職場での「ハラスメント」は、従業員の働きやすさを損ない、企業にとって重大なリスクをもたらします。
本記事では、ハラスメントの種類を一覧で紹介します。法的義務や法的リスク、経営リスク、そして具体的な防止策について詳しく解説します。
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資料をダウンロードするハラスメントとは?
ハラスメントとは、相手に対する「嫌がらせ」や「いじめ」などの行為をさします。
職場の3大ハラスメント
以下は、職場の3大ハラスメントとよばれており、企業には防止措置をとる義務が課せられています。
・ パワーハラスメント(パワハラ)
・ セクシュアルハラスメント(セクハラ)
・ マタニティハラスメント(マタハラ)
職場でのハラスメントの現状
(「令和5年度 厚生労働省委託事業_職場のハラスメントに関する実態調査報告書」より引用)
厚生労働省が発表した「職場のハラスメントに関する実態調査報告書」によると、過去3年間における職場でのハラスメント相談の内訳では「パワーハラスメント(パワハラ)」が64.2%と最も多く、半数以上の企業で発生しています。
次いで、「セクシュアルハラスメント(セクハラ)」が39.5%となり、こちらも高い割合を占めています。
また、「顧客からの著しい迷惑行為」である「カスマターハラスメント(カスハラ)」も3位にはいっています。
多くの職場でハラスメントの課題があり、企業の対応が求められています。
職場でのハラスメント防止がもたらすメリット
厚生労働省が調査した「ハラスメント予防・解決の副次的効果」は、1位は「職場のコミュニケーションが活性化する/風通しが良くなる」が39.9%。2位「会社への信頼感が高まる」でした。
(「令和5年度 厚生労働省委託事業_職場のハラスメントに関する実態調査報告書」より引用)
コミュニケーションの活性化による生産性の向上
ハラスメント防止は、従業員が安心して意見を交換し、問題を共有できます。
このような環境では、チーム内のコミュニケーションが円滑になり、業務効率が向上します。意見の多様性が生かされ、新たなアイデアや改善策が生まれることで、組織全体のパフォーマンスが高まります。
従業員のモチベーションを高め離職率を減らす
ハラスメントのない職場環境は、従業員にとって働きやすさを感じられる場を提供します。
心理的安全性が確保されることで、従業員のエンゲージメントが向上し、仕事に対する意欲が高まります。その結果、離職率が低下し、優秀な人材の定着につながります。
企業価値の向上による人材やビジネスパートナーの獲得
ハラスメント防止への取り組みを行う企業は、社会的責任を果たしていると評価され、ブランド価値が向上します。
このような企業には優秀な人材が集まりやすく、信頼を得たビジネスパートナーとの連携機会も増えます。結果として、持続可能な成長を実現するための基盤が強化されます。
職場でのハラスメントの種類を一覧で解説(防止義務あり)

以下に紹介するハラスメントについては防止措置を講じる義務が法的に定められています。企業はきちんと対策を準備する必要があります。
- パワーハラスメント(パワハラ)
- セクシュアルハラスメント(セクハラ)
- マタニティハラスメント(マタハラ)
- 介護休業ハラスメント
パワーハラスメント(パワハラ)
職場におけるパワーハラスメントは、権力や立場の乱用によって他者を傷つける行為です。
パワハラの種類
パワハラにはさまざまな形態があります。
暴言や無視、過剰な業務命令、不適切な評価など、従業員に不快な思いをさせる行為が含まれます。
パワハラの判断基準
パワハラを判断するためには、被害者の主張を鵜呑みにするのではなく、職場での状況や経緯を考慮する必要があります。行為が職場環境を悪化させているか、心理的・身体的に苦痛を与えているかが判断基準となります。
パワハラの具体的な判断基準については「どこからがパワハラ?パワハラの定義と判断基準について詳しく解説!」を参照ください。
パワハラにまつわる法律
日本では、労働施策総合推進法によってパワハラ防止が義務付けられています。
企業は適切な対策を講じ、従業員が安心して働ける環境を提供する義務があります。
セクシュアルハラスメント(セクハラ)
セクシュアルハラスメントは、職場における性的な言動や行為による嫌がらせです。
セクハラは一般的に男性からの加害が注目されがちですが、女性からの加害や、同性間で発生する場合もあります。
さらに、就活生に対するセクハラも問題になっています。
セクハラの種類
セクハラには、身体的接触や不適切な発言、性的な内容の冗談や不快感を与える環境などがあります。
セクハラの判断基準
セクハラの判断基準は、行為が相手にとって望ましくないかどうか、また職場環境に悪影響を与えているかにあります。
相手の意向を無視した言動はセクハラと判断される傾向があります。
セクハラの判断基準については「セクハラ研修の内容、ポイントから効果的な実施方法まで解説」を参照ください。
セクハラにまつわる法律
男女雇用機会均等法により、企業はセクシュアルハラスメントの防止策を講じる義務があります。適切な教育や相談体制の整備が求められます。
マタニティハラスメント(マタハラ)
マタニティハラスメントは、妊娠や出産、育児を理由に不利益を被る嫌がらせを指します。
マタハラは主に母親を対象とするハラスメントとして問題視されていますが、最近では父親が育児休業を取得する際に嫌がらせを受ける「パタニティハラスメント(パタハラ)」も注目されています。
マタハラの種類
マタハラには、妊娠や育児休暇取得、時短勤務に対する嫌がらせや、復職後の不適切な対応などが含まれます。
マタハラの判断基準
マタハラの判断基準は、妊娠・出産、育児に関連して不利益を受けているかどうかです。例えば、育児休暇後の不合理な配置転換や業務負担が問題となります。
マタハラにまつわる法律
労働基準法や男女雇用機会均等法、育児・介護休業法により、妊娠・出産に関連する従業員の権利が守られています。
企業はこれらの法律に基づき、適切な対応が必要です。
介護休業ハラスメント
介護休業ハラスメントとは、介護休業や時短勤務などを取得したことを理由にした不利益や嫌がらせを指します。
介護休業ハラスメントの判断基準
介護ハラスメントの判断基準は、介護休業などの取得に関連して不利益を受けているかどうかです。例えば、介護休業を利用した従業員への不合理な配置転換や業務負担が問題となります。
介護休業ハラスメントにまつわる法律
労働基準法や育児・介護休業法により従業員の権利が守られています。企業はこれらの法律に基づき、適切な対応が必要です。
職場でのハラスメントの種類を一覧で解説(防止義務なし)

以下、紹介するモラルハラスメント(モラハラ)やカスタマーハラスメント(カスハラ)などは、現時点で企業に防止措置を求める法的な義務はありません。
しかし、これらのハラスメント行為が発生した場合でも、企業は民事訴訟や刑事告訴により法的な責任を負う場合があります。
防止措置の法的義務がないからといって、企業が対応を怠れば、従業員の健康を損ない、社会的信用を失うリスクが高まります。
実際には多くの企業が自主的にこれらのハラスメントへの対策を講じています。
- モラルハラスメント(モラハラ)
- カスタマーハラスメント(カスハラ)
- 就活終われハラスメント(オワハラ)
- アルコールハラスメント(アルハラ)
モラルハラスメント(モラハラ)
モラルハラスメントとは、精神的な攻撃や侮辱的な態度によって相手に苦痛を与える行為です。人格の否定や侮辱、無視、悪口、過干渉などがあります。
モラハラの判断基準
モラハラの判断基準は、行為が相手に対して心理的な圧力をかけているかどうかです。相手が精神的な負担を感じている場合、その行為はモラハラとみなされる可能性があります。
モラハラにまつわる法律
モラルハラスメントに関する明確な法律はありませんが、労働基準法などの関連法規に基づいて対応が求められます。
例えば、モラハラが原因の精神的ストレスによる休業は、適切な安全配慮を行わなかったとして、企業の管理責任が問われる可能性があります。
カスタマーハラスメント(カスハラ)
カスタマーハラスメントとは、顧客からの理不尽なクレームや要求をさします。カスハラは従業員の心身に大きなストレスを与え、就業意欲の減退や離職者を増やす原因になります。
前出の「令和5年度 厚生労働省委託事業_職場のハラスメントに関する実態調査報告書」では、「顧客等からの著しい迷惑行為」は3位に位置づけられカスハラ対策は企業の課題となっています。
カスハラにまつわる法律
カスハラに関する明確な法律はありませんが、労働基準法などの関連法規に基づいて対応が求められます。
企業は、顧客からの過度な要求から従業員の心身の健康を守る対策をとる必要があります。
就活終われハラスメント(オワハラ)
「就活終われハラスメント」とは、企業が採用活動の一環として、内定を出した学生に対して就職活動を終了させるよう圧力をかける行為を指します。
このハラスメントの目的は、学生が他の企業の採用試験を受けることを防ぎ、競合企業への流出を防ぐことにあります。
オワハラにまつわる法律
オワハラに関する明確な法律はありません。ただし、強要罪などに問われる可能性があります。厚生労働省は「学生の職業選択の自由の侵害」にあたるとして注意喚起を行っています。
アルコールハラスメント(アルハラ)
アルコールハラスメントとは宴会や飲酒にまつわるハラスメントです。業務後の宴会参加の強要や飲酒の強要、宴席での接待の強要などがハラスメントにあたります。
アルハラにまつわる法律
アルハラに関する明確な法律はありません。強要などの一般的な法律の適用や、指揮命令下であるとみなされる場合は「労働時間」となり、労働基準法に照らして残業手当などが発生します。
法的リスク:ハラスメントが企業に与える影響

ハラスメントが発生した結果、企業は民事や刑事での法的リスクが生まれます。ハラスメントに関わる主な法律を紹介します。
- 被害者からの民事訴訟
- 安全配慮義務違反
- 使用者責任
- パワハラ防止法
- セクハラ関連の法的義務
- マタハラ関連の法的義務
- 刑事事件での起訴
被害者からの民事訴訟
被害者から損害賠償や名誉毀損で訴えられる可能性があります。
窓口や専門の担当者を設置し、ハラスメントが発生した際、被害者感情に寄り添った対処を迅速に行うことで訴訟リスクを下げられます。
安全配慮義務違反
労働契約法では、使用者に対して従業員の生命や健康を守る「安全配慮義務」が課せられています。
健康には精神的な安全も配慮するべき内容になります。ハラスメントを放置した場合は、「安全に配慮しなかった」として企業が責任を負う可能性があります。
使用者責任
民法第715条では従業員が業務中に他者に損害を与えた場合、使用者が責任を負います。
従業員が、同じ従業員や取引先に対して、精神的苦痛を与えるなどした場合、企業側の使用者としての責任が問われる可能性があります。
パワハラ防止法
職場内でのパワハラを防止を義務付ける法律で、正式名称は「労働施策の総合的な推進並びに労働環境の改善に関する法律」です。
罰則はありませんが、行政から指導や勧告、企業名の公表が行われる可能性があります。
パワハラ防止法については、
「パワハラ防止法とは?概要と企業が取るべき具体的な対応策を解説 」
を参照ください。
セクハラ関連の法的義務
男女雇用機会均等法では、男女労働者へのセクシャルハラスメント防止のための雇用管理上の措置を企業に義務づけています。
セクハラに関しては、
「セクハラ研修の内容、ポイントから効果的な実施方法まで解説 」
を参照ください。
マタハラ関連の法的義務
男女雇用機会均等法では、「妊娠・出産を理由とする不利益取り扱いの禁止」が定められています。
また、育児・介護休業法では、『育児休業の申出・取得等を理由とする不利益取り扱いの禁止』が定められています。
刑事事件での起訴
職場の安全確保を適切に行わなかったことによる労働安全衛生法違反、業務上過失致死傷罪強要罪、侮辱罪などでの起訴が想定されます。
起訴を回避するには、送検された時点で速やかに弁護士をたて、改善案を検察に提出し、また、被害者との示談をまとめることが重要です。
経営リスク:ハラスメントが企業活動に与える影響
ハラスメントが企業活動に与える影響 ハラスメントは法的なリスクにとどまらず、企業全体に影響を与え、企業の存続を脅かします。
- ブランドイメージの毀損
- 生産性の低下と離職率の上昇
- 人材採用が難しくなる
- 経営陣の信頼喪失
ブランドイメージの毀損
ハラスメント問題が発覚すると、企業のブランドイメージに大きなダメージを与えます。
特に、SNSが普及している現代では、ネガティブな情報が瞬時に拡散し、ブランドイメージの修復には長い時間と多大なコストが必要になります。
生産性の低下と離職率の上昇
職場でハラスメントが横行している環境では、従業員の心理的安全性が損なわれます。この結果、離職率が上昇し、創造性や生産性の低下を招きます。
人材採用が難しくなる
ハラスメントが発覚した企業は「働きにくい環境」「ブラック企業」として悪評がたち、その結果、有能な人材が採用を避けるようになり、長期的な競争力が低下します。
経営陣の信頼喪失
ハラスメント問題に対する経営陣の対応が不十分な場合、従業員からの信頼を失います。これにより、リーダーシップが機能しなくなり、組織全体の統率力が低下します。
ハラスメントが起きない組織をつくるには?

- ガイドラインの整備
- 経営層の強い意思表示
- 風通しの良い職場づくり
- 研修による認識向上
ガイドラインの整備
企業として「何がハラスメントに該当するのか」を明確にし、ガイドラインを策定します。就業規則にもハラスメントの規定を設けて罰則を含めて明記します。
経営層の強い意思表示
経営陣が中心となり、ガイドラインの整備や対策に注力し「ハラスメントを許さない」という強い意思を明確に示すことが重要です。経営層のリーダーシップが、職場全体の意識改革を促します。
風通しの良い職場づくり
ハラスメントの多くは、コミュニケーション不足や誤解から発生します。上司、部下、同僚が垣根を超えて相談できる環境を整え、従業員同士の信頼関係を深めることが大切です。
また、問題が発生したときの相談窓口を設置し、被害者と加害者のプライバシーを保護しながら迅速に対応できる体制を作ります。
研修による認識向上
ガイドラインの整備や相談窓口を設置しても、定着しなければ意味がありません。全従業員を対象にした研修や啓発活動の実施が重要です。
ハラスメントに対して共通認識を持つ
何がハラスメントにあたるのか、ハラスメントがもたらす共通認識をもつことが大切です。
対象は全従業員
研修の対象は、経営層や管理職だけでなく、正社員からパートタイム従業員まで全ての社員とします。組織全体が一丸となってハラスメント防止に取り組むことが、職場環境の改善につながります。
定期的な研修の実施
研修や啓発活動は一度きりで終わらせず、定期的に実施することが重要です。意識の向上や定着、価値観の変化で広がるハラスメントの最新事例や知識を学ぶためにも定期的な研修は必須です。
具体的なハラスメント防止対策については「職場のハラスメントをなくすには?企業に必要なハラスメント対策を解説!」の記事も参照ください。
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eラーニング形式を採用しているため、場所や時間を問わず受講可能で、忙しい従業員でも柔軟に学習を進められます。
以下に、manebiのハラスメント研修が持つ特長を詳しく紹介します。
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manebiでは、導入前に企業の状況や要望を丁寧にヒアリングし、最適な教育プランを提案します。
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