新入社員研修におけるロールプレイングとは?実施メリット・種類や実践方法を解説

  • 新入社員研修

2023年10月18日(水)

目次

新入社員研修は、新たな社員が企業文化や業務内容を理解し、実際の業務に取り組むための土台を築く大切な時期です。そのなかで、ロールプレイング型研修は、実際の業務場面を想定し、実践的なスキルや知識を身につけるための効果的な手法として注目されています。ロールプレイング型研修について知っておくと、より効果の高い研修につながる可能性もあるでしょう。

本記事では、ロールプレイング型研修の実施メリットや種類、そして実践方法について詳しく解説します。人事担当者や研修の責任者が、新入社員の成長を促進するための参考情報としてお役立てください。

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新入社員研修におけるロールプレイングとは?

「ロールプレイング」は「役割(ロール:role)」と「演じる(プレイ:play)」を組み合わせた言葉です。新入社員研修でのロールプレイングは、配属後の現場や、職場のさまざまな場面で経験するであろう場面を想定して役割を演じ、知識定着やスキルアップを図る研修方式を指します。

たとえば「店員と顧客」「取引先と営業担当者」といった役割を演じてもらい、そのなかで実務の流れや改善すべき課題を見つけてもらって実践力を身につけていくのです。ロールプレイングは「新入社員が自身の業務内容に対する理解を深められる」といったいくつかのメリットにつながります。詳しいメリットについては、次のセクションで見ていきましょう。

新入社員研修でロールプレイング研修を取り入れるメリット

効果的なロールプレイングを実施するためにも、そのメリットを十分に把握しておきましょう。新入社員研修でロールプレイング研修を取り入れることで、期待できる主な4つのメリットを以下に解説します。

業務への理解が深まる

たとえばコールセンター業務のロールプレイングでは、新入社員は実際の電話応対を体験でき、業務の流れや顧客対応の具体的な方法を学べます。このように具体的な業務シーンを体験できるため、マニュアルや座学だけでは理解しきれない業務の実際の流れや難しさを知るきっかけにもなるのです。業務への理解が一層深まるでしょう。

それにより新入社員は、業務が自分に向いているかどうか、判断する材料が得られます。ロールプレイングで苦手意識を感じた新入社員がいれば、実際の業務が始まる前にフォローアップを行うのも可能です。

実践力が高まる

ロールプレイングでは座学だけでは得られない、実際の業務での対応力や即応性を養えます。具体的な業務シーンを想定したロールプレイングを通じて、新入社員は実際の業務に対する抵抗心を和らげ、自信を持って業務に取り組めるようになるでしょう。

また新入社員が自身の課題や成長テーマを明確にする機会になる点も、実践力につながるポイント。具体的な業務シーンを想定したロールプレイングをとおして、新入社員は自身の弱点や改善点を自覚し、それを改善するための具体的・実践的なロードマップを検討できます。

新入社員が自信を持って業務に取り組むには、実際の業務に近い状況での練習が不可欠です。新入社員研修でロールプレイングを取り入れると、その機会を提供できます。

学んだ知識を定着できる

ロールプレイングは学んだ知識を実際の業務に活用する練習の機会になり、その結果「知識の定着」につながります。たとえば新入社員が接客マニュアルを学んだあと、内容を活用する場面についてロールプレイングを行えば、理解度の確認と知識の定着が可能になるでしょう。

さらに新入社員はロールプレイングを通じて、実際の業務でありがちな場面を経験できるのです。よって知識を学ぶだけでなく、「その知識をどのように活用すればよいのか」「どのような場面でその知識が必要となるのか」といった、応用的な知識やスキルの獲得にもつながります。

このように、新入社員研修にロールプレイングを取り入れると、新入社員が研修内容の基礎から応用まで広く理解するサポートができるのです。

自発性を促進できる

新入社員はロールプレイング研修をとおして自分の役割を深く理解し、自発的な行動を学べるのです。

たとえば販売員の業務を想定したロールプレイングでは、新入社員は「どのような対応が販売員として適切か」を自ら考え、その結果を実際の行動に反映させることが求められます。実際の販売シーンで「指示待ち」「マニュアル通り」ではない行動をするための練習になるでしょう。

新入社員研修にロールプレイングを取り入れると、自分で考えながら行動するための練習の機会にできます。

新入社員研修のロールプレイングの形式・場面例

ロールプレイングにはいくつかの種類があります。種類ごとの特徴を把握すれば、研修の目的に合った形式を選べるでしょう。ロールプレイングの形式は以下の5種類です。

  1. ケーススタディ型
  2. グループワーク型
  3. 問題解決型
  4. モデリング型
  5. テーマ特化型

それぞれの特徴や進め方、メリットなどについて、詳しく解説します。

ケーススタディ型ロールプレイング

特定の業務シーンを想定し、その際の振る舞いを練習する形式のロールプレイングです。

たとえばクライアントの業種や立場、抱えている課題などを設定し、それに沿ってロールプレイングを行います。研修後には、挨拶の方法や会話内容、クロージング方法などが適切だったかをフィードバックし、自身の課題を認識してもらいましょう。

ケーススタディ型は、新入社員が業務における具体的なシチュエーションを想像しやすく、自身の行動や判断が業務成果にどのように影響するかを理解するのに有効なロールプレイングです。ケーススタディ型を導入する際は、店舗での接客や取引先とのやりとりなど「業務でよく遭遇するシーン」を設定すると有効でしょう。

グループワーク型ロールプレイング

「グループワーク型」は、参加者がグループにわかれ、それぞれ役割を交代しながら繰り返し行う形式のロールプレイングです。

グループワーク型のロールプレイングでは新入社員としての視点だけでなく、顧客や上司、チームメンバーなど、さまざまな立場の視点を体験できます。これにより、新入社員は新たな視点を発見でき、多角的な対応力を身につけることが期待できるでしょう。

また、グループワーク型ロールプレイングは、コミュニケーションスキルやチームワークの向上にも役立ちます。異なる役割を担当して他者の立場を理解し、それに対応するためのコミュニケーションスキルを磨けるのです。

問題解決型ロールプレイング

「問題解決型」ロールプレイングは、過去に実際に発生した事例や、研修に合わせて設定した問題をテーマにする方式です。

たとえば成功・失注した商談の事例を用いて、成功するための課題解決方法や、問題発生時の対応方法などを多角的な観点から話し合います。話し合いを通じて、新入社員は問題点の発見力や、解決に向けた対応力、思考力などを養えるでしょう。

問題解決型ロールプレイングでは実際の業務に即した内容を扱うため、現場で役立つスキルの強化にもつながるのです。さらに、ほかの参加者との話し合いを通じて、チームワークやコミュニケーションスキルの向上も期待できます。

モデリング型ロールプレイング

「モデリング型」ロールプレイングは、代表者がお手本となるロールプレイングを行い、ほかのメンバーがその模倣をする形式の研修です。

モデリング型は「成功する商談の流れ」や「販売につながる接客のイメージ」など、全員が行動イメージを共有する場面に適しています。「初心者には対応が難しいケースを扱う」「決まった型がある」場合などでも有効です。

モデリング型ロールプレイングは、実際の場面を具体的にイメージしてもらうため講座形式の研修に取り入れられる場合もあります。また個別のロールプレイングを行う前、研修の進め方を説明するためのサンプルとして示される場合もあるのです。

テーマ特化型ロールプレイング

「テーマ特化型」ロールプレイングでは、「特定のテーマを設定し、その状況に応じた役割や設定を決めて研修を行います。

メリットは、身につけてほしい特定のスキルに絞って学べること。基本となる考え方やマインドセットなどの汎用的なスキルではなく、配属先での業務がスタートしてすぐにでも使えるような実践スキルを磨けます。例として「電話対応」と「営業・接客」のテーマ型ロールプレイングについて、以下に紹介しましょう。

電話応対

「電話対応」のテーマに特化したロールプレイングは、基本的なビジネスマナーのうち電話応対のマナーに特化して実践的に学び、定着を促す研修です。ロールプレイングは2人組または3人組で進行し、実際の電話の流れをイメージして練習します。

この際、緊張感を持たせるために、現場を想定した環境作りが重要です。たとえばありがちな受電内容や、架電シーンを考慮した演習問題を作成するとよいでしょう。定番のシーンを取り入れると、新入社員は実際の業務に近い状況での電話応対を体験し、現場ですぐに使えるビジネスマナーを身につけられます。

営業・接客

「営業・接客」のテーマに特化したロールプレイングでは新入社員が営業役と顧客役にわかれて、実際の商談・接客の場面を模擬体験します。実際の商談を一通り体験して、顧客とのコミュニケーションの取り方や、商品やサービスの説明方法を練習する研修です。

この研修では、顧客から悩みや課題を引き出す「ヒアリング」のテクニックや、顧客の不満を収め、信頼関係を保つ「クレーム対応」などのスキルを学べます。実際の商談や接客に近い状況で練習できるため、新入社員が自身の弱点を見つけて改善し、スキルアップしていくきっかけにもなるでしょう。

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新入社員研修でロールプレイングを実施するステップ

新入社員研修でロールプレイングを実施する際は、以下のステップで準備を進めていきましょう。

  1. 目的を明確にする
  2. 役割・場面を細かく設定する
  3. 実践的なシーンを想定する
  4. 具体的な評価・フィードバックを行う

各ステップの進め方について、以下に詳しく解説します。

目的を明確にする

新入社員研修でロールプレイングを実施するための最初のステップは、「目的」を明確にすること。目的が不明確だと、具体的な場面設定やアドバイスが難しくなり、研修の効果が半減しかねません。

「対応力の向上」や特定の「課題の克服」など目的を設定すると、「新入社員が何を学び、どのように成長すべきか」「どのようなテーマを設定すべきか」が明確になります。研修を始める際にも目的を明示すると、新入社員も具体的な行動指針を理解しやすくなり、目的意識を持ってロールプレイングに取り組めるでしょう。

役割・場面を細かく設定する

次にロールプレイングで使用する「役割」と「場面設定」を決めましょう。役割と場面設定はロールプレイングの成功を左右する要素です。曖昧な場面設定では、ロールプレイングの緊張感が損なわれ、研修の効果が半減してしまう可能性もあります。

とくにケース型ロールプレイングでは、具体的な場面設定を決めることが重要です。たとえば営業のロールプレイングでは、参加者を「営業役」と「顧客役」にわけるだけでなく、場面について具体的に設定します。

営業役の場合「商談の回数・会社情報・商談の目標」などを決めておくと、現実の営業シーンを再現しやすくなるでしょう。また、顧客役についても「顧客の業種・ニーズ・購買行動」などを設定することで、よりリアルな商談シーンを作り出せます。

このように役割に応じた詳細な設定を示すと、新入社員はロールプレイングでリアルな体験が可能になるため、より研修の効果を高められるのです。

実践的なシーンを想定する

新入社員が業務の流れを理解するために、スムーズに進行しやすい基本の場面を用意することも有効です。しかし、実際の業務は必ずしもスムーズに進行するわけではなく、予期せぬ問題が発生することも少なくありません。

そこで、実践の難しさを体感してもらうために、あえて難易度の高い場面を設定するのも検討しましょう。現場の社員にアンケートを取って、実際にありそうな場面としてどのようなものがあるのか、情報を集めてみるのもおすすめです。

具体的な評価・フィードバックを行う

ロールプレイングの実施後は、具体的な評価やフィードバックを必ず行いましょう。ロールプレイングでの行動を観察してフィードバックを行うと、新入社員が自分の強みを伸ばしつつ、改善が必要な部分を認識しやすくなります。

強み・改善点のいずれも感覚的ではなく「具体的」に説明してください。改善点を述べる際は批判的にならないよう注意して、「建設的」な印象になるフィードバックを行いましょう。

口頭でのフィードバックだけでは聞き逃したり忘れたりする可能性もあります。必要に応じて「フィードバックシート(新入社員の行動内容の記録や、良い点・改善点などについての詳細なコメントを記入できるもの)」を作成して形に残るようにしましょう。

具体的な評価とフィードバックを行うと、新入社員は学習効果が高まり、より実践的なスキルを身につけられます。

新入社員研修でロールプレイングを効果的に実施する方法

新入社員研修でロールプレイングを効果的に実施するには、いくつかのポイントを押さえることが重要です。ここでは新入社員研修の準備や当日の研修において意識しておきたい、3つのポイントを解説します。

本番のような緊張感を演出する

新入社員研修でロールプレイングを効果的に実施するためには、本番のような「緊張感」を演出することが重要です。ロールプレイング研修では、緊張感を維持することが学習効果を高めるとされています。緊張感を維持するために、研修者間の「競争」を促す工夫や、独特の「環境設定」を行いましょう。

たとえば、研修者間で「プレゼンテーション大会」を開催すると、他者との競争を通じて緊張感を生み出せます。また、実際の業務でよくある場面だと事前に伝えれば、本番に近い緊張感も生まれるでしょう。

ただし、緊張感を演出する際は、適度なレベルに留めることが大切です。場の空気が過度に緊張してしまうと、参加者が本来の力を発揮できなくなり、学習効果や積極性を阻害する可能性もあります。参加者の反応を見ながら「適度な緊張感」になるよう注意しましょう。

自主的な思考・発見を促す

ロールプレイングでは「自主性」や「発見」を促すのも重要です。やりたくないロールプレイングを「やらされている状態」ではなく、参加者全員が目的意識を持って自主的に取り組むよう工夫しましょう。研修の内容や形式を定期的に見直して、やりがいのあるシナリオを用意し、新たな自主的な思考や、学習課題を見つけやすくします。

また、ロールプレイングをとおして「発見」が生まれるような工夫も大切です。たとえばロールプレイングの様子を動画として記録し、自分が話している様子を本人にも見てもらうと、自らの現状や課題についての新たな発見につながるかもしれません。

業務中の問題点を再現した結果、研修を進行する講師や研修担当者の側が新たな発見を得る場合もあるでしょう。ロールプレイング型の研修の成功には「自主性」と「発見」が不可欠だと意識して、実りのある研修プログラムを用意しましょう。

学びの定着につながる仕組みを作る

新入社員研修でロールプレイングを効果的に実施するには、学びの定着につながる「仕組み作り」が重要です。たとえばロールプレイング研修を1回で終わらせず定期的に実施すると、反復による定着を促せます。研修後にフォローアップをして定期的に知識やスキルの復習を行うのも、学びの定着のために重要です。

さらに「eラーニング(いつでも自由に視聴できるオンライン上のコンテンツで学習できるサービス)」を活用すると、学びながら知識を定着できる環境を提供できます。

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ロールプレイング研修を含むカリキュラム作成のサポート機能もあり、カリキュラム策定の負担も減らせます。初めてロールプレイング研修を導入する企業や、研修後のフォローアップに手が回らない企業にとっても有用なサービスです。

新入社員研修にロールプレイングを取り入れて学びの定着を

新入社員研修におけるロールプレイングは、実際の業務場面を模倣し、新入社員が実践的なスキルや知識を獲得するための有効な手段です。またロールプレイングは、新入社員の自発性を促進し、チームワークやコミュニケーションスキルの向上にも役立ちます。研修の目的や新入社員のニーズに合わせて、適切なロールプレイングの形式を選択し、効果的な研修を実施していきましょう。

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