内定辞退を防止し、入社意欲を高める内定者研修。研修時に限らず、内定者は疑問や懸念点を解消するためにあらゆる場面でさまざまな質問をしてきます。
しかし、質問に対する準備が難しく、内定者からの唐突な質問に言葉を詰まらせてしまった経験のある担当者も多いのではないでしょうか。回答内容や回答者の様子によっては内定者の満足度が下がり、かえって不安を抱かせてしまうかもしれません。
本記事では、内定者からよく寄せられる質問例と回答のポイントを解説します。内定者の気持ちをつかみ、入社意欲を高めたいと考えている担当者の方はぜひ参考にしてください。
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資料をダウンロードする内定者研修で質問時間を設ける意味
内定者研修中の質問時間は、内定者の不安を払しょくしたり、内定辞退を防止したりするために重要です。近年の就職活動は早期化傾向にあり、大学3年生のうちに内定をもらった方の場合、入社まで約1年も期間が空いてしまいます。
期間が空いてしまうと、「ほかの会社を受け直さなくていいのかな」「内定者や先輩社員の雰囲気が自分に合っていないかも」など、不安に感じることが多くなり、迷いが生じてしまうもの。
そこで、内定者の気持ちをつなぎとめるため、会社がとるべき対策のひとつに「内定者研修の質問準備」があるのです。ここでは、内定者研修で質問時間を設ける目的を4つにわけて説明します。今一度、内定者の気持ちを想像しながら、実施目的を確認してみましょう。
内定者の不安を払しょくする
株式会社ラーニングエージェンシー(旧トーマツイノベーション)が2023年度入社予定の内定者の623人に対して行った調査によると8割以上の内定者が不安・心配な気持ちを抱えているそうです。
具体的には「自分の能力で仕事についていけるか」「期待される成果を出せるか」「上司とうまくやっていけるか」といった仕事に対する不安と、生活リズムの変化や社会人としての考え方に適応できるかなどの内面的な不安を感じているとわかりました。
ほかにも、仕事内容や雰囲気・風土に馴染めるかといった環境に対する不安も抱いているようです。内定者はこのような不安を払しょくするために、さまざまな形で質問してくることを念頭に置き、解消できるような回答を心がける必要があります。
不安・懸念点をなくし内定辞退を防止する
内定者の不安・懸念点をなくすことは、内定辞退の防止に直結します。もし内定者にほかの選択肢があった場合、より不安や懸念が少ないほうを選びたいと思う人もいるでしょう。
また内定者の不安や懸念点を親身に聞き、払しょくするために真摯に対応する姿に安心感を覚える場合もあります。そのような姿勢は「入社後も仕事の悩みや相談を聞いてくれそう」「一緒に問題を解決しようと動いてくれそう」といった印象を与えるためです。
変に甘やかしたりへりくだったりする必要はありません。しかし、内定者と目線を合わせて対話を重ねること、親近感を感じてもらうことは、不安・懸念点の払しょくと内定辞退の防止に効果的であると理解しておきましょう。
社風や企業理解を深める
内定者の質疑応答をとおして、自社の社風をより濃く伝えたり企業理解を深めたりすることも目的のひとつです。就職活動中にふれる会社の情報は限られていますし、会社説明会や面接で一度伝えただけでは、なかなか社風は伝わらないものです。
実際にどのような人が働いているのか、配属先には何人の社員がいて、それぞれがどんな業務を抱えているのか。お昼休みや休憩のとり方、名前の呼びかた(〇〇部長、または〇〇さんと呼ぶのか)、有給は何日前に申請して取得するのかなど、細かい質問をあげればキリがないでしょう。
少しでも社風や日常シーンのイメージがつくように、また内定者が質問しやすいようにQ&Aを洗い出し、事前準備しておくことが大切です。
先輩社員とのコミュニケーションを促す
質疑応答をとおして、先輩社員とのコミュニケーションを促すのも狙いのひとつ。質疑応答に配属予定部署の先輩社員がいれば、入社前にお互いを知る機会にもなります。内定者にとって現場の生の声が聞ける機会は貴重です。また迎え入れてくれる人の顔や人柄を知っていれば入社後のイメージも湧きやすく、ひとつの安心材料になるでしょう。
内定者の性格によるものの、管理職や経営陣よりは年齢の近い若手社員のほうが気軽に質問しやすい人が多いです。実際に若手であるほど内定者に近い目線で話せる場合が多く、比較的心を開きやすい相手ともいえるでしょう。
志望動機や意欲の再確認をさせる
質疑応答をとおして内定者自身の疑問や不安を整理しつつ、改めて志望動機や意欲を再確認してもらうのも重要です。目先の目的は「内定辞退を防ぎ入社してもらうこと」であるものの、それはこれから実際に仕事をしていくうえで数あるハードルのひとつに過ぎないと考えられます。
内定者は選考中と比べて入社直後の変化に対する興味が強くなっており、直近の不安や懸念点に目がいくあまり、当初の志望動機や意欲が影を潜めてしまう傾向にあります。
不安や懸念点を払しょくして内定辞退を防ぐだけではなく初心を思い出してもらいながら質疑応答で内定者のイメージと現実のギャップを埋め、入社意欲や仕事に対するモチベーションを高めることが大切です。
内定者からの質問・回答のポイント一覧
学生からの質問は質疑応答の時間に限らず、内定者研修・懇談会・懇親会などあらゆる場面で問いかけてくる可能性があります。
質問に対して人事・研修担当者が適切に回答できないと、内定者の満足度を下げてしまったり、かえって不安を抱かせてしまったりといった事態に発展しかねません。どんな質問にも答えられるよう事前に準備しておきましょう。
内定者からよく聞かれる質問集は以下のとおりです。
質問内容 | 質問意図・補足 |
1.入社までに準備することはありますか? | 経験・資格・スキルなど |
2.1日の仕事の流れを教えてください | 出社・退社・タイムスケジュールなど |
3.仕事への取り組み方を教えてください | 気をつけている、こだわっていることなど |
4.就活時の経験や当時の志望動機を教えてください | 回答者が就活生だった頃のエピソード |
5.仕事で大変なことはなんですか? | 事柄と何を大変と感じるか |
6.会社・部署の雰囲気を教えてください | 社風・カルチャー・人間関係など |
7.社内で活躍している女性について教えてください | 女性のキャリアパス・管理職登用事例など |
8.副業・兼業している社員はいますか? | 制度・ルール・事例など |
9.働き方を詳しく教えてください | 残業・有給・リモートの有無など |
以下で実際の質問例と回答のポイントを解説します。
入社までに準備することはありますか
新卒は内定から入社までにある程度期間が空くことから、入社までの時間を有効活用したいと考える人が少なくありません。また、「入社後の苦労を少しでも減らしたい」「入社後に同期と差をつけるために、早くから準備を進めておきたい」と考え、質問する人もいます。
質問例は以下を参照してみてください。
- 入社までに学んでおくとよいことは何ですか?
- 入社までに取得しておくとよい資格はありますか?
- 入社までに経験しておくとよいことはありますか?
- 入社までに準備しておくとよい(物理的な)物はありますか?
- 入社までに行っておくとよい場所、見ておいたほうがよいものなどはありますか?
- 仕事に役立つおすすめの書籍はありますか?
回答のポイント
質問内容が具体的であれば、ある程度は個人の主観で答えても問題ないでしょう。ただし、回答がスムーズになるよう、次の項目を意識して準備しておくと安心です。
- どのようなキーワード・テーマで情報収集すべきか
- 仕事に必須な資格・必須ではないが役立つ資格
- 見ておくとよいサイト・ニュースアプリ
- 仕事に役立つツール・アイテム
- 訪問可能な自社の店舗・施設
- 読んでおくと役立つ書籍
また、学生のときでなければ経験できない部活動やアルバイトに精を出してほしいという考え方もあるでしょう。「なぜ入社前にそれをやっておくとよいか」「実務にどう役立つ可能性があるか」といった理由も合わせてまとめておくことが大切です。
1日の仕事の流れを教えてください
仕事の内容やスケジュール感を掘り下げて知りたい場合に問われる定番の質問です。質問の意図は、入社後のイメージをより具体的にしたい、イメージとのギャップがあれば埋めておきたい、プライベートとのバランスを知りたいなどが挙げられます。
実際の場面では以下のように質問されることが多いでしょう。
- ◯◯課(または職種)の1日の流れを教えてください
- 出社から退社までの流れを簡単に教えてください
- 1日の平均的なスケジュールを教えてください
- 1日の業務内容や流れを教えてください
- 繁忙期の1日の流れを教えてください
回答のポイント
内定者は「入社後の1日を具体的にイメージしたい」と考えているため、面接時に伝えた内容よりも詳しい情報を盛り込みましょう。もちろん、話して支障のない範囲で構いません。
単に表面上の流れを説明するだけでなく、具体的な作業量や作業方法、取引先の特徴、かかわるメンバーの特徴にくわえ、休憩場所の特徴やおすすめのメニューなどを含めるのもよいでしょう。
質疑応答の本来の目的を果たすためにも「なんだか大変そう」という印象を与えるよりも「自分でもなんとかできそう」「思っていたより面白そう」といった印象につながる情報を含むようにしましょう。
仕事への取り組み方を教えてください
具体的な仕事の方法というよりも、先輩社員の仕事に対する姿勢や考え方について問われている質問です。これから仕事をするにあたっての心構え、仕事との向き合い方、困難の乗り越え方などを確認するための質問ととらえるとよいでしょう。
実際の場面では以下のように質問されることが多いでしょう。
- 仕事において気をつけていることがあったら教えてください
- 仕事に対するこだわりがあったら教えてください
- 仕事をするうえで大切にしていることがあったら教えてください
- 失敗やミスがあった場合の乗り越え方を教えてください
- 直近の目標や中長期的な目標があれば教えてください
- 日々のモチベーションの保ち方、上げ方があれば教えてください
回答のポイント
人によって回答が変わる質問のため、回答者になる可能性がある人は各々考えや回答方法を複数まとめておく必要があります。さまざまな考え方や視点があるため、事前に複数の社員にヒアリングやアンケートを行い、回答集を用意しておく方法もよいでしょう。
多様性を尊重する企業風土であれば「いろいろな考え方の人が共存している」という具体的な根拠として、ポジティブな影響を与えられる可能性もあります。
可能であれば、会社のビジョンや行動指針とリンクさせられればなおよいでしょう。企業研究をしっかりしている内定者ほど「会社の考え方がしっかり根付いた組織だな」「綺麗事ではなくしっかり実行しているんだな」といった好印象につながる可能性があります。
就活時の経験や当時の志望動機を教えてください
先輩社員(回答者)が就活生だった頃のエピソードに関する質問です。内定者から懇親会や懇談会のようなカジュアルな場で質問されるほか、内定前の新卒応募者からも質問される可能性があります。これらの質問は、先輩社員との共通点・共感ポイントを探しコミュニケーションのきっかけを作ったり、面接の場面で生かすためと考えられるでしょう。
実際の場面では以下のように質問されることが多いでしょう。
- 就活生のときに大変だと感じたことは何ですか?
- 就活生のときは何を軸に就職活動をされていましたか?
- この会社を受けようと思った志望動機は何でしたか?
- この会社への入社を決意した決め手は何でしたか?
- 同業他社ではなくこの会社を選んだ理由は何ですか?
- 会社選び・仕事選びで重視していたことは何でしたか?
回答のポイント
核心に迫る回答を求められるケースが多く、しっかりと回答準備をしておきたい質問のひとつです。同時に、回答内容によって会社の印象や仕事に対する意欲に影響しやすいため、注意が必要でしょう。
各々が想定質問に対する回答を準備しておくほか、事前に複数名の先輩社員からヒアリングしてエピソードを集めてまとめておく方法、実際に先輩社員に回答者として同席してもらう方法などもオススメです。
就活のトレンドや方法などは時代によって異なるため、回答者は内定者と年齢の近い若手社員が適任でしょう。価値観や目線が近いことでお互いに共感しやすく、先輩社員との関係構築にもつながります。
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資料をダウンロードする仕事で大変なことは何ですか
「仕事は決して楽なものではない」とは思いつつも、実際はどのような点に大変さを感じているのか、こちらも抽象的なイメージを具体化するために問われる質問です。
質問の意図として、入社後に遭遇するであろう大変なことを事前に把握しておきたい、自分でも乗り越えられそうなものか確認したい、向き合い方や乗り越え方を参考にしたいといったものが考えられます。
実際の場面では以下のように質問されることが多いでしょう。
- 最近取り組んだ仕事で1番大変だと感じたことは何ですか?
- 仕事をするうえで何に苦労を感じますか?
- どのようなときに仕事が大変だと感じますか?
- 新入社員だった頃、とくに大変だと感じたことは何でしたか?
- 仕事が大変だと感じたときの乗り越え方があれば教えてください
回答のポイント
回答するうえで大切なことは「ポジティブな要素を含むこと」。仕事をするうえでの心構えを作る意味で「こんなところが難しい・大変」という事実は伝えておくべきといえます。ただし、大変なことばかり伝えてしまうとネガティブな印象だけが残ってしまう懸念もあるので注意が必要です。
ネガティブな側面を伝える際はとくに「大変だけどやりがいがある」「今にして思えば成長するためには必要な失敗だった」「あの失敗をヒントに新しいやり方を見つけた」など、前向きでポジティブな側面も合わせて伝えることが大切です。
「大変なこともあるけど得るものもある」という情報が内定者の不安を払しょくし、背中を押すことにもつながります。
会社・部署の雰囲気を教えてください
内定者に限らず、自分が働く環境や雰囲気が気になるのはごく自然なことであり、とくに関心の高いジャンルでしょう。質問の意図として、自分が働く環境の実態を知りたい、うまく組織に馴染んで自分らしく働ける環境か、自分と合いそうかなどを網羅的に確認したいなどが挙げられます。
実際の場面では以下のように質問されることが多いでしょう。
- 会社や部署は風とおしがよい環境だと感じますか?
- 社員同士の仲はよいと思いますか?具体的なエピソードがあれば教えてください
- 休日も社員同士で出かけることはありますか?
- 上司とは普段どのような話をしていますか?
- 休み時間の過ごし方や雰囲気を教えてください
- 男女比率や年齢構成比を教えてください
回答のポイント
会社・部署の雰囲気に関する質問は、結論と合わせて具体的なエピソードを交えて回答するのが効果的でしょう。「雰囲気」は抽象的な概念であり感じ方も人それぞれなため、単に「仲がよい」「風とおしがよい」というだけではイメージが湧きにくく、質問の意図に応え切れていない可能性があるためです。
なぜ・どのようなときに仲がよいと感じるのか、休み時間はどのように過ごしているのか、社員同士で普段どのような会話をしているのかなど、具体的なエピソードがあれば実態を想像しやすく、納得感も得られやすいでしょう。
質問例にもあるとおり、男女比や年齢構成比などの具体的な数字を質問される場合もあるため、ある程度正確に答えられるよう準備しておくことも必要です。
社内で活躍している女性について教えてください
女性の管理職登用実績やキャリアパスに興味がある内定者から出やすい質問です。社会的には性差別が減少しているものの、実際はまだ男性優位の風潮が根強く残る企業も多く存在しています。このため、性別に関係なく昇進できる可能性はあるか、一人のビジネスパーソンとしてキャリアを構築していけるかを気にしている人は少なくありません。
実際の場面では以下のように質問されることが多いでしょう。
- 女性管理職の割合を教えてください
- 女性社員の管理職登用実績があれば教えてください
- 女性社員のキャリアパスについてどのようにお考えですか?
- 出産を経て育児をしながら活躍している女性社員はどのくらいいますか?
- 社内で活躍している女性がいたら具体的なエピソードを教えてください
回答のポイント
女性活躍に関する質問の回答は、具体的な取り組みや数字を交えて回答すること、事実を包み隠さず伝えることが重要です。明言を避けたり回答と入社後の実態にギャップがあったりすると、その人からの信用を損なってしまうだけでなく、SNSを通じてほかの社員や第三者にネガティブな評価を拡散されてしまうかもしれません。
事前に女性活躍に関する取り組み内容・今後の計画・数値目標・実態などに関するデータをまとめておくとスムーズに回答できるうえ、回答者による認識のズレも防止できます。
2022年4月から「女性活躍推進法」が施行されているため、具体的な取り組みを行っていない場合はこれを機に方針を検討すべきでしょう。
副業・兼業している社員はいますか
政府の働き方改革や副業ブームの影響を受け、多様な働き方や副業・兼業に対する関心が高まっており、副業に対する考え方やルールから企業の柔軟性や先見性などを判断する学生も存在します。
一方で、まだ一般通念として根づいてはいないため、興味関心がありつつも本業へのやる気を疑われるのではないかと懸念して、質問を避けている場合も多いようです。
実際の場面では以下のように質問される可能性があります。
- 実際に副業・兼業をしている社員の割合を教えてください
- 募集要項に「副業可」とありました。詳しく聞かせていただけますか?
- 副業に関するルールがあれば教えてください
- 実務に役立つスキルを身につける目的で副業をすることは可能ですか?
- 過去に副業が問題となったケースはありますか?
回答のポイント
回答のポイントは自社が副業を許可しているか、禁止しているかによって大きく異なり、副業に対する考え方や価値観も企業によってさまざまでしょう。
明確なルールが定められている場合はそれを把握しておくこと、不明確な場合は回答者によって回答がブレないよう、全員が自社の考え方や価値観に対して共通の認識を持っておくことが重要です。
とくに副業解禁がトレンドの昨今、副業を禁止している場合は論理的かつ納得感のある理由を伝える必要があります。
明確な理由なく単に「禁止されている」「ルールだから」という事実だけを伝えてしまうと、「組織の体質が古い」「時代遅れ」といったネガティブな印象を与えかねないため、注意が必要です。
働き方(残業・有給・リモート有無など)を詳しく教えてください
自社の制度や募集要項にもよりますが、残業の有無や量・有給の取得状況などの一般的な質問のほか、多様な働き方に対する質問が増加傾向にあります。働き方の自由度や拘束時間は、日々の生活やプライベートに直接影響する事項のため、とくに関心が強いジャンルです。一方で、質問しづらい分野とされており、興味はあっても質問を控えている人も少なくありません。
実際の場面では以下のように質問されます。
- 普段の残業時間はどのくらいですか?
- 繁忙期の残業時間はどのくらいですか?
- 有給の取得率を教えてください
- リモート勤務の制度はありますか?
- どのような職種の人がリモート勤務をしていますか?
- リモート勤務と出社の割合はどのくらいですか?
回答のポイント
働き方に関する質問の回答は、感覚値ではなく具体的な数字を交えて回答しましょう。主観的・抽象的な回答は齟齬を生みやすく、質問者の納得感を得にくい可能性もあるためです。とはいえ、制度として明確に定められている場合が多く、勤怠をシステムで管理している場合はデータも取りやすいため、準備さえしっかりしておけば回答には困らない質問といえます。
全体・関係部署の平均残業時間・平均有給取得率などをまとめておき、リモート勤務などの制度がある場合はリモート率・出社比率など、数字で表せる項目は算出しておきましょう。合わせて、各質問に関連する制度についても今一度確認しておき、正確に答えられるように準備しておくことが大切です。
質問はしないけど内定者が聞きたいテーマとは
前章では内定者から実際に受けるであろう想定質問と回答ポイントを解説しました。しかし一方で、「本当は非常に気になるけど質問しにくい」という理由で表に出てこないテーマも複数存在します。テーマの特徴は、非常に現実的かつ内定者の関心が非常に高く、場合によっては内定の承諾・辞退にかかわるほど重要視されている点です。
本当の意味で内定者の不安や懸念点を払しょくし、自社への入社を決心してもらうためには、これらのテーマを把握したうえで何かしらの形で回答や情報提供をするのが理想です。この章では、内定者が本当は聞きたいと思っている代表的な9つのテーマについて解説するので、ぜひ参考にしてください。
給与・賞与
給与・賞与は自身の生活やプライベートの充実度などに直接影響するため、内定者が強く気にしているテーマです。「ぶっちゃけ給与はいくら?」「賞与は1年目でいくらもらえるんだろう?」と気になっている学生は多いでしょう。しかし「入社前にお金の話ばかりしてしまうと仕事に対する意欲を疑われるのでは」とも考えており、質問は控えているのが実情です。
たとえば、伝えて支障のない範囲で平均年収を開示したり、最も活躍した社員のインセンティブを「数十万円」といった形で知らせたりする方法が考えられます。正確な金額でなくとも、概算を知れるだけでも内定者にとっては有益な情報になるはずです。
ただし、無用な混乱を避ける意味でも、既存社員への配慮が必要な点には注意しましょう。
人事評価・異動・配属基準
人事評価・異動・配属基準も関心の高いテーマのひとつ。頑張りを正当に評価してくれるかどうか、自分に合った仕事をさせてもらえるのか、仮に成果が出なかった場合はどのように扱われるのかという点を心配するのは至って自然なことでしょう。
異動の許容範囲は人によって差があるため、事前に確認しておきたいポイントです。しかし、成果どころか入社もしていない状態で自分本意な質問をしてしまうと、回答者の心象を悪くしてしまうのではないかと考え、聞きづらいテーマとなっています。
このテーマは先輩社員の主観よりも正確性・信憑性が重要なため内定者オリエンテーションなどのオフィシャルな場を設けて、制度説明と合わせて可能な範囲で実例を紹介できるとよいでしょう。
昇給・昇格
自分の評価や給与に直結する昇給・昇格のリアルな事情も内定者が知りたがっているテーマです。実際にその制度がどう運用されているのか、頑張って成果を出せば本当に評価してもらえるのかなど、実態を確認したい人は少なくありません。
とはいえ、給与や人事評価と同様に、まだ「入社もしていない自分が先のことを確認するのは不適切ではないか」と考え、質問できない人もいます。このテーマも人事評価と同様に正確性・信憑性が重要なためオフィシャルな場で説明するとともに、公開できる範囲で実例を紹介してリアリティを担保するとよいでしょう。
福利厚生
福利厚生は日々の会社生活の過ごしやすさに関係し、金銭が直接絡む手当は、誰しもが重要視するテーマといえます。そのため、福利厚生の充実度や制度の適用条件などの細かな点が気になる内定者は多いでしょう。福利厚生については、給与や人事評価と異なり個人差が無いぶん公開しやすい情報であり、オフィシャルな場で詳しく説明すれば事足ります。
とはいえ、福利厚生は情報量が多く、詳しく説明するには相応の時間が必要です。内定者研修で広く浅く触れるのではなく別日で給与・人事評価・福利厚生などを解説する専用のプログラムを設けるのもひとつの方法でしょう。
とくに金銭が絡む情報は、しっかり説明する機会を設けることで内定者に好印象を与えられる可能性が高く、内定辞退の防止にも効果的であると考えられます。
会社の業績・将来性
会社の今年の売上や利益、今後の展望や業績予測を気にしている内定者も多く存在します。自分が身を預けて貢献する対象として、しっかりした利益と将来性がある会社に身を置きたいと考えるのは当然でしょう。
しかし、内定者の立場で実際に働いている人や経営陣に業績や将来性を問うのは身分不相応であり、聞きたくても聞けないというのが実情です。給与・人事評価などと同様「聞くのは失礼にあたるかもしれない」と思うようなセンシティブな内容にこそ強い関心を持っており、同時に不安や懸念も抱いています。可能な限り、企業側から歩み寄って情報提供するよう心がけるとよいでしょう。
髪型・服装・身だしなみ
新卒の内定者のなかには、ファッションや身だしなみにこだわりたい人もいます。会社説明会や面接をとおして社員と接するなか「茶髪の人はいるけどブリーチはいいのかな」「イヤリングをつけている人はいるけど、デザインの制限はあるのかな」と気になっても、意外と聞けるタイミングがない質問と考えられます。
既存の規則で基準を設けている場合、画像と合わせて情報提供できると丁寧な印象を与えられるでしょう。しかし明確な基準がなく「一般常識の範囲で」としている場合はかえって判断に困ってしまいます。この機会に基準を設定するのもよいでしょう。
内定者の評価・第一印象
内定者のなかには、選考の評価結果が気になっている人も一定数存在します。自分が第三者からどのように評価されているのかは、内定者でなくとも気になるもの。
「第一印象はどうだったか」「自分はなぜ選考にとおり、どこを評価してくれているのか」「逆に改善すべき点はないか」あえて聞くのも野暮な気がして質問できない人も多いでしょう。
対策として、何気ない会話でのフィードバックをする方法をオススメします。大勢の前で自分の評価を発表されるのは気まずいでしょう。
しかし懇親会・懇談会などで雑談を交えながら「◯◯さんの◯◯なところは長所だよね」「◯◯さんは◯◯が優れているから期待しているよ」と声がけしてあげれば間接的に評価が伝わり、本人のモチベーションや入社意欲の向上につながるでしょう。
昼休み・休憩の取り方
昼休みの様子や休憩の取り方が気になっている内定者もいます。毎日のことなので、リラックスできる環境はあるか、ちゃんと疲れが取れるかなどを心配しているケースもあるでしょう。些細なことゆえに「こんなこと聞いたら笑われてしまうかも」と考えて質問しづらく、内に秘めてしまいがちともいえます。
対策として考えられるのは「画像つきで一日の流れを説明する」「オフィスを案内するオリエンテーションを実施して、実際の休憩スペースや休憩の様子を紹介する」などです。既存社員にとっては当たり前でも、内定者にとってはすべてが未知のこと。内定者の目線に立ったフォローを心がけたほうがよいでしょう。
業務ツール・社内ツール
業務に使用しているツールや、社内ツール・システムなどを知りたい内定者もいます。「使ったことがないツールがあれば予習しておきたい」「普段から使うツールならすぐに馴染めそう」など、業務に対するイメージを具体化したいためです。普通に質問してくる内定者もいますが、こちらも些細なことと考えて質問に至らない場合があります。
この場合仕事・業務内容を説明する際に使っているツールの説明を織り交ぜるとよいでしょう。MicrosoftOfficeか、Macのアプリが中心なのか、コミュニケーションツールはslackなのか、ChatWorkなのか、具体的に伝えていきます。合わせて、社内コミュニケーションは対面文化か、チャット文化なのかも知らせておくと、一歩進んだ会社理解につながるでしょう。
想定質問を確認して回答準備を進めよう
内定者の疑問や懸念点を払しょくし、内定辞退を防ぎ入社意欲を高めるために行う内定者研修・質疑応答。できるだけ内定者の目線に立って企業側から歩み寄り、彼らが知りたいと思っていることを知らせてあげるとよいでしょう。
内定者研修の実施手法や内定者への案内項目などを知りたい場合は「内定者研修の持ち物は?会社から内定者への案内方法を紹介」を参考にしてください。
また内定者の対応をする担当者や回答者に、事前のオリエンテーションや研修を実施しておくと安心です。
「manebi eラーニング」では、目的に沿った研修を設計企画からサポートしています。オンライン研修のほか、5,000を超えるレッスンが月額1万9,800円から見放題のeラーニングシステムも提供しているのが特徴です。
新入社員研修や既存社員に向けた研修にも対応していますので、「サービス資料・教材一覧ダウンロード」ページよりぜひ詳細を御覧ください。
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