人前で話す経験が少ないもしくは苦手な人にとって、社内とはいえ研修講師として人前に立ち、しっかりと全員に伝わるよう話すのはかんたんではありません。緊張や照れから口ごもってしまったり、早口になってしまったりすれば、内容はよくても受講者には伝わらないでしょう。
本記事では、研修講師を務めるときの準備や進め方、話し方のコツなどを紹介します。「初めて研修講師をする人」「研修講師になった部下から相談を受けた」といった人はぜひ参考にしてください。
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資料をダウンロードする社内研修の準備
講師として社内研修を行うには、まず事前の準備が欠かせません。ここでは講師が行うべき4つの準備について解説します。
- 構成を考える
- 原稿を作成する
- リハーサルを行う
- 録画・録音する
構成を考える
受講者に伝わるような研修を行ううえで最も重要なポイントは「構成」です。順序立てて話を進めていかなければ伝えたいことの半分も伝えられません。構成を考える際のおもなポイントは次の3点です。
1. 伝えたいことをすべて書き出す
研修のテーマをもとに、伝えたいことを漏れなくすべて書き出していきます。
2. 内容を絞る
限られた時間のなかですべてを伝えようとすれば、全体的に浅い内容になり、受講者には伝わりません。基本的にテーマに対し最も伝えたい部分をひとつに絞り、それを軸として構成を考えます。
3. 構成のなかにグループワークを組み込む
研修のなかにグループワークを組み込み、受講者同士で意見を言い合う時間をつくりましょう。最初から最後まで講師が話し続ける研修では、受講者が途中で飽きてしまいます。グループワークを組み込めば、受講者の集中力が落ちるリスクを避けられるはずです。また、受講者同士のコミュニケーションの活性化も図れます。
原稿を作成する
決まった構成をもとに原稿を作成します。ポイントは次の4点です。
1. 短い文章を心がける
一文が長いと何を伝えたいかがわかりにくくなります。基本的には一文で伝えるのはひとつの内容に絞り、短い文章にするのが重要です。
2. 冒頭で研修の目的、ゴールを共有する
研修の冒頭で目的とゴールの共有をします。研修を受けることで何を実現させるのか、どのようなメリットがあるのかを共有することで、受講者のモチベーションアップが可能です。
3. 受講者とコミュニケーションを取る時間を入れる
問いかけや質問受付など、受講者とコミュニケーションを取る時間をつくります。講師が原稿に沿って一方的に話すだけでは、受講者に研修内容が伝わっているかがわかりません。研修のなかで重要なポイントを話したあとには、必ず受講者に伝わっているかを問いかけたり、質問を受けつけたりする時間をつくりましょう。
4. 事例を交える
研修のなかでわかりにくい、伝わりにくいと思う箇所には事例を入れるようにします。受講者が理解しやすい事例を交えると、わからないまま研修が進んでしまうリスクを減らせるでしょう。
リハーサルを行う
原稿を作成したらリハーサルを行います。ポイントは次の2点です。
1. 構成や原稿に問題はないか
頭のなかで組み立てた時点では問題がなくても、実際に声に出して話してみると伝わりにくい、わかりにくい点が出てくる場合があります。可能であれば、第三者にリハーサルを見てもらい、最終稿を作成していきましょう。
2. 会場や設備に不備はないか
当日になってトラブルが起きてもすぐに対応できるよう、マイクやスライドの不備がないか確認しておくのも重要です。また会場の照明や温度設定など細かい部分も確認し、快適に研修が行える環境の準備をしておきましょう。
録画・録音する
リハーサルの様子は必ず録画もしくは録音をして確認します。確認のポイントは「時間管理」です。研修時間をオーバーしていないか、足りな過ぎてはいないかを見て、話すスピードの調整で対応できるか、内容を追加するもしくは削るなどの変更が必要かを見極めましょう。
また録画する場合は、話しているときの表情も確認してください。表情が違うだけで、話の伝わり方も変わります。積極的に聞いてもらいたいとき、注意を促したいとき、それぞれの雰囲気に合った表情ができているでしょうか。原稿を読むのに精いっぱいで険しい表情が続いていないか、チェックしてください。
“つかみ”が大切!研修の最初に話す2つの内容
受講者の興味を惹きつけるには「つかみ」が重要です。ここでは、研修の最初に話すと効果のある2つの内容を紹介します。
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資料をダウンロードするアイスブレイクで緊張を解く
アイスブレイクとは、本題に入る前にお互いの緊張感をほぐすために行うコミュニケーション方法で、初対面の人と話す際により効果を発揮します。ポイントは難しい話ではなく誰もが共有できるような話にすること。一般的なアイスブレイクでは次のような話をします。
地元話
地元の話は共通の話題であるため、お互いの緊張をほぐすのに最適です。社内研修の場合であれば、会社のある場所周辺の話がよいでしょう。ランチでおすすめの場所、駅でよく見かける人の話など共感を得られる話をすれば、リラックスムードをつくり出せます。
天気やニュース
天気やニュースも誰もが知っている話のため、アイスブレイクに向いています。できれば、政治や経済など固めの話よりスポーツや動物など和やかな雰囲気をつくれるニュースがおすすめです。
最近の興味関心
最近の興味関心ごとを話すのもよいでしょう。ただし、あまりマニアックな話にすると逆効果になる場合もあります。「今朝、家を出たときに金木犀の香りがして秋を感じました」「昨日、コンビニで新発売されていたスイーツを食べました」など、受講者が自分はどうかなと思えるような話題がおすすめです。
自己紹介で雰囲気をつくる
講師と受講者が互いに自己紹介をするのも、受講者の興味を惹きつけるのに適しています。受講者は講師の自己紹介を聞いて人となりが見えてくると親近感を抱き、講師の話を受け入れやすくなるでしょう。また、受講者同士でも自己紹介をすると、グループワークを行う際に進めやすくなります。
ポイントは名前、所属部署、受講動機など3〜5つぐらいに話す内容を決めておくこと。なお、講師が自己紹介する際は淡々と話すのではなく、好きなドラマやスポーツなど受講者が共通項を見つけられる内容にすると好感を持ってもらいやすくなります。
受講者の心をつかむ5つのコツ
研修内容を適切に伝えるには受講者の心をつかむことが重要です。ここでは心をつかむために欠かせない5つのコツを紹介します。
見た目の印象を大事にする
講師の見た目は重要なポイントです。多くの場合、人は相手が信用できる人物かどうかを第一印象で判断します。だらしない恰好や場にそぐわない服装をしていれば、信用されず話に説得力も生まれません。
研修内容によるものの、基本的にはシンプルで落ち着いた色合いの服装にすれば好感をもたれやすくなります。高価な服装ではなく、「汚れていない」「しわがついていない」「サイズが合っている」などを意識することが重要です。また、髪や爪を切っておく、男性であれば無精ひげは剃っておくなど、服装以外でも清潔感を重視すると見た目の印象は大きく変わります。
聞き手と目を合わせる
目を合わせて話すことも、受講者の心をつかむポイントのひとつ。一般的に人は目を見て話されると自然に相手に集中するようになります。とくに伝えたい重要な点を話す際は、時間をかけてでも受講者一人ひとりの目を見ながら話すとよいでしょう。
ただし、つねに目を合わせ続けると、相手は気になって逆に話が入ってこなくなる可能性もあります。ここぞという場所では目を合わせる、それ以外は全体を見ながら話すなどのメリハリが重要です。
また、受講者の目を見れば、話の内容を理解しているかどうかも確認できます。目を向けた際に顔をそむける受講者や、まったく別の場所を見ている受講者は、話を聞いていない、集中していない可能性があるでしょう。その際はゆっくり話す、問いかけてみるなどして様子を見ながら進めてみてください。
相手の名前を言う
受講者に問いかけをする際、名前を呼ぶことも重要なポイントです。「そこの方」「一番後ろに座っているあなた」などと呼ばれるよりも、名前で呼ばれたほうが、話をちゃんと聞かなければいけないと思ってくれるようになります。
名前で呼ぶことで緊張感を持たせることも可能です。研修に少し飽きてきているなと感じた際、名前を呼んで「これまでの内容でどう思いますか」と質問すれば、改めてしっかりと話を聞かなくてはと思わせる効果も期待できます。
また、名前を呼んで質問をする以外にも、たとえば「~~さんもこうした経験があるかもしれませんね」といったように、会話の流れのなかに参加者の名前を入れて話すのもテクニックのひとつ。呼ばれた参加者は顔を向けたり相槌を打ったりして、講師に注意を払ってくれます。
受講者の答えを傾聴する
講師の質問に対する答えを聞くとき、しっかりと傾聴するのも受講者の心をつかむためポイント。自分の話だけをしてこちらの話は聞いてくれないと思われてしまえば、講師と受講者の間に信頼関係が生まれません。その結果、講師の話も聞いてもらえなくなってしまうでしょう。
受講者の話を聞くときは、相槌を打つ、相手の目を見る、どのような意見であっても全否定しないなどが重要です。腕組みをしたり資料を見たりしていると話を聞いていないと思われ、誰も発言したがらなくなってしまうので注意してください。
ジェスチャーを交える
受講者の意識を講師に向かわせるには、ジェスチャーを交えるのが効果的です。たとえば3つのポイントを伝えるときに右手を挙げて「ひとつ」「ふたつ」と指で示すと、受講者の視線と意識を講師に誘導できるため、話が伝わりやすくなります。
また、重要な話をする少し前からゆっくり壇上を動き回り、重要な部分になったら立ち止まってから話すなど、動きにメリハリをつけると、受講者の意識が講師に集中するようになるでしょう。ただし、多用するとかえって受講者の集中力を削いでしまいかねないので注意が必要です。
研修講師の話し方5つのポイント
講師の話し方により、研修内容の理解度は大きく異なります。ここでは、研修講師が話し方で気をつけるべき5つのポイントを解説します。
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資料をダウンロードする遅めに話す
受講者に研修内容をしっかりと伝えるひとつ目のポイントは、「遅めに話す」です。人は緊張するとどうしても早口になってしまいます。しかし、早口で話せば受講者は研修内容の理解が追いつきません。
話す速度の目安としては、アナウンサーが原稿を読むスピードである1分で300文字です。ストップウォッチを使い何度も練習して、適切な速さで話せるよう心がけましょう。
区切りや間、メリハリを意識して話す
話の区切りや間、メリハリを意識して話すのも重要です。ゆっくり話せたとしてもつねに一定の速度、トーンで話すと、受講者はどこが重要な内容なのかがわかりにくくなります。また、理解できないまま進んでいってしまうため、受講者の状況を見ながら間を取って話すようにしましょう。
とくに重要な内容を話すときは、一旦、間を取って受講者が話を聞いているか全体を見回してから話し始めます。それにより受講者も講師の話に意識を集中するようになるため、内容の理解度向上につながるでしょう。
テーマに合わせた声のトーンで話す
話す速度や声の大きさ以外に、声のトーンも受講者に伝わる話し方の重要なポイント。同じ速度で話したとしても、内容によってトーンを変えると、受講者にここで内容が変わるのだと伝わります。
コツは、下記のとおりです。
- 明るめのトーン:知識やスキルの修得によるメリットを伝える、明るい印象を与えたいなど
- 落ち着いたトーン:デメリットや注意点などを伝えるとき
トーンだけでもどのような話をしているかが明確になり、受講者は内容を理解しやすくなります。
聞き取りやすい言葉で話す
聞き取りやすい言葉とは、単純に滑舌よく話す、口を大きく開けてはっきりと話すなどと考えるかもしれません。もちろんそれらも重要ではあるものの、ここでの聞き取りやすい言葉とは次の3点です。
聞き間違いしやすい単語は使わない
たとえば、数字の「1(いち)」と「7(しち)」は「ひと」と「なな」にすれば聞き間違いはしません。またスライドに記載して文字として伝えるのも聞き間違いを防ぐ手段のひとつです。
熟語はかんたんな言い回しに
たとえば「俯瞰」は「全体を見回す」、「五月雨式」は「似たようなことを何度も続けて」など、伝わりにくい熟語は誰もがわかりやすい言い回しに換えます。
正しいイントネーションで話す
「橋」と「箸」のように同音異義語はイントネーションを間違えると正確に伝わりません。イントネーションに難がある場合は、何度も口に出して話して正しいイントネーションを身につけましょう。
余計な言葉を入れずに話す
話の途中に「あのー」や「えー」がひんぱんに入るとそこが気になってしまい肝心の内容が入ってきません。これも何度も録音して練習を重ね、克服するのが重要です。何度練習しても直らない場合は、「あのー」や「えー」を言ってしまう箇所の言い回しを換える、思い切ってなくしてしまうなども検討しましょう。また、焦ってしまうと余計な言葉が出てしまいがちです。空白を怖がらず落ち着いて話すようにしましょう。
声を聞き取りやすくするための3つのコツ
こもった声になる、大きな声が出ない、滑舌が悪いなどを直すには、次に挙げる3つのコツを意識することがポイントです。
背筋を伸ばしてよい姿勢をとる
猫背の状態で話すと声が遠くまで届きません。また、講師として自信なさげに見えてしまうデメリットもあるため、必ず背筋を伸ばしてよい姿勢で話すことが重要です。メモを見ながら話すときもうつむいたままにならないよう、注意しましょう。
腹式呼吸をする
腹式呼吸をマスターすれば、無理に大きな声を出さなくても声量がアップし、通る声が出せるようになります。また、腹式呼吸を練習すると横隔膜周辺のインナーマッスルが鍛えられ、猫背の改善につながるメリットもあるため、ぜひマスターしましょう。
お腹を押さえ鼻から息を吸い込む際にお腹をふくらませ、口からゆっくりと時間をかけて息を吐き出す際にお腹をへこませる。これを繰り返すことで腹式呼吸をマスターできます。
普段から滑舌を意識する
普段から滑舌を意識して話すのも、声を聞き取りやすくするために重要です。ポイントは、下記のようになります。
- 適度に口を開けて話すようにする
- できるだけ人と会話をする
- その際、滑舌を意識して話すようにする
口の開け方が小さいと声がこもり、滑舌も悪くなるので注意してください。ちょっとした心がけで、声の出方は大きく変わります。
まとめ:「話し方」はビジネススキルの基本。セミナーやプレゼンにも役立つ
一度、聞き取りやすい話し方をマスターすれば、講師を行うときはもちろん、商談や接客、プレゼンなどビジネスのさまざまな場面で役に立つスキルとなります。受講者にとっても理解度が向上し、その後のビジネスに生かせるようになるため、双方にとってメリットが大きいでしょう。
人前に立つと緊張してしまう、滑舌が悪いのでうまく伝わらない――。今回ご紹介した話し方のコツやポイントを参考にトレーニングを重ねれば、より正しい話し方が身につき、そうした心配や不安も解消できるはずです。個人でのトレーニングは時間と手間がかかる、難しい、と感じる人は、話し方の研修を受講してみるとよいかもしれません。
また研修の実施担当者であれば、自社で行う研修のほかに、外部の研修サービスやeラーニングの活用を検討してみるのもおすすめです。
自社教材の配信も!eラーニング×オンライン研修を組み合わせた学習支援サービス「manebi eラーニング」
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また「manebi eラーニング」は、アップロード機能により、自社教材の配信も行えるため、たとえば話し方を学ぶための自社だけの独自プログラムも作成できます。「manebi eラーニング」の導入により、自社に必要な社員研修、eラーニングを実施して、人材育成&組織全体の成果につなげましょう。ご興味のある企業担当者様はぜひ資料をダウンロードしてみてください。
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