ハラスメントとは?定義や種類、規制の動向を分かりやすく解説!

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2022年11月25日(金)

目次

2020年6月の改正労働施策総合推進法(いわゆる「パワハラ防止法」)によって、大企業には職場におけるパワーハラスメント防止対策が義務づけられました。中小企業においても、2022 年4月から防止対策が義務づけられており、ハラスメントに対する注目が高まっています。本稿では、改めてハラスメントの概要について、その定義、種類、事業主の義務などを詳しく解説していきます。

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ハラスメントとは?

ハラスメントは、「harassment」という英語であり、日本語では「いじめ、嫌がらせ」と訳すことができます。

ハラスメントは、当事者の関係や言動によって数十種類あるともいわれていますが、代表的なものについては、法律や指針で明確に定義が定められています。

冒頭、述べたパワハラ防止法の対象となる職場における「パワーハラスメント」の場合、次の3つの要素をすべて満たすものとされています。

①優越的な関係を背景とした言動であること。
②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものであること。
③労働者の就業環境が害されるものであること。

①の「優越的な関係を背景とした言動であること」については、例えば、上司の部下に対する言動のように、業務を遂行するに当たって、その言動を受ける労働者が行為者に対して抵抗や拒絶することができない可能性が高い関係を背景として行われるものを指します。

また、上司でなくても、同僚や部下からの集団による行動で抵抗や拒絶することが困難なケースも該当します。

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②の「業務上必要かつ相当な範囲を超えたものであること」については、業務上明らかに必要性のない言動や業務の目的を大きく逸脱した言動のように、社会通念に照らし、その言動が明らかに業務上必要性がないか、その態様が相当でないものを意味します。

言動の回数、行為者の人数や態様、手段についても許容範囲が超えていれば該当します。

仮に行為者の言動が労働者の問題行動によるものであっても、人格を否定するような言動は業務上必要かつ相当な範囲を超えたものと判断されます。

③の「労働者の就業環境が害されるものであること」については、その言動で労働者が身体的または精神的に苦痛を与えられ、労働者の就業環境が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な悪影響が生じた場合が該当します。

人の感じ方には個人差があるため、判断に当たっては、社会一般の労働者の平均的な感じ方が基準とされます。

また、言動の回数や継続して行われたかどうかは判断の際に考慮されますが、1回の言動であっても、強い身体的または精神的苦痛を与えるような言動は労働者の就業環境が害するものとなります。

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ハラスメントの種類とは?

パワハラ防止法におけるパワーハラスメントの定義を紹介しましたが、ほかのハラスメントについては、男女雇用機会均等法と育児・介護休業法で、セクシャルハラスメントや妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントの定義を定めています。

セクシャルハラスメント

職場で行われる労働者の意に反する性的な内容の発言や性的な行動によって、労働者が労働条件について不利益を受けたり、就業環境が害されたりすることとしています。

行為者は男女に関係ありません。また、異性に対する言動だけでなく、同性に対するものもセクシャルハラスメントに該当します。

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妊娠・出産・育児休業等ハラスメント

職場での上司・同僚からの妊娠・出産したこと、育児休業、介護休業等の利用に関する言動によって、妊娠・出産した女性労働者や育児休業・介護休業等を申出・取得した男女労働者の就業環境が害されることとしています。

一般的には、妊娠・出産に関する言動はマタニティハラスメント(マタハラ)、男性労働者の育児休業に対する言動はパタニティハラスメント(パタハラ)、介護休業に対する言動はケアハラスメント(ケアハラ)と呼ばれています。

ちなみに、セクシャルハラスメントは国際的に共通して使用されている名称ですが、マタニティハラスメントやパワーハラスメントは、日本の造語であり、国際的には通用しません。

以上、紹介してきた法律や指針で防止対策措置を講じることが義務づけられているもの以外のハラスメントとしては、代表的なものとしては、次のようなものがあります。

・モラルハラスメント

道徳や倫理によって人格否定などの嫌がらせをすることです。

・アルコールハラスメント

飲酒を強要することによる嫌がらせです。酔ったうえでの迷惑な言動も含まれます。

・アカデミックハラスメント

大学や研究機関などの学術機関で教育・研究上の権力を濫用して嫌がらせをすることが該当します。

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これらのハラスメントについては、具体的な法律や指針はないものの、その言動については契約の一般法である民法が適用されます。

ハラスメント規制の動向

日本では、1985年に制定された男女雇用機会均等法が1997年に初めて改正され、その際、セクシャルハラスメントに関する事業主の配慮義務規定ができました。何らかの措置をする義務ではなく、配慮さえすればよく、拘束力や罰則はありません。

2006年の改正で配慮義務は措置義務に変わり、事業主はセクシャルハラスメントについて必要な措置をしなければならないことになりました。

その後、2016年の改正によって、「職場における妊娠・出産等に関する言動に起因する問題に関する雇用管理上の措置」(法11条の2)が設けられるとともに、育児・介護休業法が改正され、事業主に対してマタニティハラスメントについて措置義務が規定されています。

パワーハラスメントについては、2012年、社会問題化したことを受け、厚生労働省にワーキンググループが設けられたものの、法規制がない状態でした。

2019年5月、労働施策総合推進法の改正によってパワーハラスメントに対する事業主の措置義務が2020年6月から施行され、併せてセクシャルハラスメントなど、ほかのハラスメントへの規制も強化されました。

中小企業については、2022年4月1日から職場のパワーハラスメント防止措置は義務化されています。

▼「ハラスメント防止法」についてはこちらをご覧ください
「パワハラ防止法とは?概要と企業が取るべき具体的な対応策を解説」

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ハラスメントに対する事業主の義務とは?

2019年の法改正によって、職場におけるパワーハラスメントやセクシャルハラスメント及び妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントを防止するために、事業主に対して次のような責務規定が定められました。

【事業主の責務】

①職場におけるハラスメントを行ってはならないこと、そのほか職場におけるハラスメントに起因する問題に対する自社の労働者の関心と理解を深めること
②自社の労働者がほかの労働者に対する言動に必要な注意を払うよう、研修そのほかの必要な配慮をするこ
③事業主自身(法人の場合はその役員)が、ハラスメント問題に関する理解と関心を深め、労働者に対する言動に必要な注意を払うこと

なお、改正では、事業主だけではなく、労働者の責務も次のように定めています。

【労働者の責務】

①ハラスメント問題に関する理解と関心を深め、ほかの労働者に対する言動に必要な注意を払うこと
②事業主の講ずる雇用管理上の措置に協力すること

つまり、労働者も事業主が実施するハラスメント研修をはじめとする防止対策に主体的に取り組む必要があるということになります。

※「ハラスメント研修」についてはこちらをご覧ください。
「ハラスメント研修とは?防止研修の内容や実施ポイントについて解説」

ハラスメントによる事業主のリスクとは?

ハラスメント対策をせずに放置していた場合、どのようなリスクがあるのでしょうか。

まず、法律では事業主の措置義務があり、違反した場合には、行政からの指導・勧告のほか、企業名が公表される可能性があります。

さらに被害者がいれば、民事上の不法行為として加害者である労働者だけでなく、事業主も使用者責任によって損害賠償責任を問われることになります(民法709条、715条)。

訴訟に発展した場合、SNSで拡散され、メディアの注目を浴びて社会問題化するというのが昨今の特徴といえるでしょう。

このような事態になると、企業イメージを大きく傷つけ、人材確保が困難になるだけでなく、従業員のモチベーションが下がり、職場全体の生産性の低下を招きます。会社が被るダメージは、計り知れません。

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ハラスメントを放置すると甚大な損害が生じることを踏まえ、事前のリスクマネジメントを講じておく必要があります。そのひとつが、法律で事業主の責務とされているハラスメント研修です。

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