パワハラ防止法とは?概要と企業が取るべき具体的な対応策を解説

  • コンプライアンス

2022年10月19日(水)

目次

2020年6月1日、大企業へ向けて施行されたパワハラ防止法。2022年4月からは中小企業も含め、職場におけるパワーハラスメントの防止措置が全面施行となりました。今回の記事ではそんなパワハラ防止法について、実態や課題、企業が取るべき具体的な対応などを解説します。

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パワハラ防止法とは

パワハラ防止法の正式名称は「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」です。2019年5月に改正されてから、パワハラ防止法のための雇用管理上の措置が義務付けられ、「パワハラ防止法」と呼ばれています。

2020年6月1日から施行され、中小企業では2022年4月1日から、大企業では2022年6月1日から義務化されているのです。企業が講じるべき防止措置として、以下の3つが明記されています。

  1. 職場におけるパワハラの内容・パワハラを行ってはならない旨の方針を明確化し、労働者に周知・啓発する
  2. 相談窓口をあらかじめ定め、労働者に周知する
  3. 職場におけるパワーハラスメントに関わる事後の迅速かつ適切な対応

企業内でパワハラなどの問題行動が起こった際にそれを放置すると法律に違反することになり、ペナルティを受けます。パワハラに限らず、セクハラやマタハラなどの関連する法律も施行されているため、企業には各ハラスメントの対策が求められているのです。

パワハラ防止法が適用される範囲は?

パワハラ防止法が適用されるのは、職場と労働者のふたつです。

  • 職場:「事業主が雇用する労働者が業務を遂行する場所」。会社など毎日出勤するような場所以外でも、社宅・出張先・取引先との打ち合わせの場も職場に含まれる
  • 労働者:正社員に限らず、パート・アルバイト・派遣社員・契約社員などの非正規雇⽤労働者も含まれる。ただし、業務委託をする個人事業主やインターンシップの学生、求職者などは含まれない

パワーハラスメントとなる要素

職場におけるパワハラは、以下3つの要素を満たすものと定義されています。客観的に見て、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については該当しません。

①優越的な関係を背景とした言動

以下のようなケースが考えられます。

  • 権力を持っている上司から部下への嫌がらせ
  • 豊富な知識や経験を持っている同僚や部下からの集団による言動で、たとえば抵抗したり拒絶したりすることが困難な行為

②業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの

業務上明らかに必要のない行為や目的を大きく逸脱した行為、業務遂行の手段として不適切な行為のこと。業務上必要な指導であっても、労働者の人格を否定するような言動があれば、それはパワハラに該当しうるのです。

③労働者の就業環境が害されるもの

労働者が⾝体的⼜は精神的に苦痛を与えられ、就業環境が不快なものとなり、能⼒の発揮に重大な悪影響を生じさせる等の言動のこと。

パワハラについては「どこからがパワハラ?パワハラの定義と判断基準について詳しく解説!」も参照ください。

パワーハラスメントの類型と具体例

厚生労働省は、パワハラの類型と具体例を以下のように提示しています。

  1. 身体的な攻撃
  2. 精神的な攻撃
  3. 人間関係からの切り離し
  4. 過大な要求
  5. 過小な要求
  6. 個への侵害

①身体的な攻撃

殴る蹴る、物で頭を叩く、物を投げつけるなどです。

②精神的な攻撃

人格を否定するような言動、他の従業員の前で罵倒する、長時間に渡って非難するなどです。

しかし、以下2点の場合は該当しません。

  • 遅刻などの一般的な社会ルールを欠くような言動が見られ、何度注意しても改善されない労働者に対して忠告をする
  • 企業の方針や業務内容と大きく逸れるような問題行動を起こした労働者に対して、注意や叱責をする

③人間関係からの切り離し

別室に隔離する、集団で無視や拒絶をする、ほかの労働者の協力を禁止するなどです。ただし、以下の場合は該当しません。

  • 新入社員や中途採用者の育成をするために、別室で研修等の教育を実施する場合
  • 懲戒規定にもとづき処分を受けた労働者に対し、通常業務に復職させるために一時的に別室で研修を受けさせる場合

④過大な要求

新入社員に過大なノルマを課す、私的な雑用を強要する、肉体的苦痛を伴う過酷な環境下で業務に直接関係ない作業を命ずるなどです。しかし、業務の繁忙期に、一時的に通常よりも多い業務の処理を任せる場合は該当しません。

⑤過小な要求

能力や経験とかけ離れた程度の低い業務を任せる、嫌がらせをして仕事を与えないなどです。ただし、労働者能力に応じて一時的に業務内容や業務量を減らす場合は該当しません。

⑥個への侵害

個人情報を他の労働者に暴露する、労働者を職場以外でも継続的に監視する、家族や恋人などプライベートの話を根掘り葉掘り聞くなどです。ただし、労働者の了解を得た上で、必要な範囲内で個人情報の伝達を促す場合は該当しません。

ハラスメントについては「ハラスメントの種類を一覧表でチェック!発生する要因とリスクも解説」も参照ください。

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パワーハラスメントの実態と企業が抱える課題

パワハラの実態

厚生労働省が令和2年に行った「職場のハラスメントに関する実態調査」は、非常に参考になります。全国の従業員30人以上の企業や団体を対象に行われたもので、回答数は6,426です。この調査によると、過去3年間にハラスメントを経験した人の割合は約57%。そこから、内容と割合を見ていきましょう。

  • パワハラ:31.4%
  • 精神的な攻撃:74.5%
  • 上司が制度等の利用の請求や制度等の利用を阻害する言動をする:45%
  • 食事やデートへの執拗な誘い:52.2%

回答企業の約8割が、パワハラを含めセクハラやマタハラなどのハラスメントに対する雇用管理上の措置として、「ハラスメントの内容、ハラスメントを行ってはならない旨の方針の明確化と周知・啓発」および「相談窓口の設置と周知」を実施していると回答しているのです。

限られたデータではあるものの、中小企業・大企業ともにハラスメントに対する問題意識が高まりつつあるとわかります。

企業が抱える課題点

エン・ジャパンが、令和2年に企業の人事担当者を対象として「パワハラ対策」の調査結果を発表しました。それによると、企業の課題第1位は「管理職のパワハラに対する理解度が低い」が55%。2位は「パワハラの基準・境界が曖昧」で47%、3位は「経営層のパワハラに対する理解度が低い」で39%となっています。

パワハラ防止法が施行されたことは確かです。しかし事業主に求められていることは「当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備」と「その他の雇用管理上必要な措置」のいくつか。基本的にパワハラ禁止が定められているわけではないという点に、法律上の限界を感じるでしょう。

中小企業では2022年4月1日から施行が義務化されたものの、今後、「パワハラに当たるのか当たらないのか」の争いが頻発すると予想できます。

パワハラ防止に必要な措置・具体的な対応策

社内規定・社内体制の整備

社内体制の整備においては、セクハラについての男女雇用機会均等法ならびに厚生労働省の「セクハラ指針」および「解釈通達」が参考になります。これをパワハラに応用して社内規定を作ることが有効です。

以下の内容を記載しましょう。

  • 会社においてパワハラがあってはならない旨を明確にする
  • 相談窓口の設置
  • 迅速な調査のフォロー
  • パワハラを行った者に対しては厳正に対処する旨及び対処の内容を規定
  • 相談の秘密保持

社員教育(研修)を実施する

社内規定や社内体制をきちんと機能させるためには、社員がパワハラに対して正しい理解を持ち、どのような対策を講じるかを把握する必要があります。そのために有効なのが、社内研修を実施することです。

パワハラが起こる場面では、常にパワハラを「する側」と「される側」がいます。この両者を意識した内容の研修を実施しましょう。管理者向けの研修と一般社員向けの研修に分けて実施するのが、一番効果的です。

パワハラ研修とは?企業が取るべき社内教育と研修方法を紹介

相談窓口の設置と運用をする

相談窓口は、内部に設置する場合と外部に設置する場合、内部・外部の両方に設置する場合とがあります。相談窓口を設けた際には社員に周知し、利用しやすい体制にすることが必要です。

そのためには相談は面談だけでなく、電話やメールなど複数の方法で受けられるようにすることも有効でしょう。さらに、相談内容や状況に応じた適切な対応が取れるようにフォローの体制を整えてることも大切です。

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今回は、パワハラ防止法の概要と具体的な解決策についてご紹介しました。労働者が安心して働ける環境づくりをすることが、今後の企業の課題と言えるでしょう。コストを抑えつつ質の高い社内研修をオンラインで行うならmanebi eラーニングがオススメです。

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