ダニングクルーガー効果とは?発生する理由や対処方法などわかりやすく解説

  • 人材育成

2024年7月9日(火)

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根拠のない自信を持つと周囲に誤解を与え、業務に支障をきたすことも少なくありません。認知バイアスの一つであり、自分を過大評価することをダニングクルーガー効果といいます。ダニングクルーガー効果には誰もが陥る可能性があるため注意が必要です。しかし、どのように対策を打てばよいかわからない人事・研修担当者も多いのではないでしょうか。

本記事では、ダニングクルーガー効果の特徴や対策について解説します。ぜひ人材育成の参考にしてください。

ダニングクルーガー効果とは

ダニングクルーガー効果とは何かを知るために、ダニングクルーガー効果の特徴や成立した背景、反対の意味を持つインポスター症候群との違いについて解説します。

ダニングクルーガー効果の特徴

ダニングクルーガー効果とは、正しく自己評価できず自分を過大評価してしまう認知バイアスの一つ。認知バイアスとは、意思決定をする際に、先入観や経験、直感などで非合理的な判断をする心理的な傾向のことです。

ダニングクルーガー効果に陥ると、上司や同僚からの評価と自己評価に大きなズレが生じるため自分の能力を正しく認識できません。たとえば、周りからは仕事ができないと思われているのに、自分では仕事ができると思い込んでいることがダニングクルーガー効果です。誰でもダニングクルーガー効果に陥ることがあります。

また、少しの知識を得ただけで実際の能力以上に自己評価することもダニングクルーガー効果に該当します。ダニングクルーガー効果に陥ると、少しの知識が身についただけで自信に満ちあふれた状態になり、適切に自己評価できません業務や周囲との人間関係に悪影響をおよぼす可能性があるため、放置せずに対策することが重要です。

ダニングクルーガー効果がなぜ成立したのか

ダニングクルーガー効果は、アメリカの社会心理学者であるデイヴィッド・ダニングとジャスティン・クルーガーによる社会心理学者の実験によって成立しました。実験ではまず、大学生に自分の点数を予測してもらったうえでテストを実施。その結果、実際の点数が低い学生ほど自分の点数が高いと予想し、点数が高い学生ほど点数が低いだろうと予想したのです。

これにより自分の能力を客観視できないと自己評価が甘くなることが大学生の実験で明らかになりました。その後、イグノーベル賞(人々を楽しませ考えさせられる内容に送られる賞)を受賞したことで、ダニングクルーガー効果は注目されるようになったのです。

インポスター症候群との違い

ダニングクルーガー効果とは反対の心理状態にインポスター症候群(周囲から高く評価されているにもかかわらず自己評価が低い状態)があります。インポスター(impostor)は詐欺師を意味します。インポスター症候群の場合、実力で成功しても「周囲のおかげで成功できた」「ラッキーだっただけ」と考えてしまうのです。

周囲から高く評価されているにもかかわらず、自分に対する評価が低いため自分が周囲を騙しているという思考(自分の能力を信じられない状況)に陥ってしまいます。インポスター症候群は自己評価が低いものの、周囲から高評価を与えられ、ダニングクルーガー効果は周囲からの評価が低いものの、自己評価が高いことが特徴です。

ダニングクルーガー効果が発生する2つの理由

ダニングクルーガー効果に陥る主な原因は、他責思考や客観的な意見を聞く機会がないことの2つです。ここでは、ダニングクルーガー効果が発生する理由を詳しく解説します。

問題は自分以外にあると考えている

自己防衛や自分を客観視するメタ認知の不足により、仕事上で問題が発生した際に「自分以外に問題がある」と思い込むことでダニングクルーガー効果が発生します。

自分を守る傾向が強く正当化しようと他責思考になると、ダニングクルーガー効果が発生しやすくなるのです。自分以外とは多くの場合、同僚や上司、環境などのこと。そのほか、失敗の原因は何かを追及しない人もダニングクルーガー効果に陥りやすいでしょう。

客観的な意見を聞く機会がない

周囲からの客観的な意見を聞く機会がない場合や、聞く機会はあるものの、他人の意見を聞き入れない人にもダニングクルーガー効果が発生することがあります。人は周囲からの客観的な意見を取り入れることで自分の評価や立場を理解できるからです。

仕事上で客観的な意見を聞く機会として、たとえば「フィードバック」が該当します。フィードバックは上司から部下へ行うことが多く、部下の行動や評価を行うものであり、目標を達成するための悩みを解決し、部下の成長を促す効果があります。

フィードバックが受けられない環境では、自分を客観的に見られなくなり社員は主観的な考えを持ってしまうかもしれません。フィードバックを適切に行うには、定期的に上司と部下が面談する仕組みをつくることが必要です。

ダニングクルーガー効果2つの例

ダニングクルーガー効果はさまざまな場面に影響を与えます。ここでは仕事と投資2つの例を紹介するので参考にしてください。

例1.仕事

仕事の場面でダニングクルーガー効果が影響するケースは少なくありません。たとえば、能力ではなく年齢や社歴によって役職や給与を決定する年功序列を採用する企業ではダニングクルーガー効果が発生しやすいでしょう。

年功序列によって課長や部長などに昇進した場合、実力や能力を評価されていると思い込むケースがあります。役職を担う能力がなくても昇進できる人事制度を採用している場合もダニングクルーガー効果の影響を受けるかもしれません。

たとえば上司に気に入られただけで昇進したものの、「能力を評価されて昇進した」と勘違いするケースもあります。自分自身を客観視できるよう評価制度や方法を見直す対策が必要です。

例2.投資

仕事上だけではなく、投資でもダニングクルーガー効果が影響することがあります。たとえば、株式や投資信託などの投資を始めた際、少し利益が出ただけで自分の実力を高く見積もってしまうケースです。投資経験が少ない初心者であるにもかかわらず、利益が出た場合、自分の投資判断が正しいと思い込んでしまうのでしょう。

投資面でダニングクルーガー効果に陥ると、損失が出る可能性が高い短期投資に手を出してしまうケースがあります。自分には「投資知識がある」と思い込み、さらに何十倍もの金額を投資してしまうことが原因です。根拠のない自信から投資に大金を注ぎ込んでしまう場合は注意をしなければなりません。確実な未来予測ができない投資には、大なり小なりのリスクがあります。

投資で利益を得るには、国内外の経済状況や市場動向などにもとづいた投資判断が必要です。投資を行う際にはダニングクルーガー効果に陥らないようにし、株式投資や投資信託、債券など、投資対象を分散させてリスクを軽減することも重要といえるでしょう。

ダニングクルーガー効果2つのメリット

ダニングクルーガー効果には主に2つのメリットがあります。それぞれ詳しく解説します。

自分に自信を持てる

自分に自信を持てることもダニングクルーガー効果のメリットの一つ。たとえば、新規事業を立ち上げる際や、独立して起業するケースではリスクを覚悟して挑戦する必要があります。ダニングクルーガー効果の影響で自分に自信を持てれば、積極的に挑戦しやすいでしょう。

また、客観的に自分の能力を把握する人は、自分に知識がない場面では会議で発言しないケースがあります。その一方でダニングクルーガー効果に陥る人には、根拠はないものの自信があるため、会議で発言することも多くなるでしょう。そのほかダニングクルーガー効果によりエネルギッシュに率先して仕事に取り組めるため、積極的に仕事を行うことを重要視する組織内で重宝される人材になるケースもあります。

積極的に挑戦する

何事にも積極的に挑戦できることもダニングクルーガー効果のメリット。「自分はできる」と自信がある人は、実際に能力があるかどうかにかかわらず、失敗をおそれず挑戦できる傾向にあります。

挑戦の数だけ失敗は増えるものの、失敗の回数を重ねることで行動の質を高められるでしょう。結果的に周囲の評価が上がっていく可能性があります。積極的に行動することを評価する企業では、リーダーに任命され企業や部署に欠かせない人材として重宝されるかもしれません。

ダニングクルーガー効果4つのデメリット

ダニングクルーガー効果には主に4つのデメリットがあります。ダニングクルーガー効果には誰もが陥る可能性があるため注意が必要です。ここでは、ダニングクルーガー効果に陥った場合に考えられる4つのデメリットについて解説します。

知識や勉強不足に陥る

勉強不足にもかかわらず、自分には知識があると思い込んでしまうと、新しい知識を得ようとする意識が低下してしまいます。勉強不足が続くと、業界の最新知識や業務の効率的なやり方を理解せずに自分だけが取り残されかねません。ダニングクルーガー効果に陥った人は知識が薄く能力が高くない傾向にあるため、業務上の問題が発生した場合に対処できなくなります。

社歴のある程度長い人がトラブル対応できない場合、周囲の評価を下げてしまうかもしれません。また、ダニングクルーガー効果に陥ってしまうと、周囲から学ぶ意識も薄くなってしまいます。自己評価が高いため、他人から学ぶ必要はないと考えてしまうことがダニングクルーガー効果のデメリットです。

根拠のない自信により成長する機会を失う

根拠のない自信によって成長する機会を逃してしまうこともダニングクルーガー効果のデメリットといえます。自己評価が高い状態では現状の自分に満足してしまい、向上心がなくなるからです。新しいプロジェクトに参加したり部署を異動したりして自分を磨く機会があっても、前向きに取り組めないでしょう。

自己分析をして自分に足りない部分を把握することが成長への第一歩となります。上を目指す気持ちは、学びや努力のきっかけにできるでしょう。現状維持を続けていると同期だけではなく後輩からも追い越される可能性があるため、注意する必要があります。

人間関係のトラブルにつながりやすい

自分には知識があると勘違いし、上から目線で相手に接してしまうため、トラブルにつながるおそれがあります。また会議で自分の意見ばかりを主張し、他人の意見を尊重しないことや同僚の仕事を手伝うことを嫌い、協調性に欠ける態度を取ってしまうかもしれません。コミュニケーションが取りづらい人と思われるでしょう。

管理職の立場でダニングクルーガー効果に陥ると、高圧的に接し部下を正しく評価できなくなる可能性があります。その結果上司の態度に部下がストレスを抱え、スムーズに仕事ができなくなるかもしれません。

騙される可能性がある

ダニングクルーガー効果に陥ると、自分の考えだけを信じるあまり、状況に応じて客観的な判断ができなくなってしまうことがあります。冷静な判断を失い、騙されやすくなることもダニングクルーガー効果のデメリット。「自分だけは大丈夫」と感じる人ほど、騙されることが多いでしょう。

ダニングクルーガー効果によって根拠のない自信で頭が一杯になってしまうと、警戒心が薄くなってしまいます。ダニングクルーガー効果に陥る人は、相手の話が真実かどうかを見極められなくなり、騙されやすくなるのです。

マルチ商法やサイドビジネス商法など「誰でもかんたんに稼げる」といった言葉に疑うことなく契約してしまい、騙されるケースも考えられます。「なんとなく自分だけは大丈夫」と過信している場合は、ダニングクルーガー効果が発生している可能性があるかもしれません。

ダニングクルーガー効果4つの対策・対処

ダニングクルーガー効果で失敗しないためには、対処法を知ることが重要です。ここでは、ダニングクルーガー効果の4つの対策について解説します。

メタ認知トレーニングを行う

メタ認知トレーニングを行うと自分を客観的に見られるようになるため、ダニングクルーガー効果の改善につなげられます。メタ認知とは、自分を客観的に見ることで、メタ認知能力とは、自分の考えや判断などをコントロールし冷静に行動できるようになること。

メタ認知が高い人は周囲への配慮ができ、仕事への意欲が高い傾向にあります。メタ認知トレーニングに役立つ主な手法は以下のとおりです。

  • マインドフルネス:瞑想を指し、背筋を伸ばし呼吸に集中する手法
  • セルフモニタリング:現在の状況や思考・気分、行動など自分を観察すること。自分が今どんな状況でどんな気持ちなのか理解できれば、客観的に自分を見ていける
  • ライティングセラピー:紙に悩みや負の感情を書き出すこと。自分の心のなかにあるネガティブな感情を紙に書き出すことで自分の気持ちを客観的に理解でき、精神的な安定にもつながる

ひとりでメタ認知トレーニングをするだけでなく、社内でメタ認知にかかわる研修を行うことも効果的です。

さまざまな人と交流する

ひとりで仕事をしたり、同じコミュニティーのなかで過ごしたりする時間が長くなれば、考え方が固まってしまう可能性があります。さまざまな人との交流は、ダニングクルーガー効果の対策につながるでしょう。

何年も同じ部署で働いていると、自分の考え方を見直す機会がなく、自己評価だけが高くなるかもしれません。世代や役職にかかわらず自分と異なる考えの人と話す機会を持つこともダニングクルーガー効果の対策につながります。

社内でできる対策として部署異動が効果的です。部署異動によって、さまざまな人との交流につながります。社外でさまざまな人と交流するなら、業界内でのコミュニティーやセミナー、外部研修や異業種交流会などに参加するのもよいでしょう。

定期的にフィードバックを受ける

定期的にフィードバックを受けることで自分の評価を理解でき、自分の考えが固まっていると気づけるため、ダニングクルーガー効果への対策になります。他人からの評価を受けつけられないと、ダニングクルーガー効果に陥ることがあるからです。

しかし、自分を成長させ、スキルアップするには他人からの適切な評価を受けとめ、課題を改善することが求められます。また上司から部下へフィードバックを行う際には自分で考える癖ができるように仕向けることが大切です。「なぜそう考えたのか」と部下に疑問を投げかけ、部下自身で考えるようになれば、客観的な視点が身についていくでしょう。

ただし社内の評価制度や実施ルールを見直し、フィードバックできる環境をつくることも重要です。評価を行う際、上司と部下が必ず面談するルールをつくると、業績結果や部下の仕事ぶりをフィードバックでき、ダニングクルーガー効果の改善につながります。

目標や成果を数値化する

仕事上の目標や成果を数字で示すと客観的な評価となるため、ダニングクルーガー効果への対策となります。周囲の評価と自己評価の差が縮まり、自己評価だけが高くなることを避けられるでしょう。たとえば営業職の場合、新規顧客への訪問数を目標に設定すると「達成」か「未達成」なのか誰の目にも一目瞭然です。数値が自己評価と周囲からの評価判断基準となるため、ズレも生じにくいでしょう。

数値化は営業のような部署だけではなくバックオフィスでも可能です。たとえば人事部門であれば「採用コストを前年より10%削減する」ことや「社員の研修満足度を80%にする」などが考えられます。仕事の目標や成果を数値で示すことは、あらゆる部署で必要です。客観的な目標や成果を掲げることで、ダニングクルーガー効果の改善となるでしょう。

メタ認知能力を鍛える研修には『manebi eラーニング』の活用がおすすめ

ダニングクルーガー効果とは、実際の能力よりも自己評価が高いこと。自己評価が高すぎると社内の人間関係がうまくいかず業務に支障を来すかもしれません。またダニングクルーガー効果は、誰でも陥る可能性があるため、適切な対策が求められます。

ダニングクルーガー効果の対策として挙げられるのは、自分を客観視できるメタ認知にかかわる研修を行うこと。メタ認知にかかわる研修を行うなら、時間や場所を選ばずに実施できるオンライン研修がおすすめです。メタ認知を鍛える研修をオンラインで実施するなら、manebi eラーニングを利用してみてください。オンライン研修で学んだ内容をeラーニングでいつでも復習できるため、学習の効果アップが期待できます。

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