「新入社員研修のOJTって具体的に何をするのだろうか」「OJTの導入を検討しているけど、どのような手順で進めればいいのだろうか」このように、新入社員へのOJT研修について悩んでいる企業の人事担当者の方も多いでしょう。
ここでは、OJT研修の意味や目的から、メリットや課題点、実施するまでの手順、効果を高めるためのポイントを詳しく解説します。研修をとおして即戦力人材の教育や社員の定着率を向上させるための参考にしてください。
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資料をダウンロードする新入社員研修に必要なOJTとは
そもそもOJT研修とは、どのような意味なのでしょうか。OJT研修のメリットや流れを知る前に、意味や目的、Off-JT研修との違いを理解しておきましょう。
OJTとは
OJTとは、On – the -Job Trainingの略語で、業務を実践しながら必要な知識を身につけていく研修手法のこと。実際の仕事をとおして知識とスキルを身につけていくので、即戦力化やトレーナーとのコミュニケーションを深められ、集合型の研修と比べて実践的な知識やスキルが身につきます。しかし、OJTだからこその課題もあるため、特徴をしっかりとらえたうえで、導入の流れを確認しておいたほうがよいでしょう。
OJTの目的
社員研修が終わったら、研修で学んだことをどう生かすかについて目標を設定します。ポイントは、目標達成のスパンを定めること。研修内容や目標に応じたスパンを社員に決めさせ、適時状況を振り返り軌道修正するよう促しましょう。
Off-JTとの違い
Off-JTとは、Off-the-Job Trainingの略語で、現場での実践ではなく、座学のこと。OJTは現場を知るといった面で非常に重要な研修方法です。一方、Off-JT研修では実践を行わないものの、座学をとおしてOJTだけでは身につけられない知識を学べます。そのため、新人教育では双方を組み合わせて使うケースが多いでしょう。座学がメインのOff-JTを通じて基本知識を習得したあと、OJTを行うと効率的に研修を進められます。
OJTの実施で得られるメリット
OJTの実施で得られるメリットには、以下の4つがあります。
- 新入社員の即戦力化につながる
- コミュニケーションを深められる
- トレーナーのスキルアップも期待できる
- 個人の特性に合った指導ができる
新入社員の即戦力化につながる
OJT研修の実施により、新入社員の早期戦力化につながります。新入社員は入社したばかりで何をしてよいのかわからず、指示待ちになってしまうケースも少なくありません。新入社員自身もどのように行動していいのかわからずモヤモヤしてしまうでしょう。また上司が一から教えなければいけない場合、自身の仕事を止めて教えなければなりません。OJT研修では実践的な内容が多く、新入社員や若手社員が受け身ではなく、知識を身につけるための主体的な行動が期待できます。
コミュニケーションを深められる
OJT研修は座学のように1対多数ではなく、1対1や1対2などの形になります。そのためトレーナーである先輩社員と新入社員の間で、密なコミュニケーションを深められるのです。新入社員からの疑問点や不安に関して先輩社員が細かく対応できるため、新入社員へ安心感を与えられます。
また、コミュニケーションが深まるため、業務上の連携を取りやすくなったり、新入社員の表情や言葉に対して変化に気づきやすくなったりするでしょう。
トレーナーのスキルアップも期待できる
OJT研修では、トレーナーは自身の業務や知識を振り返りながら新入社員に伝えます。よってなるべくわかりやすいように伝える工夫をしたり、自身の知識が間違っていないか復習したりする必要があるのです。それにより普段の業務では得られない気づきを発見するといった、トレーナーである先輩社員のスキルアップも期待できます。
個人の特性に合った指導ができる
個人の特性に合った指導ができるのはOJT研修のメリットのひとつ。OJT研修では、1対1のような少人数での指導ができるため、新入社員ごとに時間を設けられます。一方、講師1人で多くの新入社員へ教える座学の場合、それぞれの参加者の特性に合わせて伝え方を変えるのは困難でしょう。
OJTでは、相手の得意・不得意を理解して、状況に合わせて研修を進められるため、業務内容や知識の定着を高められます。個々の社員に合わせて伝え方を変えながら教育できるため、クオリティの高い教育内容を提供しやすいでしょう。
新人研修のOJT実施に関する課題点
新人研修のOJT実施に関する課題点には、以下の3つがあります。
- 指導者のスキルによって定着に差が出る
- OJTの実施だけでは実践的なスキルだけに偏る
- トレーナー社員のリソースを教育に割く必要がある
指導者のスキルによって定着に差が出る
OJT研修はトレーナー自身のスキル、また教え方や普段の接し方などによって教育に差が生まれやすいです。一度に大勢に対して行う研修やeラーニングでは、研修を専門に行う講師や指導に慣れている社員が進めるため、質が高い教育が期待できます。OJT研修に比べると、指導者によって新入社員のスキル定着に差が出ることは少ないでしょう。
対策として挙げられるのはOJTの実施前にOJTトレーナーを対象とした研修を行い、トレーナーのスキルや教え方などを統一することです。
OJTの実施だけでは実践的なスキルだけに偏る
OJTは、実践的なスキルを身につけることに向いており、知識の伝達には向いていないという特徴があります。たとえば、会社の成り立ちや現在の事業を取り入れた背景などの知識を身につけてもらうには、OJTよりも座学のほうが適していると考えられます。また、全体像の理解や学んだことを応用させたり、社内の構造について理解させたりすることにもOJTは向いていないでしょう。
OJTを実施する際は、実践的な知識のみに偏らないようバランスを取って研修プログラムを構築する必要があります。会社全般のことから論理的な考え方、リーダシップ、創造性などを座学やOff-JTをとおして学ぶ機会を作ることが大切です。
トレーナー社員のリソースを教育に割く必要がある
OJTを実施するには、現場社員がトレーナーとして時間を確保し教育する必要があります。教育した社員が全員、一人前の社員として働けるのが理想です。しかし早期退職するケースも少なくありません。その場合、トレーナー社員のリソースをとったにもかかわらず新入社員が定着しないといった事態に陥ってしまいます。
また会社や部署によっては、トレーナーになった社員の業務が増えるため、残業や休日出勤にもつながるでしょう。トレーナーのリソースを無駄にしないためにも、新入社員へのフォローが必要です。
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資料をダウンロードするOJTを実施するまでの方法・手順
OJTを実施する手順は、以下のとおりです。
- OJTの目標・計画を設定する
- 教育する社員の特性・現状を把握する
- トレーナーを選出する
- 計画を立案する
- OJTを実施する
OJTの目標・計画を設定する
まずは、OJTの目標と計画を立てます。目標設定を行う際は、経営層や人事部、現場の責任者や上司と研修を担当するトレーナーが話し合ったうえで決めることが大切です。
具体的に目標を決める際は、以下のポイントに注目します。
- トレーナーと新入社員の組み合わせ
- 半年後・1年後の姿
- 身につけて欲しい知識とスキル
OJTをとおして、新入社員にどのような人材になって欲しいのか、メンバー間で擦り合わせます。計画の立案から実行まで現場任せにせず、効果的にOJTを進めるための社内体制を構築することが大切です。目標や計画を適切に設定すると、トレーナー自身が研修のゴールをイメージしやすくなるだけでなく、新入社員自身のモチベーションにもつながります。なぜなら、会社が期待することや先輩社員の考えが伝わるため、教わる側としての安心感を得られるからです。
教育する社員の特性・現状を把握する
目標や計画を設定したあとは教育する新入社員の特性と現状を把握します。教育する相手が新卒社員なのか中途社員なのか、また職種や階層、経験年数、個々のスキルなどによって、教育内容が異なるからです。個々の経験や知識、スキルなどを把握すると、一人ひとりに合わせた教育計画の作成につながります。また、教育する社員の特性や現状を把握するため、トレーナー自身も研修を進めやすくなるでしょう。
トレーナーを選出する
教育する新入社員の特性や状況を把握したあとは、トレーナーを選出します。トレーナーには、現場で使う知識やスキルはもちろん、コミュニケーションスキルや指導力、状況判断力などが必要です。トレーナー自身のスキルや経験によっては、十分な指導が行えないケースもあるでしょう。トレーナーの状況やスキルによっては、教育するためのトレーニングを実施したり、サポートとなる人を配置したりしましょう。
計画を立案する
続いて、トレーナーと新入社員で現状のレベルを確認しあい、計画を立てます。ステップ1でOJTの計画や目標は立てているので、ここでは、トレーナーと研修を受ける新入社員で擦り合わせながら、研修を受ける側の希望などを確認しましょう。
ポイントは、目標に向けた具体的アクションやスケジュール、達成方法を検討すること。計画は新入社員の成長を左右するため、納得するまで熟考するのをオススメします。万が一、教育計画通りに進まない場合は、早めに原因を探りスケジュール調整といった対策を考えるとよいでしょう。
OJTを実施する
実際に以下の4ステップの流れに沿って、OJTを実施します。
- 手本を見せる(Show)
- 説明をする(Tell)
- やってもらう(Do)
- 評価する(Check)
実践1:手本を見せる(Show)
まずはトレーナー自身が実際の仕事の手本を見せるというステップから始めます。手本を見せることで、研修を受ける側は業務の全体像を把握でき、やるべきことのゴールをイメージできるのです。「百聞は一見にしかず」という言葉があるように、言葉だけで伝えるのには限界があるもの。きちんとした手本を見せられるかどうかは、新入社員のスキル定着に影響します。
とにかくやってもらうという考え方ではなくまずはトレーナーが業務を一通りやって、手本を見せるようにしましょう。
実践2:説明をする(Tell)
業務のイメージをつかめたら、細かな部分の説明を行いましょう。なぜなら、業務の詳細を理解したりコツを掴んだりするのには、見るだけでは不十分な箇所もあるからです。一からすべてを説明するより、見るだけでは習得しづらい点を重点的に補足するのが望ましいでしょう。
OJTで説明する際は、トレーナーからの一方的な説明にならないよう、正確に伝わっているかどうかを確かめながら進めるのをオススメします。
実践3:やってもらう(Do)
新入社員に実務の様子を見せて説明をくわえたあとは、実務をやってもらいます。ここで重要なのは、新入社員が可能な限り自分の力で取り組めるようにサポートすること。実務をやってもらう際は、すぐに助けず、なるべく一人で業務を完結できるようにサポートしましょう。最初はスムーズにできなくても、学んだことを思い出しながら業務を進めていくとスキルの定着につながります。また一連の流れを自身でやってもらうため、改善点の確認もしやすく、その後のフィードバックに役立つのです。
実践4:評価する(Check)
実際にやってもらったあとは、必ずフィードバックします。フィードバックの有無が社員の成長に影響するので、良かった点と改善点にわけて丁寧に行いましょう。客観的なフィードバックを受けると、自身で気づいていない改善点を把握できます。また褒められることでモチベーションにつながるため、よかった点は積極的に伝えるとよいでしょう。
新入社員研修におけるOJTの成果を高めるポイント4つ
新入社員研修におけるOJTの成果を高めるポイントは、以下の4つです。
- 新入社員の傾向を把握する
- ワークショップやケーススタディを取り入れる
- Off-JTと組み合わせて実施する
- OJTトレーナーの教育にはeラーニングを用いる
新入社員の傾向を把握する
OJTの成果を高めるためにも新入社員の動向をしっかりと把握しましょう。なぜなら、社員一人ひとりで特性や個性が異なるからです。たとえば「言われたことは理解できるものの失敗をおそれて行動できないタイプ」「行動的ではあるものの、自己流でやってしまうタイプ」などさまざまな傾向が考えられます。
また、最近の新入社員によく見られる特徴として以下が挙げられるのです。
- 気が合う人に対する貢献度が高い
- 失敗をおそれる
- 指示されたことは丁寧にこなすものの、自ら積極的に行動しない
- なんでも正解を探してしまう
- 自己主張が苦手
このように社員の特性を把握すると「業務をより細分化して難易度を下げよう」「こまめな報告・連絡・相談を徹底させよう」など、個人に合わせた対策を講じていけます。OJTの効果を高めるためにも、新入社員の傾向を把握するのは欠かせません。
ワークショップやケーススタディを取り入れる
OJTを実施したものの放置していては知識が定着しません。OJTを実施したあとに、スキルを磨くためのワークショップ(参加者同士が意見を交わして幅広い考えに触れられる体験型のセミナー)や悩みを解決するケーススタディ(事例を題材として行うトレーニング手法)などを取り入れましょう。これらの実施によって研修参加者の学習定着率を向上できます。ワークショップでは、OJTで身につけた知識やスキルを振り返るため、学んだ内容を復習できるよい機会になります。
またケーススタディでは、実際に起こった事例や起こりうると想定される事例をもとにディスカッションを行うので、危機管理やイレギュラー対応といった観点で非常に効果的です。
新入社員研修のカリキュラムについては「新入社員研修のカリキュラムの作り方〜教育手法やポイントなど徹底解説」も参考にしてみてさい。
Off-JTと組み合わせて実施する
前述したようにOJTをOff-JT研修と組み合わせると、より効果が発揮されます。なぜなら、OJTのみで知識を伝達しようとすると時間がかかってしまい知識の定着や応用に限界があるからです。またOJT中は、トレーナーが新入社員の状況をつねに把握する必要があり、自身の業務に影響が出るのも少なくありません。Off-JT研修をとおして業務内容の大枠をとらえておけば、OJTにもスムーズに移行でき学習効果の向上が期待できます。
また、入社から半年が経過する頃、社員全員による研修を行い、グループワークでそれぞれの成果を共有したり悩みを打ち明けたりするのも効果的です。
OJTトレーナーの教育にはeラーニングを用いる
OJTはトレーナーのスキルや経験によって、教育の仕方に差が生まれやすいです。教育の質に偏りが生じるのは、研修に対するモチベーション維持といった観点からもよいとはいえません。指導者の教育の仕方や対応が原因で、新入社員が辞めてしまうケースもあります。会社と社員を守るといった意味でもOJTトレーナーの教育は必須です。
OJTトレーナーの教育には、eラーニングを活用するとよいでしょう。全員が1か所に集まる研修の場合「都合を合わせる」「移動でタイムロスが出る」など難しい点も多いからです。
eラーニングであれば、多忙な社員であってもスキマ時間に学習してもらえます。OJTの質を向上させるためにも、トレーナーの教育の一環としてeラーニングを検討してみてはいかがでしょう。
eラーニングについては「eラーニングとは?企業と受講者が利用できるeラーニングシステムの機能を解説」も参考にしてみてください。
OJTトレーナーの教育におすすめのツール
本記事では、新入社員研修のOJTについて詳しく解説しました。OJTは集まる形式の研修と比べて、実践スキルや知識を効率よく身につけられます。業務内容によっては、非常に効果的な研修手法です。
OJTは基本、会社の人事部や研修担当者が行うのではなく、現場の社員がトレーナーになります。そのため、トレーナー次第で教育内容に差ができてしまうのです。OJTを取り入れる際は、トレーナー自身の教育者としてのスキルアップにも目を向けたほうがよいでしょう。
そこでオススメなのが「manebi eラーニング」。
「manebi eラーニング」では、OJT関連のコンテンツを含む約5,000レッスンを提供しているうえ、テストやアンケート機能もついているので理解度もチェックでき、OJTを受け持つ多忙な現場担当者でも効率よく研修に関する知識を身につけられます。
また、自社教材のアップロードも可能であり、搭載コンテンツと自社教材を組み合わせて自社に合った研修も実施できます。「manebi eラーニング」についての詳しい資料やオンライン研修、eラーニングシステムの活用に関するご相談など、お気軽にお問い合わせください。
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