カスハラ対応研修のすすめ|従業員を守る企業の教育体制とは?

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2025年7月31日(木)

カスハラ対策について

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監修者
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ヒューマンキャピタルパートナーズ株式会社 代表取締役/人的資本経営・組織開発コンサルタント

堂前 晋平

組織・人材開発の専門家として、社員1万人を超える大手IT企業から10名以下の日本料理店まで、延べ500社・5万人超の支援実績を持つ。
大企業での営業経験を経て、ベンチャー企業にて支社設立・事業責任者・取締役としてIPO、さらに子会社設立を経験。上場企業のグループ人事責任者としてM&A後のPMIを担い、社員70名から400名への急成長を支援。これらの多様な経験を活かし、経営と人事の両視点から戦略的人材マネジメントを実践。日本経営品質賞本賞、ホワイト企業大賞、グッドカンパニー大賞などの受賞に寄与。2023年8月manebiのCPO(Chief People Officer)就任。現在はISO30414のリードコンサルタントとして人的資本経営の推進支援や社員研修の講師としても登壇中。

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理不尽なクレームや悪質な要求が後を絶たず、「カスタマーハラスメント(以下、カスハラ)」は、接客業を中心とした多くの職場で深刻な問題となっています。従業員の心身を蝕むだけでなく、企業全体の生産性や評判にも影響するため、放置できない課題といえるでしょう。

本記事では、カスハラへの適切な対応体制を構築するために必要な取り組みとして、「研修の導入」「社内の認識合わせ」「対応基準の整備と周知」の3つに焦点をあて、実務に役立つ情報をお届けします。


カスハラとは何か?改めて定義と背景を確認する

カスタマーハラスメントとは、消費者や取引先などから、従業員に対して行われる過度な要求や威圧的な言動、人格否定などの迷惑行為を指します。
代表的な例としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 商品やサービスに関する理不尽なクレームを長時間にわたり繰り返す
  • 従業員の容姿や人格に対する侮辱
  • 土下座の強要
  • SNSでの晒し行為の予告
  • 複数人による威圧的な言動や脅迫まがいの要求

いわゆる「お客様は神様」という価値観が根づいていたことから、企業がカスハラに毅然と対応しにくい状況が長く続いていました。しかし、昨今では従業員を守る観点から、企業が防止体制を整備する流れが加速しています。


なぜ今、カスハラ対応が注目されているのか?

働き方改革やメンタルヘルス対策が社会的に重要視される中で、従業員の安全配慮義務が企業に求められるようになりました。
厚生労働省が2022年に発表した「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」では、企業が講ずべき対応策や防止策が示され、法的な観点からもカスハラ対応の必要性が高まっています。

厚生労働省:「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」

また、SNSの普及により、対応を誤った企業は一瞬で炎上し、社会的信用を失うリスクも抱えるようになりました。その一方で、従業員を守る姿勢を明確に打ち出した企業は、「従業員ファースト」の企業文化が評価され、それが採用ブランディングにもつながる傾向があります。


研修がカスハラ対策の第一歩

1. 現場の対応力を高めるロールプレイ型研修

実際のカスハラ事例を元にしたロールプレイ型研修は、臨場感のある学びが可能です。対応者が萎縮せず、冷静かつ適切に対応するためには、型(テンプレート)を体得しておくことが効果的です。
研修では、以下のようなステップを身につけます。

  • 初期対応:相手の感情に寄り添いつつも、線引きを意識
  • 境界線の提示:要求が過度である場合は毅然と断る
  • エスカレーション:上長や専門部署への迅速な引き継ぎ

また、eラーニングなどで利用できる動画視聴方の研修は、ドラマ形式で学べる場合もあり、実体験を想起しながら、あるいは想像しながら学ぶことができるのでテキストのみでのインプット方の研修より定着がしやすい場合があります。

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2. 対応者だけでなく全社的な理解促進

カスハラはフロントの担当者だけの問題ではありません。人事、法務、管理職など、関係する全ての部門が「なぜ対応が必要なのか」「どこまで対応すべきか」を共通認識として持つことが重要です。
研修プログラムを全社的に設計することで、縦割りの対応ではなく、組織的な防衛ラインを築くことができます。


社内の「認識合わせ」が企業文化を変える

現場でよくある誤解のひとつが、「お客様の言うことには逆らえない」という思い込みです。従業員が悪意ある顧客対応を一人で抱え込んでしまえば、メンタル不調や退職の原因になりかねません。

そのためには、以下のような認識を全社員に浸透させる必要があります。

  • 「すべての顧客の要求が正しいとは限らない」
  • 「従業員の人権も保護されるべきである」
  • 「無理な要求には『NO』と言える企業であることが、顧客との健全な関係構築につながる」

こうした価値観を、経営層がトップメッセージとして発信することで、現場の心理的安全性は格段に高まります。


明確な「対応基準」と「手順書」が現場を救う

対応基準があいまいなままでは、対応の質や方針にばらつきが出て、かえって問題を複雑化させてしまいます。以下のような対応基準を策定し、社内に周知することが必要です。

1. 対応可否の判断ラインを明確にする

  • クレーム内容がサービスの範囲内か否か
  • 従業員の人格を否定する表現が含まれるか
  • 長時間拘束や暴力的言動があるか など

2. エスカレーションの基準と手順を整備する

  • どの段階で上司に相談すべきか
  • 法務や外部弁護士に相談する基準
  • 記録・報告書のフォーマットの統一

特に、記録を残す文化を根づかせることは、後のトラブル防止や法的対応の精度の向上にもつながります。


カスハラ対応は“防御”ではなく“企業価値”の一部

カスハラに対して毅然と対応できる組織は、単に「防御的な企業」ではなく、従業員を大切にする「信頼される企業」として評価されます。
長期的に見れば、それは採用力や離職率低下、顧客との健全な関係構築につながり、企業価値の向上へと直結するのです。


まとめ:明日から始められる3つのアクション

  1. 現場と管理職向けのカスハラ対応研修を企画する
     ロールプレイを交えた実践型が効果的。
  2. 社内の対応基準とエスカレーション手順を明文化する
     誰が見ても同じ対応ができるフローを整える。
  3. 経営層から従業員を守る姿勢を発信する
     「企業が守ってくれる」という信頼が職場を変える。

従業員を守ることは、組織を守ることに直結します。カスハラに経営層が真正面から向き合い、持続可能な働き方を支える企業づくりを、今こそ始めてみてはいかがでしょうか。

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