【研修担当者向け】eラーニング×助成金/補助金の種類・条件をわかりやすく解説

  • eラーニング

2025年4月30日(水)

目次

監修者
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ヒューマンキャピタルパートナーズ株式会社 代表取締役/人的資本経営・組織開発コンサルタント

堂前 晋平

組織・人材開発の専門家として、社員1万人を超える大手IT企業から10名以下の日本料理店まで、延べ500社・5万人超の支援実績を持つ。
大企業での営業経験を経て、ベンチャー企業にて支社設立・事業責任者・取締役としてIPO、さらに子会社設立を経験。上場企業のグループ人事責任者としてM&A後のPMIを担い、社員70名から400名への急成長を支援。これらの多様な経験を活かし、経営と人事の両視点から戦略的人材マネジメントを実践。日本経営品質賞本賞、ホワイト企業大賞、グッドカンパニー大賞などの受賞に寄与。2023年8月manebiのCPO(Chief People Officer)就任。現在はISO30414のリードコンサルタントとして人的資本経営の推進支援や社員研修の講師としても登壇中。

\社員教育はeラーニングと集合研修で/

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「eラーニングを導入したいが、予算が厳しい」

「助成金があるって聞いたけど、よくわからない」

そんな悩みを抱えていませんか?

多くの企業で取り入れられている「eラーニング」ですが、気になるのは費用です。社員のスキルアップのためとはいえ、負担はさけられません。

実は、国や自治体が提供する助成金や補助金を活用すれば、eラーニング導入にかかる費用を大幅に削減 できる可能性があります。

活用すれば、大幅なコストダウンになるので、これからeラーニング導入を考えている方は必ず助成金について理解しておきましょう。

本記事では、eラーニング導入時に活用できる助成金の種類や申請条件を、わかりやすく解説します!

助成金を上手に活用し、費用を抑えながら、効果的な社員教育を実現しましょう。

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eラーニングを実施するなら「助成金」は活用しないと損

eラーニングを導入する際は、助成金を活用することで自社の負担額を大幅に軽減できます。これからラーニングを導入するのであれば、助成金の活用を検討しましょう。まずはeラーニングと助成金に関する、基本的な知識を解説していきます。

助成金とは国や自治体が支給するお金のこと

「助成金」とは、国や自治体から特定の目的を支援するために支給されるお金のことです。

たとえば、従業員のスキルアップを目的に研修を実施する場合、その研修費用や受講中の賃金が助成対象となります。

申請には一定の要件や書類が必要ですが、事前準備をしっかり行えば比較的スムーズに受給できます。費用対効果を高め、社員教育を効率よく実施するためにも、助成金の仕組みを理解しておきましょう。

助成金と補助金の違い

助成金と補助金はどちらも企業の支援を目的としていますが、制度の仕組みや申請条件に違いがあります。以下に主な違いをまとめました。

助成金補助金
管轄主に厚生労働省主に経済産業省と地方自治体
分野・雇用・人材開発・多様な事業・個人向け
募集時期通年・募集期間があり・予算や受付件数に達すると打ち切られる場合が多い
金額少額(数十万円から数百万円程度が多い)高額(少額~数千万円以上のものまで幅広い)
相談する専門家・社会保険労務士・行政書士・中小企業診断士・税理士

助成金は、主に厚生労働省が管轄し、雇用促進や職場環境の改善を目的としています。一定の条件を満たせば受給可能で、募集期間も比較的長く設定されています。

補助金は、経済産業省や地方自治体が主に管轄し、新規事業や設備投資などを支援するためのものです。採択制であり、申請しても必ず受給できるわけではなく、募集期間も短めです。

本記事ではeラーニング導入時に受給しやすい助成金を主として、一部補助金についても紹介しています。

eラーニングに活用できる3つの助成金・補助金

eラーニング導入に利用できる助成金・補助金はいくつかありますが、特に活用しやすいのは次の3つです。

助成金・補助金名概要
人材開発支援助成金従業員のスキル向上を目的とした訓練に対して支給される助成金です。研修費用だけでなく、受講中の賃金も補助されるため、企業側の負担軽減に大きく貢献します。
IT導入補助金業務効率化を目的としたITツールの導入費用を支援する補助金です。eラーニングシステムの導入も対象となり、初期費用を抑えることができます。
雇用調整助成金経営環境の変化で業務縮小を余儀なくされた場合、従業員の雇用維持を目的に訓練時の賃金を補助する制度です。研修期間中も安心して教育投資が行えます。

これらの助成金・補助金を活用することで、企業は必要な研修を無理なく実施でき、社員のスキルアップや業務効率化が図れます。導入前に各制度の条件や申請方法を確認し、計画的に進めましょう。

人材開発支援助成金

人材開発支援助成金は、企業が従業員のスキルアップを目的に研修を実施する際に利用できる厚生労働省所管の制度です。下記の6コースに分類されます。

  • 人材育成支援コース
  • 教育訓練休暇等付与コース
  • 人への投資促進コース
  • 事業展開等リスキリング支援コース
  • 建設労働者認定訓練コース
  • 建設労働者技能実習コース

その中で、eラーニングを導入する際に申請可能な「人材育成支援コース」「人への投資促進コース」「展開等リスキリング支援コース」について、詳しく解説していきます。

「そもそもどのコースを選べばいいのかわからない…」という方は、以下のフローチャートを参考にして自社に合ったコースを選択しましょう。

出展)厚生労働省「人材開発支援助成金(人材育成支援コース)のご案内」 P3

自社の状況に合ったコースを選んで、読み進めてください。

人材育成支援コース

人材開発支援助成金の1つである「人材育成支援コース」について、eラーニングに関わる内容を、下記の3項目にわけて説明します。

  • 概要
  • 対象となる訓練・要件
  • 助成額・助成率

自社が該当するのかを確認してみてください。

人材育成支援コースの概要

人材育成支援コースは、企業が従業員の職務に関連した知識・技能習得のための訓練を実施する際に、訓練経費や賃金の一部を助成する制度です。

この制度を活用することで、企業は人材育成にかかるコストを軽減しつつ従業員がスキルアップできます。中小企業には助成率が高く設定されているため、積極的に人材育成に取り組むことができるようになります。

人材育成支援コースの中には、OFF-JT(職場外での訓練、eラーニングを含む)のみで助成を受けられるものや、OJT(職場内での実地訓練)と組み合わせることで助成を受けられるものがあります。

①人材育成訓練OFF-JT(eラーニング等)のみ
②認定実習併用職業訓練OFF-JTとOJTを組み合わせ
③ 有期実習型訓練

本記事では、OJT併用不要でeラーニングだけでも助成可能な「人材育成訓練」について解説していきます。

分類の詳細については厚生労働省「人材開発支援助成金(人材育成支援コース)のご案内」のP14「人材育成支援コースとは」をご覧ください。

人材育成支援コースの対象となる訓練・要件

人材育成支援コースの人材育成訓練にてeラーニングが助成対象となるためには、以下の条件をすべて満たす必要があります。

  • OFF-JT(eラーニング)で実施される訓練であること
  • 実訓練時間数が10時間以上であること
  • 1訓練あたりの経費が分からない定額制サービスによるものではないこと
  • 広く国民の職業に必要な知識及び技能の習得を図ることを目的としたものであり、特定の事業主に対して提供することを目的としたものではないこと
  • eラーニング又は通信制によるOFF-JTを、在宅またはサテライトオフィス等において実施する場合は、テレワーク勤務の制度を、労働協約又は就業規則等で定めていること

「実訓練時間」とは

ポイントは「実訓練時間が10時間以上であること」です。この「実訓練」とは、職業・職務に関わる知識・技能を習得する訓練です。

例えば、マナーなど職務を問わず共通として必要な訓練は、実訓練とみなされず、実時間時間から除外されます。

これらの該当しない訓練時間を除き10時間以上の実訓練時間を計画する必要があります。

また、実訓練以外の職務に関連のない訓練が、全体の5割以上であると支給対象から外れるので注意が必要です。

つまり、業務に直結しない訓練ばかり学ぶ研修は助成金の対象にはなりません。

除外される訓練の内容に関しては、厚生労働省「人材開発支援助成金(人材育成支援コース)のご案内」のP35「対象とならないOFF-JT」をご覧ください

これらの条件を満たすことで、研修費用や賃金助成を確実に受給できます。申請漏れや不備がないよう、事前確認を徹底しましょう。

人材育成支援コースの助成額・助成率

人材育成支援コースのうち、人材育成訓練の助成額・助成金は以下のとおりです。

支給対象者賃金助成額(1人1時間当たり)経費助成率
通常賃金要件等を満たす場合通常賃金要件等を満たす場合
正規雇用労働者等760円(380円)960円(480円)45%(30%)60%(45%)
非正規雇用60%75%
非正規雇用から正規雇用労働者になった者70%100%

※( )内は中小企業以外の助成金・助成率

出展:「人材開発支援助成金(人材育成支援コース)のご案内」(厚生労働省)P2「助成額・助成率」を加工して作成

「賃金要件等を満たす場合」とは、下記のいずれかを満たす場合です。

  • 訓練修了後に行う訓練受講者に係る賃金改定前後の賃金を比較して5%以上上昇している場合
  • 資格等手当の支払を就業規則等に規定した上で、訓練修了後に訓練受講者に対して 当該手当を支払い、かつ、当該手当の支払い前後の賃金を比較して3%以上上昇している場合

条件や助成額・助成率については、会社規模や状況によって変動する場合があります。詳細については厚生労働省の公式サイトを参照してください。

人への投資促進コース

人材開発支援助成金の1つである「人への投資促進コース」について、eラーニングに関わる内容を、下記の3項目にわけて説明します。

  • 概要
  • 対象となる訓練・要件
  • 助成額・助成率

自社が該当するのかを確認してみてください。

人への投資促進コースの概要

人への投資促進コースは、企業が従業員の職業能力を向上させるために実施する訓練に対し、特にeラーニングを活用したデジタル技術の習得や、新たな業務への挑戦を支援する助成制度です。大きく5つに分類されます。

  • 高度デジタル人材訓練/成長分野等人材訓練
  • 情報技術分野認定実習併用職業訓練
  • 定額制訓練
  • 自発的職業能力開発訓練
  • 長期教育訓練休暇等制度

特にeラーニングに関する訓練を太字で示しました。

国民の提案を反映した助成金制度であるため、デジタル人育成のための「高度デジタル人材訓練/成長分野等人材訓練」や、人材育成支援コースでは対象外であるサブスク型の研修に対して助成する「定額制訓練」などが対象になります。

人への投資促進コースの対象となる訓練・要件

人への投資促進コースの中でも特にeラーニングが関係する「定額制訓練」に関して、対象となる要件は以下の通りです。

  • 定額制サービスによる訓練であること
  • OFF-JTであること
  • 業務上義務付けられ、労働時間に実施される訓練であること
  • 職務に関連した専門的な知識および技能の習得をさせるための訓練であること
  • 各支給対象労働者の受講時間数を合計した時間数が、支給申請時において10時間以上であること(詳細は人への投資促進コースのご案内のP18参照)
  • 訓練の実施期間は1年以内であること

趣味や教養のような職務に関連のない訓練が、全体の5割以上であると支給対象から外れるので注意が必要です(5割要件)。

人への投資促進コースの助成額・助成率

「定額制訓練」にて支給を受けられる助成額および助成率は、企業の規模やによって異なります。一般的には以下の通りです。

支給対象者賃金助成額(1人1時間当たり)経費助成率
通常通常賃金要件等を満たす場合
中小企業45%(30%)60%(45%)
大企業60%75%

出展)厚生労働省「人材開発支援助成金(人への投資促進コース)のご案内」を加工して作成

「賃金要件等を満たす場合」とは、下記のいずれかを満たす場合です。

  • 訓練修了後に行う訓練受講者に係る賃金改定前後の賃金を比較して5%以上上昇している場合
  • 資格等手当の支払を就業規則等に規定した上で、訓練修了後に訓練受講者に対して 当該手当を支払い、かつ、当該手当の支払い前後の賃金を比較して3%以上上昇している場合

また、人への投資促進コースでは、基本的にeラーニングにおいて賃金助成は発生しないことに注意が必要です。

事業展開等リスキリング支援コース

事業展開等リスキリング支援コースは、企業が新たな事業分野への進出や業務のデジタル化を推進する際に、従業員に必要なスキルや知識を習得させるための訓練を支援する制度です。下記の3項目にわけて説明します。

  • 概要
  • 対象となる訓練・要件
  • 助成額・助成率

自社が該当するのかを確認してみてください。

事業展開等リスキリング支援コースの概要

事業展開等知スキリング支援コースは、特に企業の新規事業立ち上げや事業展開に伴い、従業員が必要な知識・技能を習得するための訓練に対して助成する制度です。

新製品の製造や新サービスの提供など、新たな分野への事業展開や、ITツールの活用による業務効率化・DX化に伴う専門的なスキル習得を目的とした訓練が対象となります。

事業展開等リスキリング支援コースの対象となる訓練・要件

このコースの対象となる訓練は、以下の要件を満たす必要があります。

  • OFF-JTにより実施される訓練であること
  • 実訓練時間数が10時間以上であること
  • 1訓練あたりの経費が分からない定額制サービスによるものではないこと
  • 広く国民の職業に必要な知識及び技能の習得を図ることを目的としたものであり、特定 の事業主に対して提供することを目的としたものではないこと
  • eラーニング又は通信制によるOFF-JTを、在宅またはサテライトオフィス等において実施する場合は、テレワーク勤務の制度を、労働協約又は就業規則等で定めていること
  • 次の① または ②の いずれか に当てはまる訓練であること

① 事業展開を行うにあたり、新たな分野で必要となる専門的な知識及び技能の習得 をさせるための訓練

 ② 事業展開は行わないが、事業主において企業内のDX化やグリーン・カーボンニュートラル化を進める際、必要となる専門的な知識及び技能の習得をさせるための訓練

企業が新規の事業展開を行うか、DX等を推進する際に、適切な訓練が行われていれば助成金を受けることができます。

事業展開等リスキリング支援コースの助成額・助成率

事業展開等リスキリング支援コースで受けられる助成額は以下の通りです。

支給対象者賃金助成額(1人1時間当たり)経費助成率
中小企業960円75%
大企業480円60%

出展)厚生労働省「人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)のご案内」を加工して作成

eラーニングや通信制による訓練、育児休業中の者に対する訓練の場合は、経費助成のみが対象となり、賃金助成は適用されません。

IT導入補助金

IT導入補助金は、中小企業や小規模事業者がITツールを導入する際に、その費用の一部を国が補助する制度です。下記の3項目にわけて説明します。

  • 概要
  • 対象となる訓練・要件
  • 助成額・助成率

eラーニング導入も対象となるため、理解しておきましょう。

IT導入補助金の概要

IT導入補助金は、中小企業や小規模事業者がITツールを導入する際に、その費用の一部を国が補助する制度です。

業務効率化や生産性向上を図る企業の負担を軽減し、デジタル化を推進します。eラーニングシステムの導入も対象となるため、研修担当者はこの補助金を活用してコストを抑えつつ、効果的な人材育成を実現できます。

比較的、利用しやすい補助金と言われています。積極的に活用しましょう。

IT導入補助金には5つの枠があります。

  • 通常枠
  • インボイス枠(インボイス対応類型)
  • インボイス枠(電子取引類型)
  • セキュリティ対策推進枠
  • 複数社連携IT導入枠

出展:サービス等生産性向上IT導入支援事業事務局ポータルサイト「IT導入補助金制度概要」

この中でeラーニング導入が対象となるのは「通常枠」のため、以降は通常枠について解説していきます。

IT導入補助金の対象となる訓練・要件

IT導入補助金の対象者は、以下の要件を満たす中小企業・小規模事業者です。業種や組織形態に応じて、資本金や従業員数の基準が定められています。一例を下記の表に示します。

◆中小企業

業種分類・組織形態資本金従業員
製造業、建設業、運輸業3億円300人
卸売業1億円100人
小売業5,000万円50人
サービス業(ソフトウェア業、情報処理サービス業、旅館業を除く)5,000万円100人
ゴム製品製造業(自動車・航空機用タイヤ・チューブ製造業、工業用ベルト製造業を除く)3億円900人
ソフトウェア業、情報処理サービス業3億円300人
旅館業5,000万円200人
その他(上記以外)3億円300人

◆小規模事業者

業種分類・組織形態資本金従業員
商業・サービス業5人以下
サービス業のうち宿泊業・娯楽業20人以下
製造業その他20人以下

出典:独立行政法人中小企業基盤整備機構「申請の対象となる方 | IT導入補助金2025」を加工して作成

資本金あるいは従業員数のどちらか一方が記載の数値以下であれば対処となります。

IT導入補助金の補助額・補助率

IT導入補助金の助成額や助成率は、申請枠や導入するITツールの種類によって異なります。以下に、主な申請枠ごとの補助率と補助額をまとめました。

プロセス補助率補助額
1プロセス以上1/2以内※賃上げ要件を満たす場合は2/3以内5万円以上150万円以下
4プロセス以上150万円以上450万円以下

出典:独立行政法人中小企業基盤整備機構「通常枠|IT導入補助金2025」を加工して作成

補助率については、3か月以上地域別最低賃金+50円以内で雇用している従業員が、全従業員の30%以上であることを示した場合、補助率が2/3となります。

補助額はプロセス数によって変動します。プロセス数とは以下に示すような工程や業種の区分です。

  • 顧客対応・販売支援
  • 決済・債権債務・資金回収管理
  • 供給・在庫・物流
  • 会計・財務・経営
  • 総務・人事・給与・教育訓練・法務・情シス・統合業務
  • その他業種固有のプロセス
  • 汎用・自動化・分析ツール(単体での使用は不可)

これらのうち、4種類以上の業務プロセスを保有するソフトウェアを申請すれば、補助を受けることができます。

例えば、資本金8,000万円の小売業が、eラーニングを導入して100万円であった場合。補助率1/2なので50万円が補助され、企業の実質負担は50万円となります。

雇用調整助成金

雇用調整助成金は、事業活動の収縮を余儀なくされた企業という条件はあるものの、eラーニング導入によって助成を受けられる場合があります。下記の3項目にわけて説明します。

  • 概要
  • 対象となる訓練・要件
  • 助成額・助成率

eラーニングが該当しない場合もあるので、対象となる場合は注意しましょう。

雇用調整助成金の概要

雇用調整助成金は、経済的な理由で事業活動の縮小を余儀なくされた企業が、従業員の雇用を維持するために実施する取り組みに対して、休業手当や賃金の一部を国が助成する制度です。

この制度は、企業が一時的な業績悪化に直面した際に、従業員を解雇せずに雇用を維持できるよう支援することを目的としています。助成対象となる雇用調整には、以下のようなものがあります。

  • 休業:業務縮小に伴う一時的な労働時間削減
  • 教育訓練:業務縮小期間を活用した従業員のスキルアップ研修(eラーニングを含む場合あり)
  • 出向:他の企業への一時的な配置転換(労働者の雇用維持を目的とする場合)

eラーニングは教育訓練に当たります。ただし「事業所内の会議室等で、双方向のやりとりができるオンライン講座を受講させるもの」という条件があるため、動画を視聴するタイプのeラーニングは該当しません。

動画視聴(eラーニング)とワークショップを組み合わせた「ブレンディッドラーニング」タイプであれば、雇用調整助成金の対象となりえます。

雇用調整助成金の対象となる訓練・要件

雇用調整助成金の要件は下記の通りです。

  • 「景気の変動、産業構造の変化その他の経済上の理由」により、「事業活動の縮小」 を余儀なくされた企業であること
  • 「労使間の協定」に 基づき「雇用調整(休業・教育訓練・出向)」を実施する事業主であること
  • 雇用保険適用事業主であること
  • 「受給に必要な書類」について、(a) 整備し、( b)受給のための手続に当たって労働局等に提出するとともに、(c)保管して労働局等から提出を求められた場合にそれに応じて速やかに提出すること
  • 労働局等の実地調査を受け入れること。

そのため、事故や災害による被害や、法令・司法処分、毎年の気候変動による影響は該当しません。

細かい条件については厚生労働省「雇用調整助成金ガイドブック」をご覧ください。

雇用調整助成金の助成額・助成率

受給額は、休業や教育訓練を実施した場合に、事業主が支払った休業手当や賃金の負担額に、以下の助成率を乗じた金額となります。

企業規模助成率日額上限額(令和6年8月1日時点)教育訓練加算額(1人1日あたり)
中小企業2/3※8,635円1,200円または1,800円※
大企業1/2

※教育訓練実施率により異なる

出典:厚生労働省「雇用調整助成金ガイドブック」を加工して作成

中小企業であれば2/3が助成されますが、1日1人当たり雇用保険基本手当日額の最高額が上限となります。教育訓練を行った場合は、訓練費として1人1日あたり1,200円が加算されます。

令和7年度スキルアップ支援事業(東京都のみ)

東京都では企業の人材育成を支援するため、さまざまな助成金制度を設けています。特に、令和7年度のスキルアップ支援事業では、以下の4つの助成金が提供されています。

  • 事業外スキルアップ助成金
  • 事業内スキルアップ助成
  • DXリスキリング助成金
  • 育休中スキルアップ助成金

各助成金の概要と特徴を理解し、企業の研修計画に役立ててください。

事業外スキルアップ助成金

事業外スキルアップ助成金は、従業員のスキルアップのための研修を実施する都内企業等に対し、助成金を支給します。職務のスキルアップのため、教育機関の公開研修を利用して実施する研修が助成対象です。

対象となる研修の条件の一部は以下の通り。

  • 教育機関が計画した既存の公開研修であること
  • 集合研修(同時かつ双方向で行われるオンライン研修を含む。)又は e ラーニングであること
  • 受講に係る経費が、受講者1人1研修単位であらかじめ定められていること
  • 通常の業務と区別できるOFF-JTであること
  • 1研修あたりの総研修時間数が3時間以上 10 時間未満であること

eラーニングも対象となっています。助成額は下記の表の通りです。

申請企業等の区分助成額
小規模企業者助成対象経費3分の2(上限25,000円/助成対象受講者1人1研修)
中小企業等助成対象経費2分の1(上限25,000円/助成対象受講者1人1研修)

出展:公益社団法人 東京しごと財団「事業外スキルアップ助成金 募集要項」を加工して作成

事業内スキルアップ助成金

事業内スキルアップ助成金は、従業員のスキルアップのための研修を実施する都内企業等に対し、助成金を支給します。職務のスキルアップのため、自社で企画した研修が助成対象です。

対象となる研修の条件の一部は以下の通り。

  • 申請企業等の従業員を対象として計画する研修であること
  • 集合研修(同時かつ双方向で行われるオンライン研修を含む。)又は e ラーニングであること
  • 受講者の職務に必要となる専門的な技能・知識の習得・向上又は専門的な資格の取得を目的とする研修であること
  • 通常の業務と区別できるOFF-JTであること
  • 1研修あたりの総研修時間数が3時間以上 10 時間未満であること

eラーニングも対象となっています。助成額は下記の表の通りです。

「助成対象受講者数×研修時間数×760 円」

出展:公益社団法人 東京しごと財団「事業内スキルアップ助成金 募集要項」

DXリスキリング助成金

DXリスキリング助成金は、従業員のスキルアップのための研修を実施する都内企業等に対し、助成金を支給します。自社の DX のために実施する研修が助成対象です。

対象となる研修の条件の一部は以下の通り。(レディメイド研修またはオーダーメイド研修については、どちらかを満たせば良い)

  • レディメイド研修(教育機関が計画した既存の公開研修であることかつ、集合研修(同時かつ双方向で行われるオンライン研修を含む。)又は e ラーニ ングであること)
  • オーダーメイド研修(申請企業等の従業員を対象として計画し、教育機関に委託して実施する研修であることかつ、集合研修(同時かつ双方向で行われるオンライン研修を含む。)であること)
  • 受講に係る経費が、受講者1人1研修単位であらかじめ定められていること
  • 申請企業等のDX推進のために必要な知識・技能の習得・向上を目的とする研修又は専門的な資格 を取得するための研修であること
  • 通常の業務と区別できるOFF-JTであること
  • 1研修あたりの総研修時間数が3時間以上 10 時間未満であること

eラーニングも対象となっています。助成額は下記の表の通りです。

「助成対象経費の4分の3(上限 75,000 円/助成対象受講者1人1研修)」

出展:公益社団法人 東京しごと財団「DXリスキリング助成金 募集要項」

育休中スキルアップ助成金

育業中スキルアップ助成金は、従業員のスキルアップのための研修を実施する都内企業等に対し、助成金を支給します。従業員が希望し育業中に受講するスキルアップのための研修が助成対象です。

対象となる研修の条件の一部は以下の通り。

  • 教育機関が計画した既存の公開研修であること
  • 集合研修(同時かつ双方向で行われるオンライン研修を含む。)又は e ラーニングであること
  • 育業中の従業員が、育業期間中に受講する研修であること
  • 受講に係る経費が、受講者1人1研修単位であらかじめ定められていること
  • 研修に要する経費の2分の1以上を申請企業等が負担していること

他の助成金と比べると研修内容に関する制約は少ない代わりに、育業期間中に受講する必要があります。また、eラーニングも対象となっています。

助成額は下記の表の通りです。

申請企業等の区分助成額
中小企業等助成対象経費3分の2
大企業助成対象経費2分の1

出展:公益社団法人 東京しごと財団「育業中スキルアップ助成金 募集要項」

eラーニングで助成金を使用するメリット3選

eラーニングの導入に際して、助成金を活用することで多くのメリットが得られます。以下に、特に注目すべき3つを解説します。

  • 助成金で研修費用のコスト削減や人件費の負担を軽減できる。
  • 業務の隙間時間で社員スキルを向上できる
  • 助成金を活用すると「企業の評価」が上がる

コスト面での手厚い補助が受けられるため、助成金のメリットはしっかりと把握しておきましょう。

助成金で研修費用を大幅カットできる

eラーニング導入時の課題である「費用」を、助成金を活用することで解決できます。

助成金を利用すれば、研修費用や、研修中の人件費の一部、または大部分を補助してもらうことが可能です。

例えば、「人材開発支援助成金」では、eラーニングの受講料や教材費、講師費用などが助成対象となります。「IT導入補助金」を利用すれば、LMS(学習管理システム)の導入費用も支援の対象となります。

コストを抑えつつ研修を実施し、従業員の技術向上と企業成長を実現できます。

業務の隙間時間でスキルを向上できる

eラ-ニングは従業員の時間を損なうことなく、スキルを磨くことができます。

従来の集合研修では、業務を中断し時間と場所を拘束した上で参加する必要がありました。しかし、eラーニングは時間や場所を問わず受講できるため、業務の合間の隙間時間を活用して学習が可能です。

これにより、効率的に社員のスキルアップを図ることができます。さらに、助成金を活用することで、研修中の賃金補助を受けられる場合もあり、企業と社員双方にとってメリットがあります。

助成金を活用すると「企業の評価」が上がる

助成金を積極的に活用し、社員教育に力を入れている企業は、対外的な評価が向上します。

「研修制度が充実している企業」として、求職者からの注目度が高まり、採用活動において有利に働くでしょう。

また、金融機関からも「公的支援を適切に活用している=経営が安定している」と評価され、信用度が増す可能性があります。

社員にとってもスキルアップの機会が豊富な環境はモチベーション向上につながり、結果として離職率の低下や生産性の向上といった効果が期待できます。

以上のように、eラーニング導入時に助成金を活用することで、費用面だけでなく、業務効率や企業の評価向上など、多くのメリットがあります。これらの制度を上手に活用し、効果的な人材育成を推進していきましょう。

eラーニングで助成金を使用するときの注意点3選

eラーニング導入により助成金を活用する際、特に気をつけるべき3つのポイントを解説します。

  • 助成対象にならないケースがある
  • 申請期間を逃すと助成金が受けられない
  • eラーニングの選定が難しい

助成金を受けられなくなるケースもあるので、事前に確認しておきましょう。

助成対象にならないケースがある

助成金には「標準学習時間」や「研修内容」に関する細かな要件が定められており、これらの基準を満たさない場合、支給対象外となることがあります。

  • 研修時間が短すぎる
  • 企業規模が該当していない
  • 対象外の研修内容を選択してしまう
  • LMS(学習管理システム)を活用していない

上記のようなパターンが該当します。事前に要項やガイドブックをよく読み、自社の状況や選定したeラーニングが該当しているかを、必ず確認しましょう。

申請期間を逃すと助成金が受けられない

助成金には厳密な申請期間が設定されており、期限を過ぎると受給できなくなるため注意が必要です。一般的な申請スケジュールは以下のとおりです。

  • 研修実施前:事前申請が必要な場合がある
  • 研修実施中:受講記録(LMSログ・修了証)を適切に保存
  • 研修終了後:定められた期間内に申請手続きを完了

締切間際ではなく、早めに申請準備を進めるようにしましょう。

eラーニングの選定が難しい

eラーニングを導入する際、単に「学べるシステム」であれば良いわけではありません。企業研修として活用しやすく、受講者が無理なく継続でき、かつ従業員のスキル向上に役立つものを選ぶ必要があります。

例えば、下記のような点に注意して選定すると良いでしょう。

  • 研修の運用がスムーズにできるか:管理者が受講者の進捗をリアルタイムで確認できるシステムであること。
  • 受講状況を可視化できるか:LMSを活用し、誰が・どの研修を・どれくらい学んでいるのかを把握できること。
  • 研修効果を測定しやすいか:修了テストやアンケート機能があり、学習成果をデータで分析できること。

eラーニングの導入目的は、社員のスキルアップと企業の成長につなげることです。社内での活用イメージを具体的に描きながら、最適なeラーニングを検討しましょう。

どのeラーニングを選べばいいか迷っているのであれば、手厚いサポートで初めてのeラーニングでも安心の「manebi」にご相談ください。

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はじめてのeラーニングに「manebi」を選ぶべき3つの理由

引用:株式会社manebi 公式Webページ

「eラーニングを導入したいけど、はじめてなのでよくわからない…」

そんな不安を持った担当者様には「manebi」が最適です。その理由を以下の3つのポイントでご紹介します。

  • 導入から運用まで手厚いサポートで安心
  • 3,500社以上の圧倒的な導入実績
  • 5,000以上のeラーニング教材を目的に合わせてカスタマイズ可能

どのeラーニングを選べば良いか迷っている方は、ぜひ参考にしてみてください。

導入から運用まで手厚いサポートで安心

はじめてのeラーニング導入では、多くの担当者がわからないことが多く不安に感じています。そんな中でeラーニング導入を成功させるには、わからないことを聞きながら、スムーズな導入・運用できる環境が大切です。

「manebi」では、専任の担当者が、システム的なサポートに加えて効果的な研修の実施や効果測定も支援いたします。

  • 導入時のシステムサポート支援
  • 貴社の課題に合わせた教育プランの作成支援
  • 学習の定着の仕組み作りを支援
  • 効果の最大化、効果測定の支援

eラーニングや研修について詳しくなくても、安心してeラーニングを導入可能です。

3,500社以上の圧倒的な導入実績

「manebi」には、多くの企業に選ばれている実績があります。

  • 導入企業数:3,500社以上
  • 継続率:99%
  • 業種:大手メーカー、IT企業、医療、小売、建設業界など多岐にわたる

社員研修、新人教育、コンプライアンス研修、リスキリングなど多様なニーズに対応してきた経験から、業種や規模を問わず対応可能です。

6,000以上のeラーニング教材を目的に合わせてカスタマイズ可能

「manebi」では、企業の要望に合わせて多彩な教材を提供しています。

  • 教材数:6,000以上
  • 対応テーマ:DX、ITスキル、コンプライアンス研修など
  • カスタマイズ性:業種別・職種別に最適化された教材の選択や、オリジナル教材の追加も可能

豊富な教材によって、自社に最適な研修コンテンツを構築し、効果的な社員研修を行えます。

初めてのeラーニング導入には、手厚いサポートと豊富な実績、多彩な教材を備えた「manebi」をぜひご検討ください。

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eラーニングの助成金に関するよくある質問

eラーニング導入に向けて、助成金の利用を考えている方からのよくある質問にご回答します。

助成金の申請や活用に関しては、最新の情報を確認し、適切な手続きを行いましょう。

 eラーニングと集合研修の違いは何ですか?

eラーニングと集合研修は、研修の実施方法や特徴において以下のような違いがあります。

項目eラーニング集合研修
実施方法インターネットを通じて、各自のペースで学習指定された日時・場所に集まり、講師から直接指導を受ける
場所・時間の柔軟性受講者が任意の場所・時間で学習可能特定の場所・時間に全員が集まる必要がある
コミュニケーション基本的に個別学習で、他の受講者との直接的な交流は少ない受講者同士や講師との対面でのコミュニケーションが活発
コスト会場費や交通費が不要で、比較的低コスト会場手配や交通費などが必要で、コストが高くなる場合がある

eラーニングは、時間や場所の制約が少なく、個々のペースで学習できる点が特徴です。一方、集合研修は対面でのコミュニケーションが取りやすく、直接的な指導が受けられる利点があります。

eラーニングをすれば助成金はかならず受け取れますか?

eラーニングを導入しただけでは、助成金を必ず受給できるわけではありません。助成金の受給には、例えば以下のような条件を満たす必要があります。

  • 研修内容:助成金の対象となるスキルアップ研修であること。
  • 学習時間:助成金の要件として定められた最低学習時間を満たしていること。
  • 受講管理:学習管理システム(LMS)を活用し、受講ログや修了証明書を適切に管理していること。

これらの条件を満たしていない場合、助成金が支給されない可能性があります。不安な場合は、研修を委託する業者や専門家に相談し、適切な手続きを行うことが重要です。

人材開発支援助成金の上限額はいくらですか?

人材開発支援助成金の上限額は、コースの種類や企業規模によって異なります。
たとえば、「人材育成支援コース」の場合、1事業所または1事業主団体等が1年度(4月1日から翌年3月31日まで)に受給できる助成額の上限は最大1,000万円とされています。

なお、令和5年4月の制度改正により、従来の「特定訓練コース」「一般訓練コース」「特別育成訓練コース」は廃止され、すべて「人材育成支援コース」に統合されました。そのため、以前のような500万円/1,000万円といった区分は廃止されています。

また、訓練の種類や内容によって、1人当たりの経費助成限度額や賃金助成額も設定されています。詳細は、厚生労働省の公式資料をご確認ください。

まとめ|助成金を使いこなしてeラーニングを導入しよう

eラーニングを導入する際、助成金を活用すれば、研修費用や研修中の人件費の負担を大幅に削減できます。

本記事で紹介した人材開発支援助成金、IT導入補助金、雇用調整助成金などを上手に活用し、自社の人材育成を効率的に進めましょう。

「どのeラーニングを選べばいいかわからない…」という場合は、「manebi」のeラーニングにご相談ください。6,000以上のコンテンツとサポート体制で、多くの企業様に導入いただいています。

詳しくは、「サービス資料・教材一覧ダウンロード」からご確認ください。

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