eラーニングの動画制作は可能？作成のメリットや注意するべきポイントとは

eラーニング

2025年10月23日(木)

監修者

ヒューマンキャピタルパートナーズ株式会社代表取締役／人的資本経営・組織開発コンサルタント

堂前晋平

組織・人材開発の専門家として、社員1万人を超える大手IT企業から10名以下の日本料理店まで、延べ500社・5万人超の支援実績を持つ。
大企業での営業経験を経て、ベンチャー企業にて支社設立・事業責任者・取締役としてIPO、さらに子会社設立を経験。上場企業のグループ人事責任者としてM&A後のPMIを担い、社員70名から400名への急成長を支援。これらの多様な経験を活かし、経営と人事の両視点から戦略的人材マネジメントを実践。日本経営品質賞本賞、ホワイト企業大賞、グッドカンパニー大賞などの受賞に寄与。2023年8月manebiのCPO（Chief People Officer）就任。現在はISO30414のリードコンサルタントとして人的資本経営の推進支援や社員研修の講師としても登壇中。

＼お悩みに合わせてご提案します！まずはお気軽にご相談を／

ご相談はこちらから

eラーニングの導入を検討する際、「自社で動画教材を作成できるのか」という疑問を持つ企業は少なくありません。本記事では、eラーニング用の動画制作の方法から、導入のメリット、効果的な制作のポイント、さらに自社制作時の注意点まで詳しく解説します。

オプション動画を含む約8,000の教材とAI搭載のLMSを持つmanebi eラーニング

eラーニング用の動画教材を作る方法5つ

eラーニング用の動画教材は、企業の予算や目的に応じて様々な方法で作成できます。まずは、社内リソースを活用する方法から専門業者への外注まで、代表的な5つの制作方法をご紹介します。

集合研修を撮影する

集合研修をビデオカメラで撮影し、そのまま動画教材として活用する方法です。

講師の表情や受講者とのやり取りも記録できるため、臨場感のある教材になります。撮影後は簡単な編集を加えるだけで教材化できるため、初めて動画制作に取り組む企業におすすめの手法です。

スライドを使ったプレゼンを録画する

PowerPointやKeynoteなどのプレゼンテーションソフトに、音声ナレーションを付けて録画する方法です。

図表やグラフを効果的に活用でき、論理的な説明が求められる内容に適しています。

スライドの録画では、1枚あたり1分程度を目安に進めると視聴者が飽きにくくなります。また、アニメーション効果を使って強調すると、視覚的に理解しやすい教材になるでしょう。

オンライン会議ツールの録画機能を活用する

ZoomやMicrosoft Teamsなどのオンライン会議ツールには、セッション全体を録画する機能が搭載されています。

講師が画面共有しながら説明する様子を録画すれば、そのまま動画教材として利用可能です。リモートワークが普及した現在、多くの企業が既にこれらのツールを導入しているため、追加コストなく始められます。

録画時には、参加者の音声をミュートにし、講師のみが話す設定にすることで、クリアな音質を保てます。

eラーニングシステムの教材作成ツールを活用する

LMS（学習管理システム）の中には、動画編集機能や教材作成ツールが組み込まれているものがあります。

これらのツールを使えば、動画やPDF資料を簡単に教材化できるだけでなく、テストやアンケート機能と連携させることも可能です。学習効果を高める仕組みが統合されているため、効率的な教材開発が実現します。

例えば、動画の途中にクイズを挿入したり、視聴履歴を自動的に記録したりする機能は、受講者の理解度を把握するのに役立ちます。

eラーニングの専門業者に制作を外注する

安定して高品質な動画教材を求める場合は、eラーニング専門の制作業者に外注する方法があります。

企画からシナリオ作成、撮影、編集まで一貫して対応してもらえるため、プロフェッショナルな仕上がりが期待できます。特に、ブランドイメージを重視する企業研修や、全社展開する重要な教材には適した選択肢です。

外注する際は、制作会社の過去実績やサンプル動画を確認し、自社のニーズに合った品質を提供できるかを見極めることが重要です。

動画教材制作の依頼・相談はこちら

企業がeラーニングで動画教材を導入する3つのメリット

動画教材の導入は、企業の人材育成に多くのメリットをもたらします。ここでは、特に注目すべき3つのメリットについて、具体的なデータや事例を交えながら解説しましょう。

研修コストを大幅に削減できる

動画教材の最大のメリットは、研修にかかるコストを大幅に削減できる点です。

従来の集合研修では、会場費、講師料、受講者の交通費や宿泊費など、多くの経費が発生していました。一方、eラーニングの動画教材は、一度制作すれば何度でも繰り返し使用できるため、受講者数が増えても大幅にコストは変わりません。

動画で受講効果が高まる

複雑な手順や専門的なスキルを学ぶ際には、文字や静止画像だけでは理解が追いつかないことがあります。こうした場合に効果を発揮するのが動画です。動画は動きや流れをリアルに表現できるため、学習者が手順や操作を視覚的に理解しやすくなります。また、実際の作業イメージを掴みやすく、記憶にも残りやすいというメリットがあります。

例えば、コンプライアンス研修では、違反事例をドラマ仕立てで再現することで、受講者は当事者意識が高まります。

動画研修がおすすめの理由をもっと詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。

いつでもどこでも学習できる利便性

動画教材は、スマートフォンやPCがあれば、場所や時間に縛られずに受講できます。出張先や自宅でも学習を進められるため、従来の集合研修のような時間的制約を受けません。

また、学習の進捗は自動で記録されるため、途中で中断しても続きから再開できます。自分のペースで理解度に合わせて進められることで、無理なく継続しやすくなり、結果として組織全体の学習効率向上にもつながります。

eラーニングを導入するメリットについて詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。

＜メリットまとめ　集合研修/eラーニング比較＞

比較項目	集合研修	eラーニング
研修コスト	・会場費・講師料・交通費・宿泊費などが毎回発生。・参加人数が増えるほどコスト増。	・一度制作すれば繰り返し利用可能。・受講者が増えてもコストはほぼ一定。
学習効果	・講義形式で受講者の集中度や理解度に差が出やすい。・復習が難しい。	・映像＋音声で記憶定着率が高い。・繰り返し視聴やスローモーション再生で理解が深まる。
場所・時間の制約	・決まった日時・場所への集合が必要。・スケジュール調整が困難。	・スマホやPCでいつでもどこでも受講可能。・スキマ時間の活用が可能。

自社で動画制作をする際のポイント｜要素別まとめ

自社で動画教材を制作する場合、計画的に進めることで教材を効率的に作成できます。ここでは、企画から公開まで段階ごとに押さえるべきポイントと、機材やツール、配信環境の選び方、さらに受講率を向上させる工夫について詳しく解説します。

動画制作の基本ステップ

1-1. 企画設計：学習目標とKPI設定

動画制作の最初のステップは、学習目標とKPIを明確に設定することです。「誰に何を教えるのか」「受講後にどんな行動変化を期待するのか」を明確にしましょう。

例：「新入社員が3ヶ月以内に基本的なビジネスマナーを習得する」
ポイント：KPIとしては、受講完了率、テスト合格率、実務での活用頻度などが目安です。

1-2. シナリオ作成：ストーリーボード活用法

シナリオ作成では、動画の流れを視覚的に整理するストーリーボード（絵コンテ）が有効です。各シーンの映像、ナレーション、テロップ、効果音などを一覧表にまとめることで、制作チーム全体でイメージを共有できます。ストーリーボードがあれば、撮影当日の段取りもスムーズに進むでしょう。

構成例：「課題提示→解決策の提示→実践例の紹介→まとめ」
ポイント：冒頭の30秒で「この研修を受けると何が得られるのか」を示して、受講者の興味を引きつけましょう。

1-3. 撮影準備：機材とロケーションの選定

撮影準備では、使用する機材とロケーションを慎重に選ぶことが重要です。カメラはスマホでもOKですが、音声は外部マイクでクリアに。照明は自然光やLEDライトで顔を明るくし、背景はシンプルに整えます。

1-4. 撮影・収録：品質を安定させる

撮影当日は、一定の品質を保つための工夫が必要です。講師が話す際は、カメラ目線を意識し、視聴者とのアイコンタクトを大切にします。

照明は常に一定の明るさを保ち、影が強く出ないよう調整します。また、収録中は周囲の雑音に注意し、必要に応じて「録音中」の表示を出して静かな環境を維持しましょう。複数のシーンを撮影する場合は、シーンごとにカメラ位置や照明が変わらないよう記録しておくと、編集時に統一感のある映像になります。

1-5. 編集：効率化ツールとワークフロー

編集作業では、効率的なワークフローを確立することで時間を大幅に短縮できます。まず、撮影素材を整理し、使用するシーンを選定します。次に、不要な部分をカットし、テロップやBGMを追加していきます。

編集時には、視聴者が飽きないようテンポを意識しましょう。長い説明シーンでは、図表やアニメーションを挿入することで視覚的な変化を付けられます。また、重要なポイントは字幕やハイライトで強調し、理解を促進します。

1-6. 検証・公開：フォーマット最適化とQA

動画を公開する前に、各デバイスでの再生テストを行うことが重要です。PCだけでなく、スマートフォンやタブレットでも正常に再生されるか確認しましょう。また、通信環境が不安定な場所でも視聴できるよう、動画のビットレートや解像度を最適化します。

公開前には、以下の項目をチェックリストで確認しましょう。

音声と映像のズレがないか
字幕に誤字脱字がないか
動画のファイルサイズが適切か
LMSに正しくアップロードされているか
受講者がアクセスできる権限設定になっているか

公開後は、受講者からのフィードバックを収集し、次回の制作に活かすことが重要です。視聴データを分析し、離脱率の高い箇所があれば改善を検討しましょう。

＜基本ステップまとめ表＞

ステップ	主なタスク	担当者	所要時間目安
企画設計	学習目標設定、KPI決定、対象者分析	研修・教育担当者	1〜2週間
シナリオ作成	ストーリーボード作成、台本執筆	教材開発担当	1〜2週間
撮影準備	機材調達、ロケーション確保、リハーサル	制作チーム	3〜5日
撮影・収録	本番撮影、音声収録	制作チーム	1〜2日
編集	カット編集、テロップ追加、BGM挿入	編集担当	1〜2週間
検証・公開	QAテスト、フォーマット最適化、LMSアップロード	全体	3〜5日

＼お悩みに合わせてご提案します！まずはお気軽にご相談を／

ご相談はこちらから

機材・ツール

eラーニング用の動画制作では、機材や編集ツールの選定が品質を左右します。高価な機材を揃えなくても、ポイントを押さえれば十分に高品質な映像を作ることが可能です。以下では、撮影に必要な機材と、スキル別におすすめの編集ツールを紹介します。

2-1.カメラとマイク：最低限の性能基準

eラーニング用の動画撮影では、高価な機材がなくても十分な品質を確保できます。カメラは、1080p(フルHD)以上の解像度で撮影できるものであれば、エントリーモデルでも問題ありません。

一方、音声品質は妥協してはいけません。内蔵マイクでは周囲の雑音を拾いやすく、クリアな音声が録音できないため、必ず外部マイクを使用しましょう。ピンマイクは講師の声を直接拾えるため、安定した音質が得られます。

2-2.編集ソフト:スキルに合わせた推奨ツール

動画編集ソフトは、利用者のスキルレベルに合わせて選定することが大切です。初心者であれば、カット編集やテロップ追加などの基本操作を簡単に行えるツールを選びましょう。

一方で、映像の色調補正やエフェクトを細かく調整したい場合は、より高機能な編集ソフトが適しています。最近では、AIを活用して字幕生成やノイズ除去を自動化できるツールも増えており、作業効率の向上に役立ちます。

容量・配信・通信環境

動画を円滑に配信し、どのデバイスでも快適に学習できるようにするには、容量や形式、画質設定の最適化が欠かせません。以下では、eラーニング動画を配信する際に押さえておきたいポイントを解説します。

3-1.解像度とビットレート：最適値で容量を最小化

動画のデータ容量は、解像度とビットレート（1秒あたりに処理されるデータ量）によって大きく変わります。eラーニング用動画では、720p（HD）程度の解像度でビットレートを500Kbps〜1Mbps前後に設定すると、画質とデータ容量のバランスが取れます。
1080p（フルHD）にすると画質は向上しますが、ファイルサイズは約2倍以上になり、配信コストや受講者の通信負荷が増大します。そのため、再生環境やネットワーク帯域を考慮して設定することが重要です。

ビットレートを下げすぎると映像が粗くなり、文字や図表が見づらくなる場合があります。特に、細かな図解やグラフを多用する教材では、内容が十分に判読できるレベルのビットレートを確保することが大切です。

3-2.フォーマットの選択：MP4／WebM

動画のファイル形式を選ぶ際は、互換性とデータ容量のバランスを考慮することが大切です。MP4形式は多くのデバイスやブラウザで再生でき、安定性と圧縮効率に優れているため、eラーニングで最も一般的に採用されています。

一方、WebM形式は比較的軽量で、高い圧縮率を実現できるのが特徴です。ただし、一部の環境では再生が制限される場合があるため、受講者の利用環境やLMSの対応状況を確認したうえで選択しましょう。

3-3.デバイス別設定：画質・文字サイズ・アスペクト比

受講者がスマートフォンやタブレットで視聴することを前提に、デバイスごとに最適化した設定を行いましょう。画質は、PC向けには1080p、モバイル向けには720pが標準的です。また、字幕やテロップの文字サイズは、スマートフォンの小さな画面でも読めるよう、最低でも24pt以上に設定することをおすすめします。

アスペクト比（画面の縦横比）は、従来の16:9が一般的ですが、スマートフォンでの視聴を重視する場合は、9:16(縦型)も検討する価値があります。縦型動画は、通勤中などの隙間時間に視聴しやすく、受講率の向上につながります。ただし、グラフや表を多用する教材では、横型の方が視認性が高いため、内容に応じて使い分けましょう。

受講率向上の工夫

受講者に最後まで学び続けてもらうためには、内容の質だけでなく「視聴しやすさ」と「学びやすさ」を両立させる工夫が欠かせません。以下では、受講率を高めるための具体的な方法を紹介します。

4-1.字幕でアクセシビリティ向上

字幕は、聴覚支援と理解定着の両方に効く基本施策です。動画教材に字幕を付けることは、アクセシビリティの向上だけでなく、学習効果を高める効果もあります。聴覚に障害のある方や、音声を出せない環境で視聴する方にとって、字幕は不可欠です。

字幕作成は手作業で行うと時間がかかりますが、最近ではAIによる自動字幕生成ツールが充実しています。

4-2.動画の時間は短く要点は絞る

eラーニングの動画教材は1本あたり5〜10分程度に収めるのが理想的です。長時間の内容を扱う場合は、複数の短い動画に分割し、チャプターごとに学習できるようにしましょう。受講者は自分の都合に合わせて少しずつ視聴できるため、学習の継続率が向上します。

また、各動画では、1つのテーマに絞って深掘りする構成が効果的です。例えば、「ビジネスメールの書き方」という大きなテーマを扱う場合、「件名の付け方」「本文の構成」「添付ファイルのマナー」など、項目ごとに動画を分けると理解しやすくなります。

4-3.定期的なクイズなどインタラクティブ要素

動画の途中に定期的なクイズを挿入することで、受講者の集中力を維持し、理解度を確認できます。5分ごとに1問程度の簡単な選択式クイズを入れることで、受講者は自分の理解度をリアルタイムで把握できるでしょう。クイズの正誤に応じて、補足説明の動画にリンクさせることで、個別最適化された学習体験を提供できます。演習課題の提出も効果的です。

また、動画の最後にアンケートを設置し、受講者からのフィードバックを収集することも重要です。「どの部分が理解しにくかったか」「もっと詳しく知りたい内容は何か」などを聞くことで、次回の教材改善に活かせます。

＜具体的な工夫＞