階層別研修とは?意味や目的・カリキュラム例やポイントを解説

  • 階層別研修

2024年6月20日(木)

目次

人材育成は企業経営上の重要な課題であり、そのためには社員教育が不可欠です。しかし、ビジネススキル、知識、心構え、メンタルヘルスなど、さまざまなテーマの研修を思いつきで実施したところで、企業が求める人材に育てるのは難しいでしょう。

そこで社員教育をより効果的なものにするために多くの企業で導入されているのが「階層別での研修の実施」です。本稿では、これから階層別研修を検討している担当者のために知っておくべき基本知識と効果的に実施するポイントなどを解説します。

階層別研修とは 

企業が必要とする人材を育成するためには、経営理念・経営戦略を踏まえ、計画的・系統的なOJTによる人材育成が重要になります。効果的な人材育成方法として考えられるのが階層別研修です。

階層別研修とは、役職や勤続年数などで社員をわけ、階層ごとに異なる教育プログラムを実施する研修のこと。

階層別研修の実施により、各社員の知識・スキルの向上やモチベーションアップだけでなく、組織全体の業務レベルの向上も期待できるでしょう。そのため階層別研修は、底上げ教育と呼称されるケースもあります。

具体的な階層の種類は企業によって異なるものの、主に「新人・若手社員」「中堅社員」「リーダー」「管理職」などでわけるのが一般的です。

日本では広く普及していた職能資格制度のもとで階層別研修が行われてきた事情があり、同一労働同一賃金の職務給制度、ジョブ型雇用の導入企業が増えているなか、階層別で研修をする必要がないとする考え方もあるようです。

しかし、職務の線引きが難しい日本では、純然たる職務というより役割に着目した括りのほうが適切といえます。その意味ではより上位の役割に向けた階層別での研修実施が、効率的な人材育成方法として今後も重要となるでしょう。

階層別研修の実施目的

階層別研修を実施する主な目的として、知識・スキルの習得、期待する役割の伝達、人材育成の効率化・コストの最適化の3つがあります。それぞれ解説するので参考にしてください。

階層別に必要な知識・スキルを習得させる

企業が社員に期待するスキルは、年次や役職に応じて多様化します。

職業内訓練(OJT)や全体研修だけでは社員のスムーズな成長が難しいため、階層別研修によって最適な知識・スキルを習得させることが重要です。その結果、各社員に短期間でパフォーマンスを最大化する効果が期待できます。

たとえば、下記のようなものがテーマとして設定されます。

  • 新人・若手社員:基本的な業務知識や専門知識
  • 中堅社員:詳しい専門知識やトレンドの理解
  • リーダー・管理職:ナレッジマネジメント(業務の平準化)

各階層の社員がスムーズに知識・スキルを習得すると、次の階層へのステップアップも実現しやすくなるため、会社全体のレベルアップが期待できます。

会社が社員に期待している役割を階層別に伝える

会社が期待する役割は各階層ごとに異なります。階層別研修の実施により、スムーズに役割を伝えられるようになります。たとえば、下記のとおりです。

  • 新人社員:「失敗しても前向きに業務に取り組む」
  • 若手社員:「日常業務を一人でスムーズに対応する」
  • 中堅社員:「他部署との交渉役」
  • リーダーや管理職:「適切なマネジメントを実施する」

人材育成の効率化・コストの最適化

通常、全体研修よりも階層別研修のほうが高品質といえます。階層の区分により、各社員が必要とするタイミングで必要な知識の習得が可能になるため、人材育成も効率化するでしょう。

また、適切な人材育成の実施は、結果的にコストの最適化や削減につながる可能性もあります。

階層別研修のカリキュラム内容

ここでは階層別研修のカリキュラム内容を解説します。新人・若手社員、中堅社員、リーダー、管理職にわけて説明するので参考にしてください。

新人・若手社員

新人・若手社員向けの研修は、主に社員としての基本を身につけるために実施されます。以下のようなカリキュラムがメインです。

  • あいさつや電話対応といった基本的なビジネスマナー
  • メールや報告書などビジネス文書の書き方
  • 仕事の進め方の基本
  • 自社の理念やビジョンの理解
  • 社内ルールや行動指針の理解
  • 一般的なチームワークスキル
  • 基礎的なコミュニケーションスキル
  • 報告、連絡、相談(職場のホウレンソウ)の流れの確認
  • 自社ツールの操作といったオペレーションの理解
  • ロジカルシンキングの基礎

なお、新入社員研修に先行して、入社前の採用内定者を対象に実施される内定者研修もあります。社会人としての常識・心構えや基礎知識がテーマであり、実施方法もテキストや動画によるオンライン研修など多様です。

中堅社員

中堅社員は業務遂行の中心的立場です。主に課題の発見・改善や、管理能力を身につけるために研修が実施されます。以下のようなカリキュラムがメインです。

  • 専門的な業務知識の強化
  • 最新技術の習得
  • プロジェクト管理スキル
  • 社内外で通用する折衝力、交渉力
  • セルフマネジメントスキル
  • アンガーマネジメントスキル
  • リーダーシップスキル
  • 説得力を高めるプレゼンテーションスキル
  • 後輩指導のためのコミュニケーションスキル
  • 問題解決力の養成

このように中堅社員向けの研修では、新人・若手社員よりも高度なテーマが設定されるのが一般的です。

リーダー研修

課長のようなリーダー職は、これまで培った経験や能力を生かし、部下を指導・育成することによって目標を達成させる指導力が求められます。そのために必要なカリキュラムとして以下があるでしょう。

  • 部下を巻き込む会議の進め方の習得
  • 自律的なチーム体制の構築
  • 組織内の知識、マニュアルの標準化
  • フォローシップスキル
  • 高度な意思決定スキル
  • 戦略的思考力の強化
  • マネジメントスキルの強化
  • リーダーシップスキルの強化

このようにリーダー研修では、部門・部署を率いるリーダーとしてふさわしいテーマが設定されるのが一般的です。

管理職研修

経営幹部の役割として、意思決定のための情報収集や経営に対する提言・提案力が必要です。よって研修によって組織の方向性と価値観の共有、組織の将来像、経済指標などを研鑽する必要があります。以下のようなカリキュラムがメインになるでしょう。

  • 組織全体を対象にしたリーダーシップスキル
  • 組織全体をマネジメントするスキル
  • 専門的なリスクマネジメントスキル
  • 持続可能な企業活動を計画するスキル
  • 高度な経営戦略の立案力
  • 組織文化を形成するスキル
  • 社員の能力開発と人材育成力
  • ナレッジマネジメントスキルの強化

管理職研修では、組織全体を対象にしたスキルや知識の習得がメインになるでしょう。

階層別研修のメリット

階層別研修の主なメリットには以下があります。

  1. 人材育成効果の最大化
  2. ノウハウ・経験や悩みの共有
  3. 目的意識の醸成
  4. キャリアパスのイメージ
  5. モチベーション向上

人材育成効果の最大化

人材育成の目的に「社員一人ひとりの生産性の向上」があり、階層別研修は育成効果を最大化します。全体研修のような画一的な内容ではなく各階層ごとに求められる知識・スキルをスムーズに習得できるからです。

個々の社員のパフォーマンスが上がることにより、組織全体の底上げ効果も期待できます。

階層ごとにノウハウ・経験や悩みを共有できる

階層別研修の実施は、同じ階層の社員同士の交流を促進します。悩みの共有や課題解決のノウハウ・経験を伝え合うだけでなく、お互いの意識を高め合う効果も期待できるでしょう。

その結果、各社員がスキルアップできるだけでなく、組織全体のスキルレベルの向上も見込めます。

階層別の目的意識の醸成

階層別研修を受講した社員は、自分が置かれている立場をスムーズに理解できます。「自分が期待されている役割には何があるのか」を客観的に把握すると、目的意識が向上するからです。

また、会社がスムーズに機能するには、各階層に属する社員が「どのような理由で各階層が設定されているのか」を正確に理解する必要があります。

階層別研修の実施により、各社員は自身の役割を正しく理解できるでしょう。組織全体の方向性が定まれば、企業全体の生産性も向上します。

社員がキャリアパスをイメージしやすい

社員に階層別研修の体系図を示すと、次のステップや、これから身につけるべきスキル・知識を可視化できます。昇進後に参加可能な階層別研修も理解できるため、社員は自身のキャリアパスのイメージが容易です。結果的にキャリア形成の後押しにつながります。

社員のモチベーションを高める

役割の明確化、目的意識の醸成、階層ごとの悩みや知識・ノウハウのシェアをとおして、社員は働くモチベーションが向上します。組織への貢献を感じたり、社員同士が刺激を与え合ったりという効果が期待できるからです。

階層別研修のデメリット

階層別研修にはメリットがある一方、「形骸化しやすい」「社員のスケジュール調整が難しい」というデメリットもあります。それぞれ解説するので参考にしてください。

形骸化しやすい

ありがちな研修テーマのままアップロードされていなければ、階層別研修を実施しても効果は限定的です。研修への参加がルーティン化している場合も高い成果は望めません。形骸化を防止するには、研修テーマの定期的なブラッシュアップだけでなく、組織全体で目的を共有することが大切です。

「なぜ階層別研修が必要なのか」を経営幹部から管理職、管理職から新人・若手社員へと伝えることにより、意識の変化が期待できます。その結果、研修に意欲的な参加者が増えるため、マンネリ化を防げるでしょう。

社員のスケジュール調整が難しい

基本的に全社員が対象になるだけでなく、階層ごとに研修場所を確保する必要があるからです。とくに社員数が多い企業の場合、スケジュール調整に時間がかかります。

対面での階層別研修がスケジュール的に難しい場合、オンライン研修も検討してください。オンライン研修であれば、各社員は空いた時間に視聴できますし、繰り返し視聴することで深い理解につながります。

階層別研修の実施方法

階層別での研修実施は、さまざまな形式で実施されています。そのいくつかの実施方式の特徴について紹介します。

  1. 集合型研修
  2. オンライン研修
  3. eラーニング

①集合型研修

業務を離れて受講者を会場に集め、対面式で実施します。研修会社が主催する外部研修と、研修会社などから専門家を派遣してもらう派遣型の研修があります。

いずれも会場が必要であること、受講者がそこに集まることが不可欠です。そのため会場費、交通費のほか、テキストも必要になります。一方ディスカッションやワークショップが可能といった対面ならではの良さもあります。

②オンライン研修

ICT(情報通信技術)であるZoom、TeamsなどのWeb会議ツールを活用し、主にパソコンを使用して遠隔で非対面で実施します。学習者が自宅で受ける場合、会場が不要であり、交通費も発生しませんし、テキストもダウンロード可能です。

サービスによっては、ディスカッションやワークショップなどの参加型プログラムが用意されているため、非対面型のデメリットも軽減できます。

③eラーニング

eラーニングもICTを使った研修の実施形式です。一般的に、研修会社が録画した動画を配信サーバにアップロードし、受講生が都合のよい時間に視聴します。時間と場所を問わず学習できる、繰り返し学習できる、学習者の学習状況を管理できるなどが大きな特徴です。

会場や交通費が不要、テキストがダウンロードできる点はオンライン講座と同じでしょう。しかし非対面型であるため、ディスカッションやワークショップなどができない点はデメリットといえます。

階層別研修を効果的に実施する3つのポイント

階層別研修の実施に際して重要なポイントがいくつかあります。ここでは3つのポイントをご紹介します。

  1. 経営理念・経営戦略を踏まえた計画的・系統的な人材育成計画を策定する
  2. キャリア形成への意識を高める
  3. PDCAサイクルを回す

経営理念・経営戦略を踏まえた計画的・系統的な人材育成計画を策定する

経営理念・経営戦略は、企業によって異なるもの。収益を最優先させるのか、社員の結束を優先させるのかなどによっても要求されるテーマは違ってくるからです。

また、従来型の評価制度では、新入社員から中堅社員までの階層が下位の社員については情意考課のウェイトが高く、業績考課のウェイトは低い傾向にありましたが、最近では変化しつつあります。

企業によっては、経営理念を策定しながらも社員への浸透がおざなりになっているケースも少なくありません。階層別研修を実施する際は、現在の経営理念・経営戦略点を踏まえた人材育成計画になるよう徹底することが必要です。

キャリア形成への意識を高める

階層別研修は、受講した社員のキャリア形成に対する意識を高めなくてはなりません。結果的にそれが、将来にわたる事業拡大につながるからです。

そのためにはキャリア形成の計画を作ることを会社が支援し、階層別に期待する役割、スキルなどを明確化する必要があります階層別研修によって、社員が目標に向かってステップアップできる仕組みを作ることが重要です。

PDCAサイクルを回す

研修はやりっぱなしでは意味がありません。Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)というPDCAサイクルを回すことが不可欠です。

研修実施後は、Checkとして受講者アンケートの実施・集計・分析、講師・プログラムの評価、受講生の職場での効果測定、研修目的の検証と反省事項の洗い出し、フォロー研修の検討、研修報告書の提出などを実施し、その後Actionで、プログラム含めた各種改善点の検証をし、研修をブラッシュアップしていきます。

階層別研修のよくある質問

ここでは、階層別研修のよくある質問を2つ紹介します。

階層別研修の体系図の作り方は?

階層別研修の体系図とは、階層ごとに求める人材のイメージを整理した図のこと。体系図の作成によって各階層の役割、目標、研修内容などを可視化できます。体系図の作り方に明確なルールはないため、自由なフォーマットで表現可能です。

体系図の定義・意義、作成のポイントに関しては、以下の記事をご覧ください。

階層別研修の効果を最大化するには?実施方法や体系図作成のポイントを解説

テーマ別研修と階層別研修の違いは?

テーマ別研修とは、課題解決やスキルアップのような特定のテーマにもとづいた研修です。不定期開催が基本であり、参加する社員の共通理解という目的があります。

階層別研修が「社員の立場」からスタートする一方、テーマ別研修は「企業が準備したテーマ」がスタート地点です。階層別研修が階層ごとに社員をわけるのに対し、テーマ別研修は階層を設定しないのも違いといえます。

階層別研修にオススメのeラーニングは「manebi eラーニング

階層別研修とは、設定した階層ごとに社員をわけて実施する研修のこと。主な目的として、知識・スキルの習得、期待する役割の伝達、人材育成の効率化などがあります。

階層別研修を実施すると、人材育成効果の最大化、各社員の情報共有と目的意識の醸成などのメリットが期待できるでしょう。ただし、研修内容が形骸化しやすかったり、社員のスケジュール調整が難しかったりする点には注意が必要です。

以上、階層別研修の基本知識と効果的に実施するポイントなどを解説しました。

従来、伝統的な対面式の集合教育が主流だったものの、今後は非対面型のオンライン研修やeラーニングが取って代わる可能性もあります。階層別研修を実施する際、あわせてそのメリットについても考える価値はあるでしょう。効果的な階層別研修をオンラインやeラーニングで行うなら、「manebi eラーニング」がオススメです。

manebi eラーニング」には、5,000を超える階層に必要なカテゴリーごとに充実した研修コンテンツがあり、学習者が自主的に取り組めるような学習のゴールとステップを可視化したコースマップ機能も搭載され、eラーニングと専門講師によるオンライン集合研修の組み合わせも可能となっています。

詳しいサービス資料やオンライン研修、eラーニングシステムの活用に関するご相談など、お気軽にお問い合わせください。

>>「manebi eラーニング」資料ダウンロードはこちらから

で成果に繋がる
社員研修を実現しませんか?

playse管理画面