人材育成において「他責思考の社員が多い現状を何とかしたい」「自分で考えて行動できる社員を増やしたい」といった悩みを抱える人は多いでしょう。このような悩みに対して注目されているのが「自分ごと化」です。
自分ごと化がなぜ人材育成において重要なのでしょうか。本記事では、自分ごと化の意味や重要性にくわえて、自分ごと化できない理由、推進するメリットや実現するためのポイントを解説していきます。ぜひ参考にしてみてください。
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資料をダウンロードする自分ごと化とは
自分ごと化とは、ある事象を自分のものとしてとらえて取り組むこと。自分ごと化を推進するためには、まず自分ごと化とは具体的にどのような意味か、なぜ重要なのかを把握しておくのが大切です。まずは自分ごと化の意味と重要性を確認しましょう。
自分ごと化の定義・意味
「自分ごと化」とは、物事を他人や環境のせいにせず、自分に矢印を向けて原因の追求をしたり、改善したりする姿勢や考え方を意味します。一方、自分ごとの対義は「他人事(ひとごと)」です。「他人事」は、「自分には関係ない」「自分とは無関係な人のこと」などを意味します。ビジネスで「他人事」の態度を取り続けていると相手から信頼を失ってしまうでしょう。
したがって社員一人ひとりが「自分ごと化」できれば、企業の課題や目標を他人事ではなく、自分自身のものとしてとらえられるため、個人やチームの成長、生産性向上が期待できます。
自分ごと化の重要性
価値観や技術の変化など、不確実な時代に対応していくには、企業の経営方針や目標に対して社員が当事者意識をもって取り組む姿勢が重要です。たとえば、経営層が方針を示し、上司から指示や命令を受けて業務に取り組む企業は多いでしょう。現場の社員がどのような意図で指示を出されているのかを知るには、上司や経営層の視点になって考える機会をつくる必要があります。
あらゆる状況を理解して自分ごと化できる社員が増えると、上司からの指示や業務に対して意図や目的を読み取れるようになり、当事者意識や責任感が芽生えやすくなるのです。当事者意識がもてると、課題解決に向けた意見交換が現場の社員同士で活発になっていくため、現場の課題をスピーディーに解決できるようになります。
また管理職が「自分ごと化」できると「部下がどう感じるか」を自分ごととしてとらえられるようになるため、部下からの信頼も高まり、成長の機会を与えられるでしょう。部下からの信頼がある管理職の発言や行動は、チームとして成長しながら目標達成に向かえる強い組織づくりのきっかけになります。
自分ごと化3つの言い換え方
自分ごと化は、似た意味をもつ以下3つの言葉に言い換えられる場合があります。
- 当事者意識
- 主体性
- 責任感
それぞれの意味を理解しておくと、自分ごと化を適切にとらえられるでしょう。それぞれ解説するので参考にしてください。
当事者意識
当事者意識とは、物事に対して「責任は自分にある」「責任は自分にもある」など自分自身の責任を深く自覚すること。自ら問題を解決できる方法を見つける責任があると、自覚している状態です。
当事者意識を芽生えさせるには、自分が物事に対してどのようにかかわっているかについて気づいてもらうのが重要です。自分が関係者であると自覚できれば、自発的な提案が生まれたり、発言や行動に責任感がともなったりしやすくなるでしょう。自分ごと化の「物事を自分のこととしてとらえる意識」に対して、当事者意識は「自分に責任があると認識し行動を起こそうとする状態」といった違いがあります。
主体性
主体性とは、目標の設定や実現に向けて必要な行動を自分の意思で判断し、責任をもって行動すること。主体性がある状態とはマニュアルや慣習にない物事でも自分で考えて行動する姿勢を指します。
たとえば与えられた仕事に率先して取り組むのは「自主性」がある状態です。一方主体性は「こんなアプローチをしたらもっと売れるのではないか」というように、自分で達成方法や課題について考えながら行動する状態を指します。自分ごと化は、「物事に対する自分の関心」を示すのに対して、主体性は「自分の意志による行動」といった違いがあります。
責任感
責任感とは、自分のやるべき仕事を最後までやり遂げようとする意志のこと。責任感が強い人は、業務に誠実に向き合い、たとえ失敗したとしても諦めずやり遂げようとします。責任感のある行動ができる社員ほど上司や同僚からの信頼を得られ、重要な仕事を任される機会も増えていくでしょう。
また責任感にはすべての責任は自分にあるととらえる「自責の責任感」と、間接的に関与する物事でも自分に関係があると自覚している「当事者意識の責任感」があります。自分ごと化は、物事に対して「自分にも責任があるのではないか」と意識するのに対して、責任感はそれを強く認識できている状態です。
自分ごと化で得られる4つのメリット
「自分ごと化」で得られる主なメリットは以下の4つです。4つのメリットについて解説します。
- 社員の成長スピードが高まる
- 社員のモチベーションアップにつながる
- 業務に対する熱意や責任感を高められる
- 業務の生産性を高められる
社員の成長スピードが高まる
自分ごと化できると物事のとらえ方や行動に変化が生まれるため、自分の成長に必要な要素を見つけられるようになります。具体的には、以下のような変化が期待できるでしょう。
- 相手が理解しやすいように伝える工夫ができる
- 自身の言動によって相手がどう感じるかを考えられる
- 顧客視点や経営視点など必要に応じた視点で考えられる
物事や行動の結果に対して自分に目を向けると、顧客や商談相手などさまざまな視点で考えられるようになり、視野が広がって見える景色に変化が生まれます。今まで目を向けられていなかった部分に気づいたり、自分の発言や行動を見直すきっかけが生まれたりして、成長のチャンスを自分でつかめるようになるでしょう。
社員のモチベーションアップにつながる
自分ごと化できれば、社員のモチベーションアップにつながります。与えられた仕事でも目的や意味を見出し、自分の成長や会社の利益に必要なものと認識できるため、「仕事のやらされ感」をなくせるからです。自分ごと化できると、相手に付加価値を提供するのが仕事であると認識できるきっかけとなり、仕事の考え方が変わり、仕事をとおして自己成長が実現できる認識へと変化します。
仕事の認識が変われば自己成長に必要ととらえられるため、あらたな知識やスキルの修得に対するモチベーションが高まるでしょう。自分ごと化は仕事が楽しくなるきっかけの1つでもあるため、社員のモチベーションアップに大きな期待がもてるようになります。
業務に対する熱意や責任感を高められる
自分ごと化できれば、仕事に対して当事者意識や責任感がもてるようになります。他人任せではなく自分がどのようにかかわれば成果を挙げられるかを考えて行動できるようになるため、「仕事のオーナーシップ」を発揮できる組織になるでしょう。
仕事のオーナーシップとは、仕事に対して当事者意識や責任感をもち、自分の行動がどれだけ成果に反映されているかを認識して行動する姿勢です。オーナーシップが発揮できる組織の社員は、困難や失敗に直面しても責任感をもって対処できるようになります。
また、オーナーシップは自分自身のパフォーマンスを最大限に発揮できるようにするためのセルフマネジメントも意味しています。自分ごとと認識しすぎてキャパオーバーとなってしまっては、本来のパフォーマンスを発揮できません。自分ごと化するとともに、セルフマネジメントするオーナーシップの考え方を併用していくと効果的です。
業務の生産性を高められる
自分ごと化できると業務の生産性向上にもつながります。理由は、自分ごと化によって当事者意識や責任感がもてるからです。自分ごと化できる社員が増えれば、当事者意識や責任感をもったうえで、主体性のある行動ができる人材が増えるでしょう。社員が業務の目的や意図を理解し、考えながら主体的に取り組めるようになります。
社員それぞれが当事者として物事をとらえ、目標達成や課題解決の手段を各自が考えてチームで話し合う機会が増えるため、具体性や論理性が増してコミュニケーションのレベルが高まるでしょう。社員が「自分たちの力で進められている」といった経験ができると、社員自身が成長を実感し自信をもてるようになるため、発揮されるパフォーマンスのレベルも上がっていきます。
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資料をダウンロードする自分ごと化できない5つの理由
企業には多様な人材が在籍しているため、自分ごと化できている人とそうでない人が混在しているでしょう。自分ごと化できない主な理由は以下の5つです。
- 明確な目的や目標がない
- 保守的な組織文化が根づいている
- 他責思考の社員が多い
- 余裕がない
- ラクをしたい考え方をしている
明確な目的や目標がない
仕事の目的を理解できなかったり、自分のキャリアについて明確な目標がなかったりすると仕事に対するモチベーションを保ちにくく、自分ごと化するのはむずかしいでしょう。このような状態では、結果に対して消極的な行動になりやすく、自分ごと化に必要な当事者意識や主体性も芽生えません。
また、目標設定をしていても、目標達成のメリットを認識できていなければ自分ごととしてとらえるのはむずかしいでしょう。仕事の目的や意義の理解とともに、達成するとどのような結果を社員自身にもたらすのか、組織として具体的なビジョンを示すのが重要です。
保守的な組織文化が根づいている
あたらしいアイデアやチャレンジが容認されにくいといった保守的な企業風土の場合、自分ごと化を根づかせるのは困難です。自分ごと化して当事者意識や主体性が生まれたとしても、アイデアやチャレンジが認められなければモチベーションは下がり「意見を出しても認めてもらえない」と、他人事の思考に変化してしまうでしょう。もちろん根拠のともなわないアイデアやチャレンジを容認するのは現実的ではありません。
アイデアやチャレンジを提案する際は、論理的に根拠を導いてから実施するよう指導するのが重要です。また、容認するだけでなく適切にフィードバックを実施して評価していければ、社員のモチベーションが向上し、あたらしいアイデアやチャレンジがどんどん生まれる風土になっていくでしょう。
他責思考の社員が多い
他責思考とは、物事がうまくいかないことを他人や環境のせいにして自分を正当化する思考を指します。注意していてもミスやクレームは起こるもの。しかし、他責思考の場合「自分に合わない仕事を任せた上司が悪い」「システムが古いせいだ」などととらえてしまいます。
他責思考や言い訳をする社員は、自分自身に原因や影響があるのかといった矢印を向けられていないため、思考を自分ごと化するのはむずかしいでしょう。自分ごと化の実現に向けて最初に改める他責思考は、自分のミスを認められず言い訳をする謝罪できない考え方です。
上司は社員に対して、あらゆる物事に対して自分に矢印を向けると気づけることや今後どのように変化していけるかなど、社員にとってのメリットや自分ごと化の目的を理解してもらうアプローチが必要になります。
余裕がない
抱えているタスクが多かったり、あたらしい環境下で覚えることが多かったりすると自分のことだけで精いっぱいで余裕がなくなる可能性があります。余裕がない状態では、自分ごと化に向き合えないため実現するのはむずかしいでしょう。
また、同様の状態が続けばメンタルヘルス不調を招く可能性もあります。組織として社員の状態を把握したうえで適切な業務を割り当てられる仕組みづくりが大切です。社員の心理的安全を確保できれば、自分ごと化について考える余裕が生まれ、実践できるようになっていくでしょう。
ラクをしたい考え方をしている
重要な仕事をしたくない、責任のある立場になりたくない、といったベクトルで考えている社員が多いと自分ごと化は実現できません。努力を放棄する思考は受け身の姿勢で指示がなければ動けないため、自分の成長のみならず、組織の目標達成にも大きな障害となってしまいます。
また、職場環境や教育制度、人間関係が原因で努力を放棄する思考になってしまうことへの対策も必要です。たとえば上司が部下を評価せず、次の指示を一方的に出し続けていたり、成果を出すと蹴落とそうとする同僚がいたりすると、次第に仕事の意欲を失くしてしまいます。上司は社員にいきなり成長や積極性を促すのではなく、ラクをしたいと考えてしまう要因がないかを検討するところからはじめるとよいでしょう。
自分ごと化を実現する5つの方法
自分ごと化を実現するために有効な方法は、以下の5つが挙げられます。
- 目標を具体的に設定する
- 定期的なフィードバック・振り返りを実施する
- 自発的な取り組みができる環境を提供する
- 組織全体で交流・意見交換できる機会を設ける
- コーチング研修を実施する
目標を具体的に設定する
自分ごと化を実現するには、目標設定を具体的かつ、目標の意図を明確にするのが重要です。具体的な目標によって行動が明確になるだけでなく、何のための目標なのかを考える機会が増えるため、目的意識や本質をとらえる力が身につきます。また、目標の期限を設けて、期日までに達成する行動を促すのも必要です。目標設定する際には「SMARTの法則」を活用するとよいでしょう。
- Specific:具体的でわかりやすい
- Measurable:数値で測定可能
- Achievable:現実的に達成可能
- Relevant:チームや会社の目標に関連している
- Time-bound:明確な達成期限
SMARTの法則にくわえて、以下2つの「W」を明確にします。
- what:「現状の改善を目的とした目標」か「自己成長のための目標か」など
- why:自分にとってなぜその目標が必要なのか
SMRT+Wで目標設定をすると、目的や意図を考える習慣をつけながら達成による成功体験を積みやすくなります。自分ごと化は先々、当事者意識をもてる状態が必須になっていくため、目的や意図などの本質を考える力が必要です。
定期的なフィードバック・振り返りを実施する
自分ごと化の実現にはフィードバックによる評価が重要です。自分ごと化できる社員とできない社員では、物事のとらえ方に大きなギャップがあるもの。たとえば同じ業務でも、自分ごと化できる社員は業務の目的や本質を考え、業務を遂行するとどのような結果をもたらすかを考えられます。
適切な評価を実施しなければ、自分ごと化できる社員とできない社員、上司と社員で生じる物事のとらえ方や考え方といったギャップを埋められません。自分ごととしてとらえられない社員は、チームや上司が求める価値観と大きく異なっている可能性があります。自分ごと化の実現には、物事のとらえ方、目的意識のもち方などの答えやヒントを定期的にフィードバックで伝えていくのが大切です。
また、フィードバックでは上司が社員に求める内容に至らないものでも「できている部分」をしっかりと伝えましょう。たとえば「ここはよくできている。ここは求めるレベルとはいえないから改善が必要」といったように、できる箇所と課題を明確に伝えます。それぞれを明確にすると、自分の弱みと強みの認識が可能になり、成長意欲の促進も期待できるでしょう。
また、自分ごと化は社員によってスタート地点がそれぞれ異なるもの。社員一人ひとりの価値観や考え方を把握し、個人に合わせた育成計画を立てられると効果的です。
自発的な取り組みができる環境を提供する
自分ごと化を実現するには「この仕事は自分にも関係している」といったように、自分で気づけるようになるのが重要です。とはいえ、社員がすぐに上司や企業が求めるレベルに気づけるようになるのはむずかしいでしょう。
まずは社員が自分で答えを出せるようにヒントを与えて、誘導していくのが大切です。答えを導いた経験が増えれば、ヒントを与えなくても自分で気づけるようになっていくでしょう。自分で気づいたことに関しては使命感を得やすく、意欲的に取り組めるようになります。社員に応じて適切に育成計画を調整し、気づきの機会を与えていくのが大切です。
組織全体で交流・意見交換できる機会を設ける
自分ごと化を促進する過程において、コミュニケーション機会の確保は欠かせません。たとえば「上司と部下の1対1のミーティングの実施」「部署内外で意見交換できる環境づくり」「理念や方針を共有する機会を設ける」などです。
社員の多くが自分ごと化できていても、企業のビジョンや方針のとらえ方がバラバラでは機能しません。企業が目指す方向性、重要視する課題や方針などを理解したうえで自分ごと化していくのが重要です。
コーチング研修を実施する
コーチングとは、部下が自分で答えを導けるようヒントを与え、自発的行動を促すこと。自分ごと化できていない社員に指導する場合、答えを教えるだけでは十分とはいえません。答えがわかってしまうと自分で考える機会が減り、自分ごととして認識しても、目的意識や主体性は発揮されにくくなるでしょう。指導する側がどのように指導していくかは自分ごと化を進めるうえで重要です。
コーチング研修では、社員が自分で考え、答えを導き行動できるようにする指導方法やコミュニケーション方法を学べ、主な対象者は、指導する立場にある管理職やリーダーです。自分ごと化は、社員に投げかけただけでは実現できません。指導者の知識やコミュニケーションスキルが必要です。自分ごと化を進める際は、対象者にコーチング研修を実施して、教育方法を修得してもらいましょう。
コーチング研修は『manebi eラーニング』の活用がおすすめ
自分ごと化できれば当事者意識や責任感が芽生え、社員の大きな成長につながります。社員の成長は企業の成長に欠かせない要素となるため、自分ごと化を進めるのは企業にも社員にも大きなメリットとなるでしょう。
しかし、自分ごと化は考え方や価値観といった概念的な要素を含むため、具体的にどのようにとらえていけばよいかつかみにくいと感じる社員も少なくありません。指導する立場にある社員がコーチングスキルを修得し、部下の成長を促進させる教育体制を整える必要があります。
コーチングスキルの修得にはeラーニングが効果的です。eラーニングでコーチングに必要な知識やスキルをいつでも学習・復習できます。フィードバック前などに活用すれば、話の進め方や伝え方の間違いを防ぎ、フィードバック効果を高めていけるでしょう。オンライン研修とeラーニングを併用し学習効果を高める「ブレンディッドラーニング」の仕組みを整えるとさらに研修効果が高まります。
「manebi eラーニング」は、オンライン研修やeラーニング環境のトータルサポートを実施しており、コーチングをはじめ、新入社員研修や階層別研修に活用できるコンテンツが5,000以上と豊富です。
また、自社教材のアップロードなど、カスタマイズ性にも優れています。たとえば、自分ごと化に必要なコンテンツを「社員」「管理職」など、役職別にカテゴライズするのも可能です。自分ごと化を推進する環境整備に「manebi eラーニング」は大きく貢献できます。
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