早期離職の理由とは?企業に与える問題点や防ぐための具体策を解説

  • 人材育成

2024年7月12日(金)

目次

昨今、さまざまな企業で問題となっているのが早期離職です。厚生労働省の直近の調査では、「新卒(大卒)のおよそ3人に1人が3年以内に退職している」というデータもあります。終身雇用の前提も揺らぎつつあるなか、早期離職の対策を考えている担当者の人も多いのではないでしょうか。

そこで本記事では、早期離職の理由や原因、企業に与える問題点、早期離職を防ぐための具体策などについて詳しく解説します。

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早期離職とは

早期離職とは、入社した社員が早期(3年以内)に離職することで、理由は、仕事内容に関するものや人間関係などさまざまあり、主にミスマッチ対策を効果的にできていないのが原因とされます。

早期離職が繰り返されるのは、企業にとって大きなダメージです。たとえば社員を採用するためにかけたコストが無駄になり、また新しい採用計画を考えなくてはなりません。離職率が高くなると、企業イメージが低下する可能性もあります。

早期離職は大手企業や中小企業にかかわらず、どのような企業にも起こり得る問題です。早期離職の現象が見られる場合はもちろん、目立った兆候がない場合でもミスマッチが起こらないようにするための対策が必須となります。

厚生労働省による早期離職の実態

厚生労働省は、2023年10月に、「新規学卒就職者の離職状況」を公表しています。こちらのデータをもとに、新卒者の3年以内の離職率や、産業別の離職を紹介します。

新卒者の3年以内離職率

厚生労働省の調査によると新卒者の就職後3年以内離職率は以下のとおりです。

  • 大卒者:32.3%
  • 短大等:42.6%
  • 高校卒業者:37.0%

前年比を確認すると、大卒者は0.8ポイント増です。さらに短大等は0.7ポイント、高卒者は1.1ポイント増と、いずれも増加していることがわかります。

かつての日本は「終身雇用」を前提としており、1つの組織で長く働き続けるのがスタンダードでした。

しかし現代では、新卒(大卒)の3人に1人が3年以内に離職するなど、従来の価値観が揺らぎつつあります。「転職のハードルが低くなった」という背景もあり、早期離職の対策は重要です。

※参考:厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和23月卒業者)を公表します」

【産業別】新卒者の早期離職率

新卒者の早期離職率は産業別でも異なります。厚生労働省が公表したデータによれば、新卒者の早期離職率が高い産業は以下の5つです。

高卒者における早期離職率の高い産業

産業早期離職率
宿泊業・飲食サービス業62.6%
生活関連サービス業・娯楽業57.0%
小売業48.3%
教育・学習支援業48.1%
医療・福祉46.4%

大卒者における早期離職率の高い産業

産業早期離職率
宿泊業・飲食サービス業51.4%
生活関連サービス業・娯楽業48.0%
教育・学習支援業46.0%
医療・福祉38.8%
小売業38.5%

「宿泊業・飲食サービス業」の早期離職率は、高卒者・大卒者いずれも50%を超える数値です。産業によって、早期離職率に大きな差があるとわかります。(※)

※参考:厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和2年3月卒業者)を公表します」

早期離職の理由・原因3つ

早期離職の主な理由として「仕事内容」「人間関係」「待遇」の3つが考えられます。前述した離職率データからもわかるように、業種や事業所規模などの要素も大きく関係しているようです。それぞれの理由を詳しく解説します。

仕事が理由のケース

仕事が理由のケースでは、具体的に「自分に仕事内容が合わなかった」「仕事内容がきつすぎる」の2つが考えられます。昨今ではワークライフバランスを重視する風潮もあるため、激務になりやすい業種は注意が必要です。それぞれの理由を詳しく解説します。

自分に仕事内容が合わなかった

仕事が理由のケースとして具体的に挙げられるのは「自分に仕事内容が合わなかった」ことです。入社前に期待していた仕事内容と実際の仕事内容にギャップを感じてモチベーションが低下してしまうなどの場合が考えられます。

中途採用の場合、仕事内容やスキルなど細かい条件のすり合わせがあるため「仕事内容が合わなかった」と感じるケースはそれほど多くありません。

つまり中途採用よりも新卒採用で多く見られる理由です。具体例としては「入社面談での内容と実情が違った」「キャリアアップしたかったのにかんたんな雑用しか任されない(将来性を感じない)」などがあります。

仕事内容がきつすぎる

「仕事内容がきつすぎる」のが理由で転職を考えるケースも少なくありません。たとえば、入社後に無理なノルマや自分の実力に合わない責任を与えられ、ストレスにつながってしまうことがあります。

労働時間・残業時間が長く「仕事がきつい」と感じる場合も。たとえばシステムエンジニアは、納期がある職種です。計画どおりにプロジェクトを完結させるため労働時間・残業時間が長くなることも少なくないでしょう。

そのほかにも「慢性的な人手不足に陥っている」「休日出勤が多すぎる」なども激務につながりやすくなります。

人間関係が理由のケース

早期離職に限らず、離職の原因として挙げられやすいのが「人間関係」です。具体的には「職場の人間関係がよくない」「ほかの社員と良好な関係が築けない」の2点があります。それぞれの理由を詳しく解説します。

職場の人間関係がよくない

まずは「職場の人間関係がよくない」というケースです。職場の人間関係がよくないと、組織内のコミュニケーションが不十分になり、場合によっては仕事の進行に支障をきたすでしょう。チームワークが損なわれ、仕事への満足感もなくなってしまうかもしれません。

職場の人間関係がよくないと、人材の成長にも悪い影響があります。職場で適切な指導や育成が行われない場合、新入社員にとって成長の機会が限られてしまい、次第にモチベーションを失ってしまうかもしれないからです。

もちろん人間関係がよくても離職するケースはあるものの、人間関係が悪い場合、早期離職の確率はより高まるといえるでしょう。

ほかの社員と良好な関係が築けない

「ほかの社員と良好な関係が築けない」のも、早期離職でよく見られる原因です。

たとえば上司や先輩、同僚などとの関係がうまくいかなければ強いストレスを感じることになり、仕事のパフォーマンスに悪影響を与えるかもしれません。上記の状態が継続すれば、その会社で働き続けるのが難しくなり、離職につながる可能性もあるでしょう。

新卒採用・中途採用に限らず、ほかの社員と良好な関係が築けるかどうか、つまり「職場になじめるかどうか」は重要な問題です。採用方法や業種、年代を問わず、広く見られる離職理由といえます。

待遇が理由のケース

待遇がよくないという原因で早期離職につながることも少なくありません。具体的には、「正当に評価されない」「適切な教育制度がない」の2点です。それぞれの理由を詳しく解説します。

正当に評価されない

まずは「正当に評価されない」というケースです。多くの企業では、人事評価制度を設けて社員の成績や実績などを評価し、それにもとづいて給与や昇進を決定します。しかし評価制度が不透明で、個人の努力や成果が適切に反映されない場合、不公平感をもたらすこともあるでしょう。

とくに業績に応じた報酬(給与・ボーナスなど)は、社員にとってのモチベーションを左右する重要な要素です。現在の職場での評価制度や報酬体系に満足できない社員は、より高いモチベーションを持って働くために待遇のよい企業への転職を考えるようになります。

適切な教育制度がない

「適切な教育制度がない」ことも早期離職につながる原因の一つです。とくに新入社員に対する教育やフォローを怠ると、早期離職率が高まる傾向があります。

新入社員は職場の環境に不慣れな状態で仕事の基本的なスキルや知識を学ばなければなりません。適切な教育やフォローがなければ、新入社員は仕事を覚えられないだけでなく、職場そのものにストレスを感じるようになるでしょう。

たとえば「相談しても放置されるものの、自主的に行動を起こすと叱責される」という状態は、新入社員が時折直面する問題です。このような状態にならないよう、組織全体でフォロー体制を整えておく必要があります。

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早期離職が企業に与える4つの問題点

早期離職が企業に与える問題は以下の4点です。

  1. 企業イメージの低下を招く
  2. 採用・育成コスト損失につながる
  3. 社内で離職を繰り返すおそれがある
  4. 優秀なリーダーの育成につながらない

企業イメージの低下を招く

早期離職率が高い企業は、「職場環境があまりよくない」「社員に対して優しくない」などの印象を持たれがちです。

とくに新卒採用の場合、なるべく新卒のカードを無駄にしたくない考えから、学生はイメージの悪い企業を避けるようになります。そのため、学生からのイメージが下がると人材確保が難しくなるかもしれません。

「若者雇用促進法(青少年の雇用の促進等に関する法律)」第13条では、「新卒者などを雇用する際に平均勤続年数や研修の有無など就労実態に関する情報を提供しなければならない」とされています。

直近3年間の離職率も公表する必要があるため、早期離職率が高まっている場合は注意が必要です。

採用・育成コスト損失につながる

早期離職は採用・育成コストの損失につながります。社員を採用し戦力化するには、多くのコストを必要とするからです。たとえば求人広告費や人事部門の人件費、採用プロセスに関するコスト、研修を中心とした育成コストなどがあります。

早期離職者が出ると、採用や育成にかけたコストが回収されず、企業の損失となるでしょう。あらためて採用活動をしなければならないため「再度採用コストが必要なものの、再び早期離職者が出る」といった悪循環も考えられます。

とくに中小企業の場合は、大手企業と比べて採用数が少ないため、早期離職者が1人発生した際のダメージも大きくなるでしょう。

社内で離職を繰り返すおそれがある

社内で離職を繰り返すおそれがあるのも早期離職の問題点です。早期離職者が発生した場合、離職者が担当していた仕事の穴を埋めるために、現場で働く既存社員の負担が増える場合があります。

とくに即戦力として期待されていた社員が早期離職した場合、現場へのしわ寄せも大きいでしょう。

日常的に早期離職が起こる職場では、既存社員の負担が増大し、モチベーションの維持も難しくなります。早期離職者が増えると社内での離職が繰り返され、人材が定着しない環境になる可能性があるため注意が必要です。

優秀なリーダーの育成につながらない

優秀なリーダーの育成につながらないのも早期離職が企業に与える問題です。組織のリーダーになるためには、マネジメントを含めたさまざまな実務経験や、問題解決能力などの実践的なスキルが不可欠です。将

来的にリーダーに育てるために、重要な仕事を与えて計画的な育成をしている企業も多いでしょう。

しかし早期に離職してしまうと、こうした経験やスキルが養われません。時間を かけてリーダーを育てられないため、経験やスキルが不十分な人材がリーダーにならざるを得ない可能性もあります。

【理由別】早期離職を防ぐ3つの改善策

早期離職を防ぐために以下の3つの改善策を考えるとよいでしょう。

  1. 面接時にミスマッチを防ぐ
  2. コミュニケーションを活性させる
  3. 評価制度を見直す

【仕事が理由】面接時にミスマッチを防ぐ

仕事が理由での早期離職を防ぐためには、採用過程で明確な情報提供をし、ミスマッチを防ぐのが重要です。企業説明会や面接時に業務内容の詳細を説明します。実際に何をしているのかを伝え、応募者に具体的なイメージを持ってもらいましょう。

社会人経験が浅い新卒者に対しては、企業説明会や面接時にしっかりと説明することがポイントです。そのほか実際に業務を体験できるインターンシップをとおして、業務内容や企業文化について理解を深めてもらうのもよいでしょう。

労働条件や休暇制度、福利厚生については面接時に明確に伝えるのが重要です。昨今ではワークライフバランスが重視されており、労働環境がどのようになっているかが、働くかどうかの決め手になる場合もあります。

【人間関係が理由】コミュニケーションを活性させる

人間関係が理由の早期離職を防ぐためには、職場におけるコミュニケーションの活性化が欠かせません。具体的には、社員同士の情報交換や、情報共有の機会を増やすのがオススメです。

たとえばチームや部署単位で定期的にミーティングを開催し、業務の進捗や問題点などを共有します。SlackやMicrosoft Teamsなどのツールを活用すれば、遠隔地にいる社員も含めてチーム全体の一体感を高められるでしょう。

業務でのやり取りだけでなく、業務外でのコミュニケーションを促進する環境をつくるのも重要です。

たとえばバーベキューやパーティーなど、業務外での交流を目的とした社内イベントを定期的に開催します。仕事以外の交流が生まれると、自然と職場全体のコミュニケーションも活性化されるでしょう。

【待遇面が理由】評価制度を見直す

待遇面での不満が早期離職の原因となるケースでは、評価制度の見直しや福利厚生の充実が効果的です。上記の改善により、社員のモチベーションを維持しつつ、企業への満足度やエンゲージメントを向上させることが期待できます。

たとえば評価制度の見直しでは、従来の年功序列ではなく、パフォーマンスベースの評価を行います。社員の成果と貢献度にもとづいた評価制度を導入し、若い世代でも活躍度によって評価される環境が整備されれば、モチベーションを保ちやすくなるでしょう。

福利厚生では、リモートワークやフレックスタイム制度の導入、年次有給休暇の取得促進などワークライフバランスを取りやすい環境を整えます。給与やボーナスはもちろん、通勤手当や家賃補助など、各種手当を充実させるのも福利厚生を改善するうえで重要です。

早期離職理由による退職を防ぐ5つの具体策

早期離職理由による退職を防ぐ具体的な施策は、以下の5つです。

  • 1.1on1ミーティングを行う
  • 2.オンボーディングの実施
  • 3.メンター制度の導入
  • 4.パルスサーベイを行う
  • 5.社員研修を実施する

1on1ミーティングを行う

早期離職理由による退職を防ぐ具体策として有効なのが、1on1ミーティングです。

1on1ミーティングは、上司と部下が定期的に1対1で行う面談のことで、通常の業務ミーティングやチームでの打ち合わせと異なり、個々の社員の悩みやキャリア目標などにフォーカスできます。

1on1ミーティングが早期退職の防止に有効な理由は、定期的な対話を通じて、社員が抱える問題や不満の早期発見に役立つからです。社員が自身の仕事や職場に対して価値や意義を感じるようになるなど、エンゲージメント向上のための方法としても使われています。

オンボーディングの実施

早期離職理由による退職を防ぐためには、オンボーディングの実施も有効です。オンボーディングとは、新入社員・中途社員いずれも組織に早くなじみ即戦力となることを目的とした取り組みで、具体的には、入社後に行われるランチ会や歓迎会などです。

OJTやOff-JTと混同される場合もあるものの、2つとオンボーディングは別物です。OJTやOff-JTが「仕事をどのように行うか」にフォーカスするのに対し、オンボーディングは「社員が早く職場になじめるようにする」ことを目的とします。

オンボーディングの実施により、新入社員がスムーズに職場になじむ効果が期待できるでしょう。

メンター制度の導入

メンター制度の導入も早期離職理由による退職を防ぐために有効です。メンター制度とは、新入社員が職場環境にスムーズに適応できるよう、先輩社員などがメンターとしてサポートするための制度です。

エルダー制度と混同される場合があるもののエルダー制度はあくまでも仕事面でのサポートにフォーカスしており、精神面でサポートするメンター制度とは異なります。

メンター制度では、ちょっとした悩みもメンターに相談できるため、新入社員が孤立してしまうことを防ぐのに役立ちます。精神面で安定して仕事ができるようになるため、早期離職防止にもつながりやすくなるでしょう。

パルスサーベイを行う

パルスサーベイを行うのも早期離職理由による退職を防ぐためにオススメです。パルスサーベイとは、社員の満足度やエンゲージメント、メンタルヘルスなど社員の心理状態をリアルタイムに測定する調査方法です。

月に1回程度など比較的短いペースで実施され、オンラインでかんたんに回答できる形式になります。実名でも問題ないものの、社員の本音を重視したい場合は匿名も可能です。

パルスサーベイを活用する主なメリットは、社員が抱えている不満をスムーズに特定し、適切な対策ができることでしょう。改善点があれば早期にフォローできるため、早期離職対策にも役立ちます。

社員研修を実施する

早期離職理由による退職を防ぐために社員研修を実施するのもオススメです。

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たとえば新人研修では、ビジネスコミュニケーションやマナーなど、基礎的な内容を学習できます。適切なタイミングで研修を実施することで、社員の悩みを解決しやすくなり、早期離職の防止にもつながるでしょう。

早期退職の理由を把握し自社に合った研修を実施しよう

早期離職の理由はさまざまですが、「仕事内容」「人間関係」「待遇」の3つに大別されます。上記を軸にして企業に与える問題点を理解しつつ、早期離職を防ぐための対策を考えましょう。

具体策としては、社員研修を実施するのがオススメです。研修をスムーズに進行したいと考えている場合はブレンディッドラーニング(オンライン研修とeラーニングを併用して学習効果を高めること)の活用で研修効果を高められるmanebi eラーニングを検討してみてはいかがでしょう。

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