挨拶はビジネスの基本マナーです。このため新入社員研修のなかで丁寧な挨拶指導を行っている企業は多くあります。現在、新入社員の挨拶に課題を感じており、効果的な研修を盛り込みたいと検討している担当者の方もいるのではないでしょうか。
そこで今回は、新入社員研修で行う挨拶指導について以下の内容を解説します。
- 新入社員が職場での挨拶を苦手と感じる理由
- 新入社員研修での挨拶指導の重要性
- 挨拶指導の方法、ポイント
自社の研修を検討する際の参考にしてください。
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資料をダウンロードする新入社員が職場での挨拶を苦手とする理由とは?
新入社員の挨拶に課題を持っている企業は少なくありません。その背景には、挨拶に対するジェネレーションギャップや対面コミュニケーション機会の減少、不十分な研修などの原因があるからです。それぞれについて具体例を交えながら解説します。
挨拶の必要性を理解していない
人事担当者のなかには「挨拶の必要性を改めて説明するまでもない」と考えている方もいるかもしれません。しかし、挨拶が必要ないと思っている新入社員は意外に多いと考えておいたほうがよいでしょう。たとえば「挨拶すると相手の邪魔になるだけ」「仕事ができていれば、挨拶は不要」といった考え方をする人がいます。
また「友だちでもないのに挨拶するのは不自然」「挨拶を強要してくるような職場の雰囲気が嫌だ」などと考える若年層の「挨拶不要論」はSNSのトレンドになりました。もちろん挨拶は社会の常識だとは知っているため、最低限の形式的な挨拶をする人は多いでしょう。
しかし挨拶の必要性が腑に落ちていないため、相手から好印象を受ける挨拶や、コミュニケーションの入り口となるような挨拶ができない人も少なくありません。
目上の人とのコミュニケーションに苦手意識がある
現代社会では、メールやSNS、LINEのメッセージといった非対面のコミュニケーションが増えました。また、親戚づき合いや近所づき合いなどが減り、年上の人と会話する機会も減っています。そのため社会人になって目上の人と出会ったとき、どのように挨拶してよいのかわからない社員が増えているのです。
年上の人との接触経験が多ければ、かしこまって挨拶するべきか、それともオープンな態度で挨拶するべきか、などが自然にわかるもの。しかし、目上の人とのコミュニケーション経験に乏しい新入社員は、適切な距離感や振る舞いがよくわからないのです。
こうした状況を考えると、「常識的にわかるだろう」と新入社員に任せてしまうのはリスクが高くなります。新入社員を迎えるにあたって、目上の人への挨拶を教えることが必要です。
職場での挨拶の仕方がわからない
挨拶の必要性は理解していたとしても、どのような挨拶が適切なのかわからない新入社員は少なくありません。この場合、大きく2パターンにわけられます。ひとつはマナーとして挨拶の仕方がわからないケースです。たとえば、同僚との挨拶や上司に対する挨拶、顧客に対する挨拶などの違いがわかりません。
また会釈・目礼、中礼(一般的なお辞儀)、最敬礼などの使いわけがわからない人もいます。この場合は、研修でマナーをしっかり教えることが大切です。もうひとつは、職場の暗黙のマナーがわからないケースです。たとえば、フラットな組織を大切にする企業では、堅苦しい挨拶を避けるかもしれません。逆に、上下関係を重んじる職場では、きっちりした挨拶がよいとされるでしょう。
こうした暗黙のルールは新入社員にとっては理解しにくく、挨拶する際のハードルになります。研修時に自社の社風やスタイルを伝えておいたほうがよいでしょう。
新入社員研修で行う挨拶指導の重要性
新入社員研修で挨拶を指導する際は、なぜ挨拶がビジネスの基本なのか、人事担当者自らが理解しておく必要があります。ここでは挨拶の重要性について改めて確認していきましょう。
会社や職場の印象をよくする
挨拶には、社外の人に対して会社や職場、社員の印象をよくする力があります。なぜなら最初の一言となる挨拶は、顧客や取引先の印象を大きく左右するからです。気持ちのよい挨拶の延長上に質の高い接客や営業などがあるため、挨拶は非常に重要な役割を果たします。したがって、入社直後の新入社員への挨拶指導は、将来会社の看板を背負って活躍する社員を受け入れ、育てる第一歩といえるでしょう。
実際、サービス業や小売業などでは時間をかけて挨拶の研修を行い、その後も継続的に挨拶をチェックしている企業も多くあります。店舗・事業所単位で挨拶の好感度を毎月モニター調査して、状況をチェックしているところもめずらしくありません。
コミュニケーションを深める
社内のコミュニケーションを深めるときにも、挨拶は重要な役割を果たします。挨拶は人間関係の潤滑油といわれるように、コミュニケーションの入り口となり、報告・連絡・相談をスムーズにしてくれるからです。また、意見が対立するときも多いディスカッションやミーティングなどにおいても、はじめの挨拶が気持ちよくできていれば、互いを尊重し合いながら進めやすくなるでしょう。
挨拶には心をオープンにしてくれる作用があります。背筋を伸ばし、相手の目を見て笑顔で挨拶すれば、自然とポジティブな気持ちになるものです。
また、よく知らない人同士でも、親しみがわいて雰囲気がよくなるでしょう。職場のコミュニケーションの活性化を目的に、新入社員歓迎会や社内交流ランチなど、いろいろな試みをする企業が増えてきました。しかしこうした施策は、社員がコミュニケーションの第一歩である、気持ちのよい挨拶をできることが大前提です。特に新入社員の人たちには、挨拶の大切さをしっかり教えておきましょう。
新入社員に指導する挨拶の方法5つ
ここからは、新入社員に挨拶の仕方を指導するときのポイントを具体的に紹介します。わざわざ挨拶を教える必要はないと考える人もいるでしょう。しかし新入社員に対しては手取り足取り教える姿勢が重要です。
正しい姿勢と視線を意識する
はじめに正しい姿勢と目線を教えましょう。挨拶の際は背筋をまっすぐに伸ばして相手に対して正面を向き、目を合わせてからお辞儀するのがマナーです。社外の人や目上の人に対しては、よりフォーマルな挨拶を心がけます。挨拶の際に座っていたら立ち上がり、相手に対して正面を向くことが大切です。会釈や目礼は15度、中礼(一般的なお辞儀)は30度、最敬礼は45度を目安にお辞儀します。
日本では「語先後礼(ごせんごれい)」が基本です。「おはようございます」「はじめまして」などの挨拶に続いてお辞儀をします。日本人以外への挨拶の場合は、それぞれの文化に従ってください。
笑顔を心がける
無表情で挨拶をしても、相手にとって気持ちのよいものではありません。謝罪の場を除き挨拶の際は笑顔を心がけましょう。笑顔を教えるというとメンタル面の指導をイメージするかもしれません。一方で挨拶はそれほど複雑ではありません。口角の上げ方や目元のやわらかさをチェックして指導したり、新入社員同士で確認し合ったりさせたりするとよいでしょう。
また、表情筋を鍛える方法を教えるのも効果的です。以下、トレーニングの一例を示します。
- 上の歯で下唇をかんで口角を上げ、上の歯が8本みえる状態をつくる
- ほおの筋肉が動いているのを意識しながら、5秒キープ
- 真顔の状態に戻す
- 口をすぼめて「お」の口をつくり、ほおと鼻の筋肉が伸びていることを意識しながら10秒キープ
何度か繰り返すと笑顔の筋肉が鍛えられます。
やや高めの声を意識する
挨拶の声は普段より少し高い声を意識しましょう。声が明るく聞こえて、相手に与える印象がよくなるのです。普段の音が「ド」としたら、「ファ」「ソ」あたりに上げるのが目安とされています。特に電話は声が低く聴こえやすいため、高い声を意識させてください。
トーンがうまく上がらない場合は、あくびのときのような喉の開きを意識させてみましょう。また、腹式呼吸でおなかから声を出すように指導するのもポイントです。
挨拶に一言添える
挨拶だけではそっけなくなってしまう場面もあります。挨拶以外に短いフレーズを添える方法も教えておきましょう。以下は例文です。
- 「はじめまして」+「お会いできてうれしいです」
- 「おはようございます」+「本日はどうぞよろしくお願いします」
- 「こんにちは」+「今日は暑いですね」
- 「○○さん」+「おはようございます」
- 「お疲れさまでした」+「今日は手伝ってくれてありがとう」
- 「お世話になります」+「お忙しいところ申し訳ありません」
短いフレーズを添えるだけで、形式的な感じがやわらぎます。次の会話に移りやすくなるでしょう。また気持ちを示すため、相手からの印象がよくなります。
はっきりと発音しゆっくりと話す
早口で挨拶すると相手が聞く準備ができておらず、聞き逃されてしまう可能性も高くなります。言い方によっては、「コンチワ(こんにちは)」「ウッス(おはようございます)」「アザース(ありがとうございます)」といった雑な言い方に聞こえて、印象を悪くしてしまうかもしれません。
社会人としては相手が聞きやすいスピードを心がけたほうがよいでしょう。また、はっきりとした発音も大切です。新入社員研修後に接客業や営業に就くような場合、滑舌トレーニングを行っているところもあります。
新入社員に挨拶を指導する際に重要なポイント
先ほどは主に挨拶の「型」について解説しました。ここでは、挨拶に重要な心構えについて紹介します。
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資料をダウンロードする自分から挨拶する必要性を伝える
挨拶は相手からの挨拶を待つのではなく、自分からする姿勢が大切です。「挨拶されたら返す」といった受け身の姿勢では、声を交わす人が増えません。それどころか「積極性がない」「嫌々、挨拶している」などと周りから思われてしまい、人間関係が悪くなってしまう可能性もあります。
また「自分より後輩、年下の新入社員は、自分から挨拶して当たり前」と考える人も少なからずいます。もちろん、顧客や取引相手のなかにも同じように考える人は多いでしょう。こうした考え方が正しいかどうかは別にして、挨拶をコミュニケーションツールと考えたとき、相手から礼儀知らずと思われてしまうのは得策ではありません。つねに自分から挨拶するくらいの意気込みで取り組むよう伝えるとよいでしょう。
指導者が率先して挨拶を行う
新入社員研修においては、必要な知識と方法を伝えるのが効率的です。しかし、その後の指導としては上司や先輩社員が手本となる挨拶を示していく必要があります。「学ぶ」は「まねぶ(真似る)」という言葉が由来です。上司や先輩社員が見本を見せることで、新入社員は「このシチュエーションでは、こういう挨拶が適切なのか」「このフレーズは他でも使えそうだ」などと真似をしながら育っていきます。
反対に挨拶をなおざりにしていれば、「面倒なときは挨拶しなくてよい」「嫌いな人には挨拶しなくていい」などと勘違いしてしまいかねません。このため人事担当者は、マネジメント層や指導役になる社員に対して挨拶の重要性を伝えたり必要に応じて研修を実施したりします。
新入社員への挨拶で指導者が意識する点
挨拶を指導する際、「挨拶くらい誰でもできるだろう」「一度教えたら大丈夫だ」と軽く考えると成果に結びつきません。ここでは挨拶指導を計画する際に意識しておきたいポイントを解説します。
丁寧な指導を心がける
新入社員研修に挨拶指導を組み込む際は「数十分もあれば十分」などと考えて軽視する企業もあります。しかし、気持ちのよい挨拶ができる新入社員に育てれば、人間関係がよくなって仕事を教えてもらいやすくなります。その結果、戦力に育つまでの期間を短縮できますし、早期離職のリスクも減るでしょう。
こうした影響を考えると、先に説明してきたような挨拶指導に丁寧に取り組むことは決して時間の無駄ではありません。社会人としての基盤づくりという長期的な視点で、研修内容を検討してみてはいかがでしょうか。
会社全体を巻き込む意識を持つ
新入社員研修で人事担当者や講師が一通りの内容を丁寧に教えれば、短時間で社会人としての挨拶ができるようになるでしょう。しかし、一度教えただけで、今後も気持ちの良い挨拶ができるわけではありません。現実的には、教えた内容を忘れてしまったり、実践しなくなったりする新入社員も多いでしょう。
したがって、研修担当者だけでなく、配属先の上司やメンバーを巻き込む意識が必要です。先に述べたように上司、先輩社員にも挨拶を心がけてもらい、日々の仕事のなかでビジネスシーンに合った挨拶の手本を見せられる職場にしていきます。実際、組織改革として挨拶運動を実践している例はめずらしくありません。
たとえば、松下幸之助は「挨拶ひとつしないようなことでは、サービスにならん」として、笑顔の挨拶を徹底させたといいます。また、無印良品は、愛社精神に乏しい社風を変える一環として、挨拶運動をはじめました。
新入社員への挨拶指導を怠った場合のリスクを理解しておく
新入社員の早期離職に悩む企業は多くあります。このような場合は、挨拶指導に問題があるのかもしれません。挨拶ができない新入社員は人間関係が悪くなりがちです。挨拶もしないような新入社員には声をかけにくいでしょうし、快く仕事を教えようとも思いません。結果として周りの協力、サポートも得られず、失敗を恐れて主体的に行動できない社員になってしまう可能性も高いです。
職場に溶け込めるかどうかは挨拶次第とまではいえません。一方で早期離職や職場での孤立など無用なリスクは減らしたいところです。正しい挨拶を身につけてもらうための研修と、組織体制を整えておきましょう。
挨拶指導を新入社員研修にも取り入れよう
職場での挨拶を苦手とする新入社員が増えるなか、挨拶指導の重要性が改めて認識されています。新入社員研修における挨拶指導に力を入れておくと、職場での人間関係が良好となり、早期離職の予防や戦力化までの時間短縮などの効果を期待できるでしょう。
「manebi eラーニング」は、リーズナブルな導入費用で新入社員研修を実施できるため、指導担当者の負担を軽減できます。これにより、対面で指導したい挨拶研修などに時間を割けるようになるでしょう。目的に合わせてさまざまな研修内容が用意されていますので、ぜひご活用ください。
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