シェアドリーダーシップとは? 導入に必要なスキルやメリット、活用事例を紹介

  • リーダー研修

2024年10月25日(金)

目次

昨今、すべての社員がリーダーシップを持ち業務に取り組む「シェアド・リーダシップ」が注目されています。なぜなら、人材不足が深刻化するなかで人材育成や生産性向上に大きく貢献するからです。

本記事では、シェアド・リーダーシップの概要や必要なスキル導入のメリット、そして実際の事例を紹介します。人事や研修担当者の方はぜひ参考にしてください。

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シェアド・リーダーシップとは

シェアド・リーダーシップとは、社内のチームや部署などでメンバー全員がリーダーシップを発揮し、リーダーの役割を共有する組織体制を指します。メンバーはそれぞれの得意分野を活かし、ときにはリーダーとして、ときにはサポート役として柔軟に役割を入れ替えながら業務を進めていくのです。これにより、全員がリーダーとしての自覚を持ち、組織全体のパフォーマンスを最大化できます。

従来の「トップダウン型リーダーシップ」では、リーダー一人に大きな負担がかかり、メンバーは指示を待つ姿勢になりがちでした。しかし、シェアドリーダーシップでは、チームメンバーそれぞれがリーダーとなり、適切な判断を下しながら組織全体の目標達成に向けて行動します。

関連するリーダー研修については、「リーダー研修の内容を解説!効果を引き出すポイントとは」を参照ください。

シェアド・リーダーシップと似た用語の違い

人材不足に対応するための組織体制として、シェアド・リーダーシップ以外にも幅広いアプローチが存在します。特に、シェアド・リーダーシップと似た概念として、「サーバントリーダーシップ」と「オーセンティックリーダーシップ」が挙げられます。ここでは、それぞれの特徴とシェアド・リーダーシップとの違いについて解説します。

サーバントリーダーシップとの違い

サーバントリーダーシップは、支援型リーダーシップとも呼ばれ、リーダーがメンバーの成長とスキル向上を支援するサポート役に徹します。

  • シェアド・リーダーシップ:メンバー全員がリーダーシップを発揮し、相互にサポートし合う体制。
  • サーバントリーダーシップ:リーダーがメンバーを支え、彼らの能力を引き出すことにフォーカスする体制。

オーセンティックリーダーシップとの違い

オーセンティックリーダーシップは、他者のリーダーシップを模倣するのではなく、自分自身の価値観や信念にもとづいて組織をリードするスタイルです。サーバントリーダーと同様にリーダーは一人ですが、リーダーがすべてを決めるわけではなく、メンバーそれぞれが主体的に行動し、業務を進めていきます。

メンバーが自律的に行​​動するポイントはシェアド・リーダーシップと共通しています。しかし、シェアド・リーダーシップでは組織全体がリーダーシップを共有し、活動します。

シェアド・リーダーシップに必要な4つのスキル

シェアド・リーダーシップを効果的に導入し、成果を最大化するためには、次の4つのスキルが必要です。

  • コミュニケーションスキル
  • 問題解決力
  • 実行力
  • 意思決定力

以下では、それぞれのスキルがどのようなものか、そしてなぜシェアド・リーダーシップにおいて重要なのかを説明します。

コミュニケーションスキル

リーダーは、業務における課題や目標をメンバーにしっかりと伝え、解決策を引き出す役割を担います。シェアド・リーダーシップでは、すべてのメンバーがリーダーとしての役割を担う可能性があります。よって、日常的にメンバー間で協議なコミュニケーションをとることが大切です。リーダーとなった際には、明確に問題点や目標を伝えるようにすると、チーム全体の業務をスムーズに進められます。

問題解決力

問題が発生した際、リーダーは迅速にその原因を突き止め、適切な対応を行う必要があります。解決までに時間をかけると業務が滞り、企業に重大な影響を与えてしまうでしょう。よって、迅速な問題解決できるスキルはリーダーに欠かせません。

シェアド・リーダーシップでは、メンバー全員が自分の強みを活かし、アイデアを出し合います。それにより、問題解決もよりスムーズになり、チーム全体のパフォーマンスも向上します。

実行力

メンバーが高いモチベーションを維持して業務に取り組むために必要なのは、リーダーが迅速に指示を出し、業務を効率よく進めるための実行力です。指示を忘れるとメンバーのモチベーションが低下し、業務の質が落ちてしまうかもしれません。

シェアド・リーダーシップを導入する際、実行力は特に重要な要素です。各メンバーがリーダーシップを発揮し、迅速に与えられた役割を果たすことが、チーム全体の成果向上につながるためです。

意思決定力

ビジネスシーンでは、状況を把握し、必要な場面で適切かつ迅速な意思決定を行うことがリーダーに求められます。しかし、すべての状況で完璧な判断をするのは難しいもの。シェアド・リーダーシップでは、組織の状況やメンバーの進捗を理解しつつ、各メンバーが意思決定を行う力を発揮することが重要です。意思決定力について学ぶ機会を設けるのもよいでしょう。

シェアド・リーダーシップを活用する4つのメリット

シェアド・リーダーシップを導入・活用することで、以下の4つのメリットがあります。

  • チーム・組織のモチベーション向上
  • 全体的な生産性
  • 人材育成の促進
  • 新たなアイデアの創造

チーム・組織のモチベーション向上につながる

シェアド・リーダーシップでは、メンバー全員がそれぞれの強みを理解し、リーダーシップを発揮しながらサポートし合う体制が築かれます。従来のリーダーが主導し、他のメンバーがサポートする形とは異なり、各メンバーが積極的に役割を果たすことで、モチベーションが向上していくのです。

自分がリーダーとなる場面では、メンバーに自らの意思を伝えて行動を導いていくと、その経験が自律的な活動の喜びにつながるでしょう。これにより、チーム全体が責任感を持って業務に取り組めるようになり、組織全体のモチベーションもアップします。

組織全体の生産性向上が期待できる

シェアド・リーダーシップは、メンバー同士がフォローし合いながら業務を進めるため、組織全体の生産性向上が期待できます。誰がリーダーか、誰がサポートか、役割が明確であるため、問題点の発見や意思決定、そして実行までのプロセスが迅速に行われるからです。このように、意思決定から実行までの時間が短縮されれば、メンバーは高いモチベーションを維持しながら効率よく業務を進められるでしょう。

人材育成に役立つ

シェアド・リーダーシップを取り入れることで、メンバーの育成も加速します。 従来の組織では、リーダーから指示を受ける形が多かったでしょう。シェアド・リーダーシップでは、役職に関係なく状況に応じてリーダーシップを発揮する機会が生まれます。これにより、メンバーは実際の業務的なリーダーシップの役割や責任を学べるうえ、短期間でリーダーとしての資質を得られる可能性が高まるのです。

新たなアイデアの創造

シェアド・リーダーシップでは、全員がリーダーとなる可能性があるため、自発的な行動力が育ちます。さらに、業務における課題や目標を共有することで、メンバー間のコミュニケーションが活発になり、そこから新しいアイデアが生まれるでしょう。

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シェアド・リーダーシップ活用事例

シェアド・リーダーシップの導入は、組織内のコミュニケーションを活性化し、メンバー全員がリーダーシップを発揮することで成果を向上させるアプローチです。ここでは、実際にシェアド・リーダーシップを導入し、業績向上につなげた3つの事例をご紹介します。

事例1 キヤノンマーケティングジャパン株式会社

ある案件に対してプロジェクトを発足し、各部署からメンバーを選出。各メンバーが専門性を活かしてお客様の課題解決にあたりました。これにより、迅速な意思決定とイノベーションが促進された、という事例です。

参考:これからの時代を勝ち抜くために必要な強いチームの条件とは

事例2 株式会社JR東日本テクノハートTESSEI

新幹線の清掃を行うTESSEIは、現場スタッフの意見を尊重し、季節ごとに制服を変更するなど、権限委譲を徹底しました。このアプローチにより、スタッフのやりがいが向上し、サービス品質も改善。シェアド・リーダーシップは適切なリーダーシップがあれば混乱を招かず、全員が高い視座を持てる、と判明したシェアド・リーダーシップの事例です。

参考:自律型組織を育む シェアド・ リーダーシップ:「職場のシェアド・リーダーシップを考える識者の視点」

事例3 株式会社ガイアックス

同社の経営資源として従業員の情熱を重視し、自由で対等な組織文化を育みました。それにより社員は自律し、フリー・フラット・オープンな組織が形成されたのです。 社員は、社会貢献を共通の価値観とし、各自のライフプランを理解して仕事に取り組むことに。従来のようなマネジメントが不要となりました。

参考:自律型組織を育む シェアド・ リーダーシップ:事例2ガイアックス 「ライフプランの共有が自由でフラットな開放型組織を生み出す」

シェアド・リーダーシップを活用する5つのポイント

シェアド・リーダーシップを効果的に活用するポイントは、次の5つです。

  • 経営陣からの理解
  • ビジョンの共有
  • へメンバーの権限移譲
  • 考察と検証の反復
  • 人材・社員研修の実施

それぞれについて詳しく解説します。

経営陣がシェアド・リーダーシップを理解する

シェアド・リーダーシップを社内に浸透させるには、経営陣の理解が必要です。従来の組織では、リーダーシップを発揮して部下を指導するのが基本でした。シェアド・リーダーシップを実現するなら、従来の考え方を変えない限り、難しいといえます。

組織のモチベーション向上、生産性の向上、迅速な人材育成などシェアド・リーダーシップがもたらすメリットについて、経営層が理解する必要があります。

ビジョンを共有し、方向性を一致させる

シェアド・リーダーシップを実現するには、各メンバーが同じビジョンを共有し、同じ方向を目指すことが重要です。メンバーそれぞれが独自の目標を持つ状態では、リーダーシップの発揮がバラバラになり、効果を発揮しません。ビジョンは慎重でわかりやすい言葉で共有し、全員が同じタイミングで理解するよう努めましょう。

メンバーに権限を与える

適切なリーダーとして振る舞えるよう、すべてのメンバーに権限を持たせます。しかし新入社員や若手社員の場合、権限を与えるだけでは効果が出にくい可能性もあります。定期的なフォローや面談といったサポート体制も整えておくとよいでしょう。

考察と検証を繰り返す

シェアド・リーダーシップを確保するには、考察と検証を繰り返し、リーダーシップのスキルを向上させる必要があります。その際、役立つのが下記4つからなるOODAループです。

  • 観察(Observe)
  • 状況判断(Orient)
  • 意思決定(Decide)
  • 実行(Act)

そして、振り返り(Loop)を繰り返して成果を高めていきます。メンバー全員がOODAループを意識して業務を進めていけば、チーム全体の意思決定や実行力も強化されるでしょう。

人材・社員研修の実施

シェアド・リーダーシップを確保させるためには、社員育成的な概念や実践方法を理解させるとよいでしょう。その際、セット研修とeラーニングを組み合わせたブレンディッドラーニング研修が効果的です。

シェアド・リーダーシップを活用するにはオンライン研修がおすすめ

シェアド・リーダーシップを導入するためには、eラーニングやオンライン研修を活用することが効果的です。ただし、いきなりシェアド・リーダーシップを導入しても、社内に定着させるのはかんたんではありません。シェアド・リーダーシップをさらに深く理解するのにおすすめなのが、eラーニングと集合研修の活用です。eラーニングで学んだことを集合研修で実践すれば、より高い研修効果が期待できるでしょう。

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