、予防にもつながります。
専門担当者による相談窓口の設置
プライバシー保護の知識を有した専門の担当者を配置し、状況によって、弁護士や社労士などの専門家に迅速に相談できる仕組みを作りましょう。
女性専用の相談窓口の設置
女性専用の窓口を設置し、プライバシー保護の観点から女性のみのチームで対応する配慮が必要です。
匿名性でも相談できる窓口の設置
実名の他にも、匿名でも相談が可能なオンラインフォームや専用電話の設置で、利用のハードルを下げます。
リスク管理にもとづいた就業環境の整備と改善
企業全体でリスクを把握し、安全な職場環境を構築します。
リスクアセスメントの実施
リスクアセスメントとは、リスクの洗い出しや評価を行って対策を講じること。
社内で起きたハラスメント事案の情報を定期的に評価し、組織や就業環境の課題を整理して改善に活用します。
従業員サーベイの導入
従業員サーベイとは、企業が従業員に対して行う調査です。
さまざまな方法がありますが、定期的にWebテストを行い、心身の状態やモチベーションなどの状況を把握する方法が一般的です。
従業員サーベイを行い、悩みを抱えている従業員を迅速に見つけ出して対処すれば、ハラスメントの抑止と職場環境の改善につながります。
モラハラ事案発生時の対応マニュアル
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モラハラに対する相談が寄せられた際、人事担当者が適切かつ迅速に対応できれば、被害者を守りながら職場環境を改善できるでしょう。
ここでは厚生労働省のパワーハラスメント防止指針にもとづいたモラハラ事案発生時の対応方法を解説します。
モラハラに対応するための基本姿勢
企業に求められる基本姿勢は下記の4つです。これらを基本方針として、具体的な対応を以下のように進めていきます。
- 事実関係を迅速かつ正確に確認する
- 被害者へ適切な配慮を行う
- 加害者へ適切な措置を取る
- 再発防止措置を実施する
モラハラへの対応と手順
では具体的な対応方法を手順に沿って見ていきましょう。
調査体制を確立する
まず調査担当者または調査委員会を設置して、公平性を保った調査ができるよう努めます。
担当者や委員会は利害関係のないメンバーで構成し、必要に応じて外部の弁護士など専門家を活用する体制を作ります。
事実を調査する
被害を訴えてきた被害者にヒアリングし、被害内容を詳細に聴取します。ヒアリングの際は、メールや録音など証拠も確認するとよいでしょう。
また、訴えに対して共感を示しながらも中立性を保ち、判断や指導は控えます。さらに加害者や関係者にもヒアリングして、事実を調査していきます。
事実を調査する際のポイントは、下記のとおりです。
- 被害者が提供した証拠資料は、事前に同意を得て共有範囲を限定する
- 調査内容や進捗状況を被害者・加害者双方に適宜説明し、信頼関係を構築する
ハラスメントの有無を判断し、調査報告書を作成する
場合によっては、相談者と行為者の供述が食い違うときもあるでしょう。その際は、ほかの証拠や事実関係をもとに信用性を評価して判断します。
その後、被害の内容や事実の認定、提案すべき改善内容などをまとめ、調査報告書を作成します。
被害者へ適切な配慮を行う
メンタルヘルスについて相談できる場・カウンセリングを受けられる場を提供し、被害者の精神的なケアに努めます。同時に、加害者との接触を回避する策も講じましょう。
安心感を提供するため「相談内容について秘密を守る」「この事実によって不利益な扱いをしない」旨を被害者へ明確に伝えるのも重要です。
加害者へ適切な措置を取る
カウンセリングやハラスメント防止研修を行います。また、再発防止について誓約書の提出を求めます。
処分と公表
就業規則に基づき処分を行います。また、再発防止のための公表を行います。
但し、被害者側が公表を望まない場合は、被害者側の意向を重視しましょう。
再発防止措置を実施する
社内におけるハラスメント防止方針の周知を徹底し、ハラスメント防止に関する研修を実施します。
また、ハラスメントに関するリスクとして何があるか、評価と洗い出しを行い、今後の防止策を講じます。
「manebi」(LMS)を活用したモラハラ研修のメリット
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